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読んだはしからすぐ忘れるから!10冊目「ゾンビ・パラサイト」11冊目「脳内異界美術誌」12冊目「ギャシュリークラムのちびっ子たち」

岩波科学ライブラリーというココロときめくシリーズに出会ってしまいました(今更ですが)。ズラッと並んだタイトルはどれも読みたくなるものばかりですが、まず最初に手に取ったのは「ゾンビ・パラサイト」です。

ホスト(宿主)の体を棲み処とするパラサイト(寄生生物)は、生存の根幹をホストに依存する弱々しい存在だ。そんな彼らに中に、自分や子孫の生存にとって有利になるように、ホストの行動を操るものが進化してきた。ホストをゾンビ化して操る能力をもったパラサイトたちの精妙な生態を紹介。あなたもパラサイトの操られているかも?

冬虫夏草、ハリガネムシなど、割と有名な寄生生物は知ってはいたけれど、その生態を改めて知るとジワジワ来ますねえ。中世のヨーロッパでたびたびみられた「ダンス狂乱」の原因ではないかといわれる麦角菌に、夢枕獏「荒野に獣 咆哮す」の独覚菌を思い出した(獣化兵はもともとゾンビストと呼ばれているし)。導入部に触れられているのがオールディス「地球の長い午後」だし、「マタンゴ」も出て来るし、非常にSF者には親しみやすいですわ。

にしても冬虫夏草菌に感染したダイクアリ(樹上生活)が地上に落ちて、菌の増殖に都合の良い高さまで木に登り直し、そこで「最期のひと噛み」で体をその位置に固定させてから絶命するーーなんて壮絶すぎる!その他にも、白癬菌、カンジダ菌、ミツバチに寄生するノミバエ、ネコを最終宿主とするが中間宿主には人間も含まれる(全人類の3割が感染しているといわれている)トキソプラズマなど、次から次へと出て来る寄生生物たちの面白さ!

「恐怖」はどこからやってくるのか?/不思議なもの、怖いもの、深淵なもの、不気味なもの。「目に見えない存在」を可視化し、異質の世界を表現したアーティストたちの実像とは?本能が生み出した脅威の美術に、知の巨人・荒俣宏が迫る!

「この本の主題を俗っぽく表現するならば、お化けを見るとぞっとする本能的な実感の生まれてくる由来を探ることにある。(中略)人がお化けと聞いてぞぞっとしたり、怖い映画を見て目を塞いだりする生理的反応は、いったい何に由来するのか。いわば、子ども心のリアリティー感覚にかかわる謎を、成人の目から再考する試みといえるだろうか。」 ――本文より

アウトサイダー・アート、幻想美術、幻想言語、抽象画――。
茂木健一郎、京極夏彦、春日武彦、大西暢夫など、さまざまなジャンルのスペシャリストとの対話を通じ、そのイメージの源泉を探る。

アウトサイダーアートというのは、もうあまり使われない言葉かもしれません。この本のなかでも「アール・ブリュット」という言葉が出て来ますが、日本初のムーブメントとしては「エイブルアート」という運動がありますね。松沢病院の日本精神医学資料館は今も予約すれば見ることが出来るようなので、一度行ってみたいものであります。遠野の「供養絵額」の不思議さは、「遠野物語」と合わせて鑑賞するとまた奥深いものを感じることが出来るかも。(山形の「ムカサリ絵馬」も非常に気になる!)

そして圧巻は橘小夢!この人のことは今まで知りませんでしたが、かつて弥生美術館で展覧会が開催されたこともあったようですね。確かな技術に裏打ちされた妖美の世界にグッと引き込まれました。

個人的に「エドワード・ゴーリー」ブームが再来しておりまして、この作品は再読です。

子どもたちが恐ろしい運命に出会うさまをアルファベットの走馬灯にのせて独自の線画で描いたゴーリーの代表作

何の理由もなく酷い仕打ちを受ける、AからZまでの頭文字の名前の26人の子供たち。くまにやられ、キリで貫かれ、火達磨になり、電車に轢かれるちびっ子たち(ヒルに血を吸われたりジンで深酒をするくらいはまだマシな方)。静かで繊細で凶悪な絵と淡々と綴られた文章が素敵。

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