目で見て口で言へ(映画篇)11本目「わが映画人生 マキノ雅裕」12本目「ブラザーズ・クエイ短編集Ⅰ」
国立映画アーカイブで「わが映画人生 マキノ雅裕」を見て来た。
日本映画監督協会製作の「わが映画人生」シリーズの一本。長いあいだ「先生」のもとで助監督を務めていた澤井信一郎(1938―2021)が聞き手となり、「ヒット作の系譜」(澤井)とも言うべき261作品を手がけた稀有な監督・マキノ雅裕(マキノ雅弘)(1908-93)から、貴重な証言の数々を引き出している。1988年10月27日撮影。
2時間弱のインタビュー(というか、マキノ雅裕のほぼひとり語り口演!)で、うーん、ダレるかな、と思っていたらこれが滅法面白い!父のもとで無理やり映画の現場に放り込まれた少年が、やがて監督になって行く(監督デビュー作のクレジットは病気で降板した監督!)導入から、無声映画時代の話(当然弁士の話も出てくる)、有名な「一スジ、二ヌケ、三ドウサ」の話、同世代で意識していた監督(山中貞雄)の話などが、時代を行ったり来たりしながら語られて行く。多少聞き取りづらい部分はあるし、固有名詞はもう少しテロップで拾って欲しかったけれど、まあ面白い!インタビュアーの澤井監督が話の腰を折るようなこととをほとんどいわず、必要最低限の軌道修正だけしてたのも良かった。戦後のヒット作「次郎長三国志」シリーズのヒットを受けての製作会社とのやり取りも面白おかしく(たぶんもっとドロドロしたところはあっただろうに)語っていて、会場では何度も笑いが起きていた。特に、山田洋次についての話のところ、爆笑が起きていたなあ。
そして、劇場公開を前提としていない、記録映像だからこそのオープニングとエンディング!懐かしさすら感じる。
続いて、久しぶりのアマプラで「ブラザーズ・クエイ短編集Ⅰ」。「人工の夜景ー欲望果てしなき者ども」「ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋」「ギルガメッシュ叙事詩を大幅に偽装して縮小した、フナー・ラウスの局長のちょっとした詩、またはこの名付け難い小さなほうき」の3本。「人工の夜景」は中でも特に映像詩みたいで(章立ての小見出しがやたら長い)、路面電車?のガタンゴトンいう音やレールの軋む音、画面を横切るパンタグラフなどが、不穏さを醸し出している。「ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋」は同タイトルのドキュメンタリーのために作られたものなのだろうか?マッドサイエンティストと助手(弟子)の室内冒険譚。「ギルガメッシューー」はエロスとホラー。悲しいかな、ギルガメッシュの話はうっすーいwiki的知識と「そういえば石ノ森章太郎の漫画にあったな」という記憶しかなく(しかもおそらく読んではいない(ToT))、どこを「大幅に偽装して縮小した」のかわからないが、ああ、この感じはなかなかよろしいな、と一番見ていてコーフンしたのだった。
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