読んだはしからすぐ忘れるから!5冊目「エスパイ」
昨年末配信で視聴した映画「エスパイ」の原作、小松左京「エスパイ」を読みました。
エスパイーーそれは、超能力者(エスパー)によって組織された国際的秘密結社の機関員である。彼らはどの国家権力にも属さず、特有の道徳(モラル)をかして、世界平和を守ろうとする正義の力だった。正体不明の組織は“ソ連首相暗殺計画”を察知したエスパイたちは、超能力ーーテレパシイ・透視力・念力・遠隔移動力ーーのすべてを尽して敵の挑戦を阻もうとする。長篇SF小説。
小松左京の長編小説はこれがほぼ初めて(短編は何作か読んでいます)。ではあるんですが、スケールの大きさとSF的な設定もガッツリあって、映像化するには最適な小説が多い、という印象をずっと持っていました。今作は、東西冷戦時代の世界を舞台にしたスパイアクションとしてテンポ良く進んで行き、最後の最後に壮大なSFになるというものでした。ヒロインが敵に捕まってしまうところ、彼女を助けるために主人公が乗り込むものの逆に捕まってしまうところ、その経験が主人公に新たな能力をもたらすところ、味方のエスパーが敵の手によって空中高く吊り上げられるところ、などが映画でも描かれています。それにしても最後に、ラスボス的な存在と主人公の対話シーンが「他の生命体を奪わなければ自らの生命を維持できず、それだけにおさまらず同じ生命体同士で愚かな争いを続ける人類というものは、果たしてそのままにしておいてよいものか」という命題に、半村良「妖星伝」を連想しました。