目で見て口で言へ「夢幻紳士 人形地獄」
人形になりたい少女。
他人の心が視える探偵・夢幻魔実也。
あなたは夢幻魔実也と共に連続少女失踪事件を目撃する!
(パンフレットより)
地元の映画館で海上ミサコ監督「夢幻紳士 人形地獄」を見ました。2022年一本目の映画館での映画鑑賞であります。原作はワタクシの大好きな高橋葉介さんの代表作といってもいい「夢幻紳士(怪奇編)」。その少年版の「人形地獄」と「老夫婦」を取り上げているようです。主人公(原作ではどちらかというと観察者的な立ち位置が多いと思いますが)夢幻魔実也がこの映画では青年……ではなく、なんといいますか「大人の男」になっており、「他人の心が見えたり、自由に夢を見せたりすることが出来る」能力があるとはっきり語られている設定です。クライマックスではほぼ同じ能力を持つ(と思われる)雛子とのまるでスキャナーズのような静かな戦いのシーンもあります。
夢幻紳士の実写化についてはワタクシもむかしむかし夢想したりしておりました。
さて……原作の少年探偵夢幻魔実也が映画では青年になっていても問題はない(青年版もありますから)のですが……でも、この映画の彼は青年とすらいえないのではありますまいか。はっきりいってしまえばこの映画は「壮年版の夢幻紳士」の話なのではないか、とワタクシは思うのです(パンフレットのご自身の言葉を読む限り、監督の描きたかったのは「人形になりたい少女」であって、魔実也探偵は狂言回しだったのではないでしょうか。そしてその割に彼は映画の中心にい過ぎたのでは)。
夢幻紳士を実写化するなら少年(青年)魔実也を現出(幻出)させて欲しかったのが正直な感想です。今ならさしずめ本郷奏多さんあたり青年だけでなく少年もいけるのでは?良いのでは?と妄想します……と、妄想を暴走させるのは勝手だし誰にもできることですが、妄想を現実化させた監督の熱意にはただただ頭が下がります。
それはそれとして、中盤の八重子の存在(あらわれ方)が非常に高橋葉介さんっぽい感じで面白かったですねえ。あとあの結末。事件は一応の解決を見ますが、あの皮肉な結末はやはり高橋葉介作品だと思います。原作は読んでいるはずですが、細かい部分はすっかり忘れてしまっている(&昔の単行本は実家でとうに処分されているので(T . T))ので、愛蔵版を入手せねば、と思ったワタクシでした。
自らを人形と思い込む(思い込まされる)少女那由子役の横尾かなさん、素敵でした。