ドローンやAIの力で、探索・救助活動をより安全&迅速に【RING HIROSHIMA】
全国各地で多発し、もはや誰にとっても他人事ではなくなっている災害。万が一救助活動が必要となったときに重要となるのは、迅速にその活動を行える探索・救助システムです。とはいえ状況によっては、人の力では限界がある現場があることもまた事実…。ドローンやAIを活用して、そうした探索・救助活動における課題の解決を目指そうとエントリーしたのが、今回のチャレンジャーです。
CHALLENGER①
『株式会社eロボティクス広島』板羽 孝則さん
救助される人も救助する人も
両方を守るシステムを構築したい
2017年に出身地の広島県庄原市にて『株式会社eロボティクス広島』を設立後、ドローンなどのデジタル技術を活用した探索システムの実装に向けて取り組んできた板羽さん。
今回のプロジェクトでは、ドローンによる上空からの映像と地上での探索状況を映像で解析する『3rd_EYEシステム』を用いた探索・救助訓練を実証実験として行うという。以前には備北地区消防組合と連携して『スノーリゾート猫山』スキー場ですでに4回ほど訓練を行っており、そのブラッシュアップとして今回の実証実験が位置づけられている。
CHALLENGER②
『株式会社eロボティクス広島』若狭 吉浩さん
続いてのチャレンジャーは、板羽さんと同じ会社に所属する若狭さん。会社の設立時からこのシステム構築に携わってきた。
SECOND
『出光興産』阿部 拓磨さん
社会問題の解決につながる取り組みを通して
人と地域に還元していきたい
板羽さんと若狭さんのセコンドに就任したのは、『出光興産』の阿部さん。入社後、大阪を経て広島へ赴任し、ガソリンスタンドの経営改善や人材育成といった業務に従事する中でRING HIROSHIMAのセコンドに応募した。
TALK ABOUT “RING HIROSHIMA”
このシステムが多目的にも使えるという
視野と将来性が大きく広がった
――これまでの訓練と今回の訓練を比べて、大きく変わったのはどんな点ですか?
板羽 消防や警察、自治体も実際にこういった最新デジタル技術やシステムの進化に期待されているので、各所と連携してこれまでに猫山スキー場で4回訓練を行いました。元々はドローンを使った人探しが目的でしたが、それだけだと探索・救助活動の場では本部や関係団体との連携が上手くできないことが分かり、今回の2022年9月に行った実証実験ではドローンによる上空からの映像と、本部のタブレット、探索者のスマートグラスによる地上からの映像で解析する『3rd_EYEシステム』を構築しました。これによって情報や映像を上手く共有できるようになり、現場での指示共有もスムーズにできるようになって安全性が高まることが分かりました。
阿部 私は台風の影響で実証実験には立ち会えなかったので、後日映像でその様子を見ました。一つ確信したのは、やっぱりこのシステムは社会的に大きな意義があるということです。情報共有が上手くできることで人の命をより安全に助けることができるようになるので、これがしっかりと実際の現場で活用されるようになればと実感しました。
板羽 この『3rd_EYEシステム』であれば、例えば火災現場でも消防隊員がしっかりと安全確認をしながら、中に人がいるかどうかの情報を共有できるようになります。まずは消防や警察の方にこのシステムに慣れてもらい、実際に緊急を要する現場で正しく活用していく方法を構築していきたいですね。
――今回一緒にプロジェクトに取り組んで、新たな発見や気づきなどはお互いどんなことがありましたか?
阿部 お二人とこのプロジェクトについて話し始めた最初の頃からお伝えしていたのは、このシステムのマネタイズについてです。収益を生み出すことができれば、システムの改修もしやすくなるし、結果的に災害救助などの現場でしっかりと活用できるシステムにできる。好循環がつくり出せるんじゃないかと思っているんですよ。
板羽 実際のところ、消防や警察、自治体では実証はできても実装となるとそう簡単には進みません。今回阿部さんといろんなお話をしていくうちに、この『3rd_EYEシステム』を要救助者の捜索だけではなくて多目的に使えるんじゃないかということで、視野が広がったことが大きいですね。例えば民間向けにこのシステムを活用できる何かの事業を行いながら、同時進行で防災の援助や支援ができれば、一番良い形で実装の構築ができるんじゃないかと思っています。
阿部 事業化については、主には娯楽の部分でこの技術が活かせないかなと考えています。例えば、実証実験を行ったスキー場でオフシーズンに鬼ごっことかの屋外アクティビティをしてみるとか…。最近、街なかでも推理をしながら各エリアを巡るっていう、これまでにはなかった遊びの形がありますよね。そういう感じで、何か大胆なことができれば面白いのかなと思っています。娯楽以外でもドローンの強みを活かしてインフラの点検作業に活用することもできそうだし、社内でも実装できる場所がないかを確認しているところです。
板羽 阿部さんからの視点で、『3rd_EYEシステム』がいろんな要素で使えそうだという意見をもらえたのは、僕たちにとってはとても印象的でした。これがちゃんとマネタイズされていけば、このシステムの導入費用がよりリーズナブルになって、もっと広く世の中で活用してもらえる可能性もありますし。
若狭 『3rd_EYEシステム』の開発者が言っていたのは、「このシステムは今少しずつ進化はしているけれどまだ初期段階。この先10年後には、もっと高いレベルに達しているんじゃないか」ということ。私自身もこのシステムの将来性に期待して、ワクワクしています。
阿部 だからこそこのプロジェクト期間の終わる2023年2月までには、事業化の見通しがつけばいいなと思っています。あと、ただこのシステムを娯楽の分野で活用しているっていうことだけじゃなくて、なぜ活用しているのかっていう意義を追求していく必要があるとも思っています。ただ“遊んで楽しい”だけじゃなくて、“社会課題の解決につながるものなんだ”っていうことを社会に正しく広く訴求できれば、より良いシステムになっていくと思っています。
板羽 広義に防災環境を考える中で、全国的にこのシステムをどう生かすことができるのか、しっかりと考えていきたいですね。
EDITORS VOICE 取材を終えて
座談会の途中で、阿部さんが話した「板羽さんと若狭さんに初めてお会いしたときに感じたのは、とても使命感の強い方だということ。あと、このシステムの可能性に懸ける思いがとても強い」の言葉。まさしくオンライン取材の画面越しでも、板羽さんと若狭さんの生き生きとした表情からまっすぐな思いが伝わってきます。災害現場や火災現場、行方不明者の捜索など緊急を要する場で必要となるAIやドローンの力。そして多目的に生かせるAIやドローンの力。実装に向けて、RING HIROSHIMAの期間を終えてもまだまだ挑戦は続きます。
(Text by 住田茜)
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