読んだり読まなかったりして生きて行く「ROCA 吉川ロカストーリーライブ」
これは、ポルトガルの国民歌謡『ファド』の歌手をめざすどうでもよい女の子がどうでもよからざる能力を見い出されて花開く、というだけの都合のよいお話です。
「ドーナツボックス」や「ののちゃん」にときどき登場していた(らしい。知らなかった(´Д` ))「吉川ロカ」の物語を、描き下ろしも入れてまとめた大河的4コマ漫画。漫画家としてはすでに巨匠と呼んでも差し支えない存在であるいしいひさいちの、一般の書籍流通ルートには乗らない単行本(つまり自主制作!)ということにまずは驚く。Twitterでこの情報を見たときは目を疑った。まあ自主制作という言葉と職業漫画家(しかもずっと第一線を走っている)いしいひさいちとのイメージのギャップがあったとは思う(もちろんそれほど作品を追いかけていないワタクシの勉強不足から来る思い込みである可能性は高い)。
制作は注文販売。なので、ある程度注文数が溜まったら(そして代金を振り込んだら)増刷、みたいな状態で、でもネットで注文したらわりとすぐに届いた。
ファドというと、うっすーい知識(とも呼べないもの)しかないが、
この壮大な(都合のよい)物語自体がファドであると断言しても言い過ぎではないのではないか。
……いや、言い過ぎか。
とにかく物語が進むにつれてちょいちょい涙ぐんでしまいそうになるのだ。笑いながら。たとえばロカのインストアライブにやってきたたった二人のお客さんのエピソードとか(この二人はその後も出てくる)。そしてラス前のエピソード。ロカのあの言葉は、いったい誰に向けたものなのか。そしてあの言葉をほおりだしたままにせずキチンと落とす作者の手際に唸るなー。泣かせるなー。
ぜひロカのその後も見たい。「ののちゃん」には今後も顔を出すことがあるのだろうか。ああ、気になる。
ひとまずSpotifyでアマリア・ロドリゲスの歌を聴いて気を落ち着かせるワタクシなのであった。