緑の疾走2
キヨシのはなし
遅れたことにクレームを入れたからか、生まれて初めて出会う自衛隊の人間がマツモトキヨシというこの状況を腹の中で笑わずにはいられなかった。
よりによってマツモトキヨシって・・・
キヨシはまだ汗を拭いている。私は、洋間のソファに案内をし、キヨシがしゃべるのを待った。「まずは本当に遅くなり申し訳ありません。」と、キヨシは年下の25歳の私に頭を下げた。年上の敬語ほど不憫なことはない。
「まず、自衛隊はですね、」とパンフレットをカバンから取り出して見せた。私はてっきり『若人よ来たれ!』的なパンフレットだとうっすら期待したが違った。キヨシは続けてしゃべる。「自衛隊は、日本を守るというのが仕事の公務員で、国家公務員の特別職になります。それからですね、、、」
と言われたが、大体は事前に調べてあったので、目新しさはない。
そんなことよりマツモトキヨシという名前が気になり話が入ってこないのだ。
一通り話を聞いたあと、もう受験を決めていた俺は、
さっさと手続きしろよと言わんばかりに「何を書けばいいんでしょうか。」
と、長い話にうんざりして言った。
マツモトキヨシは、「あ、はい!こちらがですね・・・」
と受験申込用紙的な紙を取り出した。
俺はそれを書いて、マツモトキヨシは帰っていった。
これまでに何種類かの民間企業を経験していたこともあり、
こういった書類を書くことについては全く抵抗もないが、
普段高校生や大学生を相手にしているマツモトキヨシは、
そのスピードと手際の良さに驚いていたのが印象的だった。