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目で見て口で言へ(演劇篇)24本目「ぜぺっと」

荻窪小劇場でAURYN「ぜぺっと」を見て来ました。以前何度か舞台でご一緒した蓮根わたるさんの本格的舞台復帰作と個人的には位置付けておりまして、公演情報を知った時には何よりも優先案件であると認識した次第です。その認識は正しかったと、観劇が終わって思いました。

――出ていかなきゃ、ここから。

あの日もこんな暑い日だった。
凪いだ海に糸を垂らしていると、遠い国に飛んでいく飛行機が見えた。
そんな日にあなたは産まれた。
小さな日々は毎日が冒険で、深い深い海の底のようだった私の生活は一変した。
あなたは私を置いて、空に向かって真っすぐ浮上していく。
それでいいと、思っていた。

けれども。
あなたがウソをついていても、私がホントを黙っていても、
願いとか希望とかそういう形のないものを、
信じていたいと思うのです。


平凡な私と変わり者のあなたのお話。
ちょっぴりウソとホントについて。

ピノッキオ」を下敷きにしたモラトリアムとやや複雑な家庭環境に戸惑う少女の物語。我らが蓮根さんはヒロイン(就活時期の大学生!)の父親役でした。ええ、蓮根さんが?と思ったもののーーああ、まあーーですよねと納得せざるを得ないワタクシであります。

AURYNという劇団の、というか主宰であり座付き作家兼演出家である窪寺奈々瀬さんの作風として「SF(少し・ふしぎ)」なテイストが(大声で主張することなく)物語のどこかに必ずちょこん居る、という印象を持っています。今回は終盤ヒロインがある世界に迷い込んでしまうところが、「ピノッキオ」のあるシーンを思い出させました。

ヒロインと父親の関係だけではなく、友人、職場の同僚、上司など、さまざまな場面での「そんなに激しくはないけれど、極めてありがち」な葛藤(それは葛藤とさえいえないくらいかもしれませんが)を丁寧に拾い上げて言葉や所作、場の雰囲気を作り上げて行く作業がとても好ましく思われたのでありました。

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