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無人島の沖合——3ヶ月の海上生活



バス停に降り立ったのは、まだ朝のことだった。

ダンピアの太陽はすでにじりじりと肌を焼き、熱気が地面から立ち上る。迎えの時間は夕方5時。

それまでの時間、僕はベンチに身を横たえ、重いまぶたを閉じた。


これから始まる海上生活。
見知らぬ人々との共同生活。

未知の環境に飛び込む高揚感と、それに勝る不安が、心の中でせめぎ合う。


そんなとき、不意に声をかけられた。


顔を上げると、そこには真っ黒に日焼けした男が立っていた。
まさに”海の男”といった風貌。
逞しい腕、潮風に晒された髪、鋭い目つき。 


「お前が新入りか?」


僕は大きく頷く。


男は無駄な言葉を発することなく、僕をジェットボートに乗せた。エンジンが轟音を立て、ボートは猛スピードで沖へと突っ走る。


潮風が頬を叩きつける。
陽光が海面に乱反射し、眩しく輝く。
魚の群れが水面から飛び跳ね、ジェットボートの軌跡を描くように弧を描いた。


目を凝らすと、遠くに赤ちゃけた大地の無人島が点々と浮かんでいるのが見えた。


そして、沖合約10キロ地点——


海の上にぽつんと浮かぶ、2階建てのハウスボートが現れた。


それはまるで、海の上にぽつんと建てられた一軒家のようだった。


「ここがお前の新しい家だ」


男がそう言った瞬間、胸が高鳴った。


ボートが横付けされると、すでにそこには6人の住人たちが待ち構えていた。

オーストラリア人3人、日本人3人。男たちは皆、屈強で、ひげを生やし、真っ黒に日焼けしていた。

豪快な笑い声と、英語と日本語が入り混じるざわめきが響く。


僕は彼らに迎えられ、1階の部屋へと案内された。


なぜか僕だけが1階だった。
他の5人は全員2階。


部屋は簡素で、殺風景。
夜になれば、波の音が容赦なく押し寄せる。


まるで、海そのものが部屋の中に流れ込んでくるかのような錯覚。
寝ようにも、潮の匂いと波の轟きが、眠りを妨げる。


だが、不思議と恐怖心はなかった。


ここから逃げることはできない。
360度、どこを見渡しても、ただ青い海と点在する無人島。


海の下には、タイガーシャーク——人喰いザメが潜んでいる。


陸はない。
戻る道もない。


だからこそ、やるしかない。


僕は自らここに来たんだ。
仕事を覚え、英語を磨き、自分を変えるために。


見上げれば、漆黒の空に無数の星が散りばめられていた。


明日から、本当の海上生活が始まる。
僕はゴツゴツとしたベッドの上で目を閉じた。


そして心に誓った——


ここで、絶対に生き抜いてみせる。 


つづく…

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