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ものぐさ太郎読書日記「右利きのヘビ仮説」
「奇妙な菌類」の参考文献からのわらしべ読書。いくつかあった本の中から特に目を惹いたタイトルがこれでした。「右利きのヘビ」に続く単語が「仮説」って、このくらいフックのあるタイトルはなかなかないように思います。
人間をはじめ自然界のさまざまな生物に見られる「右利き」と「左利き」の謎ーーアフリカの湖に住む鱗食魚(他の魚の鱗を食べる魚!)シクリッド、嘴が特徴的なイスカ(イスカの嘴の食い違い)、カレイとヒラメ(全部が全部左ヒラメの右カレイ、というわけではないらしい)、カタツムリ(殻の巻く方向)などのエピソードを描いてから、そのカタツムリのみを捕食するイワサキセダカヘビを研究対象とすることになる著者の悪戦苦闘に続くという青春記も趣きもある本です。
目次
はじめに
第1章 生き物の右と左
一 体の左右がひっくり返るという進化
二 左巻きのカタツムリ
第2章 右利きのヘビ
一 「右利きのヘビ仮説」
二 スロー・スターター
三 右利きのヘビ、発見!
四 博物館のチカラ
第3章 西表島で調査する
一 島の暮らし
二 調査生活
三 夜の森にひとり
四 幻のヘビ
第4章 検証・右利きのヘビ仮説
一 奇跡の実験
二 博士を目指す
三 研究の終着駅
あとがき
参考文献
索引
参考文献
「生態と環境」所収「カタツムリの左右」浅見崇比呂(培風館)
「自然に学ぶ粋なテクノロジー」石田秀輝(同人化学)
「花の性 その進化を探る」矢原徹一(東京大学出版会)
一般に、ヘビ類は下顎の左右を別々に動かすことが出来る、というのは知りませんでした。つまり人間で言うと左右の腕のような役割もする、ということのようで。西表島と石垣島にしか生息しないイワサキセダカヘビの研究をするため、著者は西表島の研究施設に住み込んで地道な研究活動に入ります。学者としての将来に悩み葛藤しながら、それまであまり研究者のいなかったセダカヘビ研究に試行錯誤する様も、読み物として面白いですね。