アスリートも妊活も「Sympafit」でトライアウト【RING HIROSHIMA】
今やプロ野球オフの風物詩となっている12球団合同トライアウト。自らの夢を追い、あきらめることなくチャレンジする姿勢は多くの感動を呼んでいる。今回の挑戦者はそんなスピリットを抱えたアントレプレナー。東京大学野球部の投手として神宮球場で舞った男はRINGで何に挑むのか?
CHALLENGER「株式会社WorldTryout」加治佐平さん
百聞は一見に如かず。まずはこの映像を見てほしい。
血糖値がブチ上がるこの映像は「ワールドトライアウト」のイメージ映像。ワールドトライアウトとは、プロをクビになった野球選手などが海外のリーグに飛び出していく背中を押すための場。メジャーや海外のスカウトが集まり、夢をあきらめない選手たちを見定める。にしても上の映像で使用してるコミックは『MAJOR』だし、監督・コーチとして清原和博氏、片岡篤史氏、入来祐作氏が名を連ねるなど超豪華!
今回のチャレンジャーはそのワールドトライアウトを「株式会社WordTryout」で主催する加治佐平(かじさ・たいら)さん。加治佐さん自身も東京大学野球部で奮闘した野球人だが、それとは別に東京大学大学院農学生命科学研究科で博士号を取った研究者としての顔も持つ。
そこで誕生したのが「持続的グルコースモニタリング装置(CGM)」という機器。そのCGMのテストをしてるとき、加治佐さんはあることを発見した。
血糖値の値でアドレナリンの分泌量が見えるということは、つまりプレイヤーの心の中が覗けるということ。だとしたらCGMによって、アスリートのメンタルの問題が解決できるんじゃないか? プレッシャーに苦しむアスリートの心の状態を解析し、「火事場の馬鹿力」的なゾーン状態も計画的に創出できるのではないか?――
自らもアスリートだっただけに、アスリートの心理についてはよくわかる。加治佐さんはさっそく調査を開始。ワールドトライアウトの参加者にCGMを付けもらったり、自転車ロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」と協業してレース中の血糖値データを取得したりした。競技特性による血糖値の変化を研究し、可視化されたアドレナリンを元にパフォーマンス向上のためのアドバイスを送るプログラム「Sympafit(シンパフィット)」を開発した。
RING HIROSHIMAには、そのSympafitを引っ提げての挑戦となった。
SECOND①「株式会社みらいワークス」岩本大輔さん
そんな加治佐さんを支えるセコンドは2人。まず1人目は「株式会社みらいワークス」の岩本大輔(いわもと・だいすけ)さん。都市部企業の人材を地方企業に紹介し、地方企業の経営課題解決を推進する地域貢献副業プロジェクト「Skill Shift事業」の責任者を務めている。
岩本さんは埼玉在住。駆け出しのセコンドとして、まずは状況を見つめている。
こうしたガムシャラな若手セコンドも、プレイヤーにとっては嬉しいものだろう。
SECOND②「みるみらい」元木昭宏さん
もう1人のセコンドは広島在住のベテラン、元木昭宏(もとき・あきひろ)さん。地元にも詳しく、全国で起業を伴走する志プロモーターとしても活動している元木さんの存在は頼もしいばかりだ。
若手とベテラン、都市と地元という異なるタイプのセコンドを得て、Sympafitのプロジェクトははじまった。
しかしその歩みは困難を極めた。
スポーツチームとの提携は不調
妊活サポートが新たなテーマに
もともと加治佐さんは広島出身。地元のツテを頼って県内のプロスポーツチームと提携し、そこでSympafitを使った実証実験を行うというのが当初の目標だった。だが交渉は難航。加治佐さんは別案への変更を決断する。
広島は山間部や島しょ部があって、病院に行きにくい人がいる。そうした環境で妊活に役立てる機器があれば喜ばれるのではないか――まさにトライアウトというか、1つダメならまた次へ。加治佐さんはあきらめることなく突破を試みた。
しかし妊活アプローチも、トライしてみるとイバラの道だった。
アイデアは易し、実行は難しということか。しかしこの妊活案はセコンドの心にヒットする。
現在はフリーペーパーでモニターを募集中。11月には応募者への説明と産婦人科病院への協力要請のため、加治佐さんが広島に赴く。こうした苦難に見える道でも、
と前向きな言葉が出てくるところに、加治佐さんのトライアウト魂は表れている。
アスリートとアントレプレナー
共振するトライアウト魂
やっと辿り着いた実証実験を前に、セコンド2人は胸の高鳴りを隠さない。
それに応えるチャレンジャーも、この心意気だ。
周囲の応援を糧に、何度でも道が拓けるまでドアを叩き続ける。
冒頭のWorldTryout映像には漫画『MAJOR』のアツいセリフが散りばめられているが、それはRINGの舞台でも変わらない。Sympafitの戦いはまだ栄光への端緒についたばかりだ。
●EDITOR'S VOICE 取材を終えて
とにかく冒頭のWorldTryout映像にすべてが集約されてます。あきらめたときが本当の終わり。終わらない戦いを戦い続けること――これはまさに起業と一緒で、アスリートもアントレプレナーも夢に向かって挑戦するという意味では同じ種族だと感じました。WorldTryoutではアスリートを支える側の加治佐さんが、今回は支えられる側に回っているというのも面白いところです。
あと、埼玉在住でなかなか現場に参加できない岩本さんが言った以下の言葉も、RINGの今後を考える上で有用な意見だと感じました。
次回の参考にしたいところです。
(Text by 清水浩司)