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先端技術を学ぶ講座を通して、交流館を未来型コミュニティーハブに!(福山市)【スタートアップ共同調達事業】

皆さんは最近、交流館(いわゆる公民館)を利用していますか? 交流館は、地域住民が集い、学び、交流する「地域活動の拠点」となる施設ですが、福山市では、時代に合う新しいカタチの交流館の姿を模索しています。そのカギとなるのは「DX化」!

利用者が高齢化・固定化しているのが交流館の現状

平谷泰寛さん(左)と川嵜智仁さん(右)

今回の福山市の採択案は「交流館DX化による、先進的かつ効果的な講座運営を!」。交流館の未来像とDXをどう結び付けるのでしょうか。福山市市民局まちづくり推進部まちづくり推進課主事の平谷泰寛さんと、同地域振興企画課の川嵜智仁さんにお話を聞きました。

福山市内には92カ所の交流館があり、住民向けの講座・イベント、地域の会合などに活用されていますが、利用者の多くは高齢者で、利用する人が固定化しているのが現状です。

平谷さん

市民の方からは、仕事で忙しくて利用する時間がない、交流館で何をしているのかよく分からないなどの声もあるようですが、そんな交流館を
●こどもから年配の人まで、幅広い世代が気軽に集える地域交流の場にしたい
●デジタル化が進む中、先端技術を利用したプロジェクトを交流館で行うことによって地域の未来に貢献したい
という思いから、勢いのあるスタートアップ企業の提案を受けるため 「The Meet」に参加することを決めました。

先端技術のプロジェクト例として想定していたのは「ドローンによる物資輸送」「交流館間のオンライン提携」「保険、医療、介護、子育てのオンライン相談」などでしたが、「AI、VR・ARといった先端技術に触れる講座」の実施を提案してくれたのが「デナリパム」。これが、元々デジタル講座を開きたいと考えていた私たちの思いにぴったりでした。

川嵜さん

「デナリパム」は、AI、ロボット、loT、5Gなどの先端技術を活用したさまざまなビジネスサポートを提供することで、広く社会に貢献しているベンチャー企業であり、自治体と一緒に先端技術を使ったワークショップや講座を開催している実績もあります。

先端技術に気軽に触れられる体験会で地域住民のニーズを探る

ただ、いきなり「交流館で先端技術を学びませんか?」と受講者を募集しても、なかなか人を集めることへのハードルは高そうです。そこでまず、3月2日(日)開催の「ふくやま東部文化フェスタ2025」で「先端技術に触れてみよう!」というブースを設け、先端技術を自由に体験してもらうことから着手しました。「ふくやま東部文化フェスタ」は、福山市東部エリアの学区・地域の住民・サークルによる毎年恒例の〝文化祭〟。ステージ発表や展示などがあり、こどもから大人までたくさんの人が参加する一大イベントです。
当日体験できる先端技術は、 AIを使ったピアノ演奏、メタバース(仮想空間)、AR体験。事前申し込みは不要で、フェスタへの参加者が気軽に参加することができます。

AIを使ったピアノ演奏
メタバース(仮想空間)

デジタルや先端技術に詳しくない人も大歓迎のイベントで、むしろ、そういう人だからこそ、新しい発想が生まれるのではないかと期待しています。小学生や若い世代など交流館との接点が少ない人たちにも、ぜひ自由に体験してもらって、交流館って何か面白いことが学べそう、今度行ってみようかなと思ってもらえるとうれしいですね。

平谷さん

体験者には感想や意見、そして、交流館でどんなデジタル講座があったら参加してみたいかを尋ねて、交流館での実際のデジタル講座開催に結びつけていきます。

川嵜さん

デジタルを活用し地域住民の負担軽減へ


将来的には、メタバース空間での地域の会合の実施、回覧板の電子化など、地域住民の負担が減るようなデジタル化につなげていきたいですね。
一番大事にしたいのは、実証実験で終わることなく、継続的に地域活動の中でデジタルを学び、活用し続けることです。デジタルに苦手意識のある人にもデジタルって便利だなと思ってもらえるように、そして交流館に接点のない世代にも交流館を身近に感じてもらえるように取り組んでいきます。地域で〝デジタルにおいていかれる人は作りたくない〟。東部フェスタでの先端技術体験イベントは、その第一歩です。

川嵜さん

地域住民の方の中には、子育てや介護で交流館へ出かけるのが難しい人もいます。そんな方でも、メタバース空間での講座やイベント、会合であれば気軽に参加することができ、地域をより身近に感じられるはず。ご高齢の方や障がいのある方にとっても、地域社会とのつながりを維持するツールとなる可能性も秘めています。交流館がさまざまな状況にある多様な視点を持つ人が集まる場となれば、地域社会もより活性化し、地域の未来につながる学びが交流館で実現していくことへの期待が膨らみます。

●EDITOR’S VOICE 取材を終えて

職場のDX化が進み、学校からの連絡もデジタル化、防災情報もデジタルでいち早く届く。そんな中で、地域ではまだまだアナログな面が多いことを改めて感じました。「もちろん回覧板を手渡しするときの交流は大切ですし、紙で伝える良さもあります。デジタルとアナログを上手に併用しながら、暮らしやすい地域社会にしていきたいですね」と担当のお二人はにこやかに話します。地域でのDX化を浸透させるためには、デジタルや先端技術への苦手意識や抵抗感を持つ人への対応が必須ですが、身近な交流館がその役割を担ってくれるのなら心強いですね。(文・綿谷千恵子)