農村の町景観〜農村風景と季節〜
農村的景観についても考えてみよう!
市街地の路地園芸を風景とするなら、農村では?
農村の景観についての覚書を書き留めておこうと思ったのですが、都市部の下町について考えたことがきっかけです。
下町の景観として好きなものの1つに、狭い路地があります。狭い路地では、私的な利用が見られることがあり、生活感を感じられる下町情緒が醸し出される。
家の前の狭い路地に、植木鉢などを出して街を飾る路地園芸などは市街地ならではの景観だと思っています。
下町の景観については、先日、簡単に覚書をしてみたところです。
下町自体、基本的には都市部周辺地域にあるものなので、現在都市部ではない農村エリアに住んでいる者として、農村エリアの景観的な魅力についても考えてみたいと思いました。
農村的景観 覚え書き
「農」の景観 〜単一・集合的な美〜
農村エリアで、まず思いつくのが「農」の景観です。
単一作物の集合的な美。
麦畑、水田ともに同じ種類の作物を一定の間隔に植えている。
この、整列している感じ、統一されている感じ。
自然物(農作物)が人工的に栽培・配置されていることが、農村の美しさの一つなのかもしれません。
都市部が建物や市街地で暮らす人の営みの景観を見ることができる場所とすると、
農村部は、自然物を使った人の営みの景観を見ることができる場なのでしょう。
「水鏡」〜人が作り出す水田と自然とのコラボ風景
田植えを終えてすぐの水田は言葉通り「水鏡」となった時の景色。
この水鏡は、田植えが行われる前の水を貼った状態から、田植えが終わり稲が一定以上伸びるまでの期間限定にみられもので、きっと好きな人も多い風景の一つだと思います。
こういった、人と自然物が織りなす規模が大きい風景が
農村エリアの景観的な魅力だと思っています。
農業閑散期と農村的風景〜
農村エリアの景観を考えた時に、「季節」というものがとてもポイントになってくると思っています。
農村エリアの景観を作る大きな一つが「農業」であるならば、
農業が盛んに行われている時期にその農村的な風景は限定されるのでしょう。
つまりは、冬は農業の閑散期として農村的な風景も閑散期?的なものがあるもかもしれません。
水田の風景 春〜夏〜秋
兼業で農業をされている方も多いこともあり、ゴールデンウィークに田植えを行う農家さんも多いと言われているます。
ですので、ゴールデンウィークに向けて田植えの準備が行われます。
水鏡が見られるのも5月、春の季節です。
それから、カエルが水田で鳴き始め、稲が育ち夏を迎え、秋に収穫を行います。
水田は季節的には、冬は作物がない状態になります。
この冬に作物がない田んぼは土や草の風景となります。
僕的には、農村エリアの風景としては少し寂しい印象ですが、
農家さんは、冬も田んぼの土について考えたり作業してらっしゃいます。
冬の田んぼ 『ふゆみずたんぼ(冬期湛水(とうきたんすい))』
歌川広重の風景版画にも冬の田んぼの水張りがあったような(昔は、水が勝手に入っていたのかも)。。
冬の田んぼについては、風景の観点からこれまでも考えたことがあり色々と調べたことがありました。そこで知った冬にも水をはる「ふゆみずたんぼ」の取り組み。
冬に水をはる理由として
「水を張ることによって雑草の発生を抑制できる。」
そして、白鳥が飛来してくるそうで、これは見応えのある風景でしょうね。
「ふゆみずたんぼ」は大変
ふゆみずたんぼを実験的にやってみて、メリットよりも、デメリットが大きいとして安曇野市では実験的とりくみを終了したみたいです。
「ふゆみずたんぼ」について
○メリット1つ
甘味は少し上がった
○デミリット2つ
収穫量が減った
手間がかかる
食味については若干良くなっているが、米のとる量も減って、水の管理も大変なのでとりあえず終了みたいです。実際に管理される方のことを思うと大変そうですね。
個人的には、冬にも田んぼに水があり、水鳥が来ている風景はとても良さそうですが、自分が管理をしてねと言われると大変そうです。
「ふゆみずたんぼ」の取り組みが進むとしたら
先ほどの安曇野市の事例は、「ふゆみずたんぼ」を考える上で重要なポイントを示しています。
冬水田んぼを進めていくとすれば
・米の味がよくなる
(収量が下がったとしても、米自体の価値が上がれば相殺される)
・米づくりのストーリーに価値が見出される
(ふゆみずたんぼで作られたお米という価値、白鳥が飛来するなどのストーリー)
・水管理の手間軽減
(水自体の確保ができる、手間の軽減化)
・農業だけでなく、地域全体の魅力作りとして捉える
農家だけでなく、農業的な評価だけでない、地域の人や産業が総合的に取り組みを捉える必要がある。
ふゆみずたんぼのストーリーを用いた日本酒「一ノ蔵」
「ふゆみずたんぼ」米ササニシキを100%使用した日本酒です。
下写真は、日本酒「一ノ蔵」さんのホームページのメインビジュアルです。
「冬の田んぼ➕野鳥」のイメージが全面に押し出されています。
「ふゆみずたんぼ」と滋賀県 内湖干拓後の農地
滋賀県には、琵琶湖だけでなく内湖(ないこ)があります。
内湖は、琵琶湖の湖岸にある池や沼地などのことです。
多くの内湖は、時代の要請によって干拓され、現在は農地となっています。
その、かつて内湖だった場所にある農地が、「ふゆみずたんぼ」となる取り組みは、ちょっとした内湖の再現だな〜と妄想したことがありました。
なぜ、冬の田んぼに水を張る(1年のほとんどの期間に水田に水を張る)のか?
この問いかけにかつての内湖というレイヤーがある地域を滋賀県は持っています。
「干拓された内湖にある水田が四季を通じて水がはられている。」このストーリーはいいですよね。これは、またどこかで考えることができたらと思います。
農村的風景の創出 花畑の取り組み
花畑が多くの人を惹きつけているものもあります。
食糧生産ではなく「景観」がメインとなったコスモス畑や、
お花畑が整備された公園。
・夏 滋賀県守山市第1なぎさ公園 ひまわり畑 7月中旬~7月下旬
・秋 近江八幡市 コスモス畑 10月中旬
・冬 滋賀県守山市第1なぎさ公園 菜の花 1月下旬~2月上旬頃
これは、食糧生産としての農業ではなく「景観」としての農にふりきっているものだと思います。この、お花畑の取り組みはとにかく、一定の規模で行うことがっても重要なのだと思います。
これだけの、お花や植物に囲まれる環境は市街地ではなかなか体験できないものでしょう。
景観だけの「菜の花」ではなく、
「菜の花」を使った循環的な社会づくりの取り組みも行われています。
滋賀県では、「おいとうエコプラザ菜の花館」さんの取り組みがあります。
農村的景観 農業のメリット・地域のメリット
今回の覚書を書いてみて、農村的景観は自然物とのコラボレーションなので、
当たり前かもですが、「季節」というものがとても重要な要素だなと思いました。
また、農業であるため「農業的なメリット」が大切であること。
景観は地域の魅力でもあるので「地域のメリット」として考える必要があります。
(もちろん、デメリットも)
特に、冬の農村的風景については「ふゆみずたんぼ」について、
また情報収取をできればと思いました。
そして、農的なメリットと地域的なメリットを両立している事例から学びたいなとも思いました。
それでは、まとまりませんが、このへんで!