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「競合がいない=マーケットが存在しない」と同義と言われ続けた日々
世の中の変化とは興味深い。ある日突然変わることはなくて、でも、気づくとある日、突然変わったかのような錯覚を覚える。それは僕がビジネスの軸足を置いている官民共創の領域でも同様だ。
今となっては思い出すのが難しい2018年の風景
2018年、僕が合同会社million dotsを立ち上げたころ、あのころは官民共創なんて見向きもされなかった。
僕が当時掲げた会社のメッセージは「企業、行政・自治体、社会起業家をつなぎ、イノベーションの起点をつくる会社です」。
この会社は今でも続いていて、創業当時からお付き合いのある企業等の、アドバイザリーなどをさせてもらっている。
心意気やよし、なんだけれども、最初から売上のイメージがあったわけでもないので、法人登記は麹町のLIFULLHUBに。
ちょうどその頃、LIFULLHUBにはフィンテック・スタートアップのjustincaseも入居してて、CEOの畑さんがとても忙しそうにしていたのが印象的。
とても、まぶしかった。どんどん成長していって、あっという間にLIFULLHUBから独立していった。
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次に立ち上げたのが、Public dots & Company。2019年5月に創業した。
こちらも「私たちは公共を再定義する。」がミッション。僕という人間は変わっていないから、表現こそ違えど、million dotsと掲げているミッションは同じだ。
でも、この時もまだ、官民共創はビジネスのテーマとしては正直苦戦していた。
外部のアクセラプログラムにエントリーしても、常に出る議論は、「競合はどこか?」「マーケットサイズはどれくらいか?」。
ブルーオーシャンにも競合はいる?
当時、この質問をされて、僕はいつも答えに窮していた。
あの時点で少なくとも、官民共創を明確にテーマに打ち出してビジネスをしていた企業は存在しなかったからだ。
いや、正確にはいくつか存在したのだけど、どこもまだ、存在を認識できるほどにも目立っていなかった。
それに、僕がやろうと思っていることとは領域や方向性が違うように見えた。競合には見えなかったのだ。
ま、いずれにしても、そんな状況だったから、「競合は?」「マーケットサイズは?」「あなたの会社の強みは?」と聞かれて、スパッと答えられなかった。
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決まって、「競合がいないというのはマーケットが存在しない、もしくはビジネスが成立しない証拠です」と言われる日々。
スタートアップのアクセラや投資の専門家にそう言われてしまうと、二の句が告げなくなってしまう。
ただ、自分の中ではモヤモヤしたものがあった。「競合がいない世界」は本当に「マーケットが存在しないのだろうか?」というモヤモヤだ。
やっていることはタイムマシン経営
このnoteでも書いてきたけど、今、僕が仲間と会社でやっていることは「タイムマシン経営」だと思っている。
欧州がなぜ、publicを企業と行政が担うようになったのか、そのための仕組みを整えるに至ったのかを実際に見て、聞いた経験があるからだ。
その辺の経緯は過去のnoteにもまとめている。
さて、そんなモヤモヤに直面していた2019年春、一冊の本が日経BPから出版された。
それが「日本の未来2019-2028 都市再生/地方創生編」だ。
一冊40万くらいする高額な書籍で、主に大企業の経営企画や大学などの研究機関に向けたものだ。
この本の企画が検討されていのが、一年前の2018年夏のこと。この時、日経BPから言われた一言がとても強烈な印象として残っている。
「伊藤さんが早いと思うくらいのタイミングで、ちょうどいい」。
この話は次のnoteでちょっと触れてみよう。