“医療の本質”に迫る医師と医師のコミュニケーションツール「E-コンサル®」【実装支援事業】
住み慣れた場所にいつまでも住みたい。
医療サービスが十分に受けられることは、そのための大事な要素のひとつではないでしょうか。
でも実は、広島県内には59地区もの無医地区(※)があります(令和元年10月現在)。なんとこれは、全国で2番目に多い数。
もちろん広島県以外にも医療が十分に届かない地域は多々あり、さらに専門性の高い治療を受けたい場合にはなおさらです。
「地域、病院ごとに偏在する専門医リソースを最適化する。」をミッションに掲げる(株)Mediiが実装を目指すのは、そんな問題に光を差す医師から医師への相談サービスです。
自分が暮らす地域で専門性の高い医療を受けたい
Mediiが運営しているのは、オンライン専門医相談サービス「E-コンサル®」です。
目の前にいる患者さんの診断・治療のためには専門的な知識・知見が必要だけれど、近くに専門医がいない。そんなとき、医師が「E-コンサル®」に患者の症状や疑問点を入力すると、登録されている認定専門医から最適な専門医がマッチングされます。
相談したい医師は専門医と1on1のチャットでつながり、治療法や薬の処方などについて相談できるというサービスです。昨年度D-EGGSプロジェクトで実証実験を行い、この度、実装支援事業にも採択されました。
専門医に相談したい場合、従来は、
・知り合いの専門医に尋ねる
・知り合いの医師経由で専門医を紹介してもらう
・学会で質問する
など、属人的で地道な方法しかありませんでした。
一方、E-コンサル®の認定専門医は現在およそ800名。これは紹介だけでは到底たどり着けない数です。
代表の山田さん自身、特定指定難病の患者の一人。難病を専門領域とする内科医でもあり、同じ境遇の人たちのために力を尽くしています。
地元和歌山で診断も治療も受けられなかった山田さん。そんな状況を変えたくてMediiを設立し、E-コンサル®をスタートしました。
そして広島での状況は同じ。事業推進ユニットの種田健二さんを中心に実装支援事業が進んでいます。
広島県にも無医地区が59地区あり、これは北海道に次いで全国で2番目に多い状況。市町村別に見ても、上位に県内の自治体がいくつか並んでいます。(厚生労働省令和元年度無医地区等調査)
実装の舞台は、研修先として医学生が注目するあの病院
今回E-コンサル®を実装するのは、呉市にある呉共済病院です。
こちらは、中四国で医学生からの人気上位を維持している研修病院なのだとか。
そんな呉共済病院にE-コンサル®を紹介したのが、Mediiのスタッフであり、広島市立舟入市民病院の小児科部長でもある佐藤友紀さんでした。
過去にあった質問や事例も自由に閲覧できるE-コンサル®は、研修医にとっても有益な事例集のひとつとなり得ます。
日ごろ使い慣れたメッセージアプリのようにチャット形式で質問できるE-コンサル®は、Z世代の学生にとっても使いやすいのではないでしょうか。
昨年Mediiは、広島県内のとある市中病院で間質性肺疾患の患者さんについて実証実験を行いました。呼吸器内科専門医以外にフォローされている患者さん11名のうち、5名の方についてE-コンサル®を利用。その結果、専門的な知見がないと導入できない治療薬を、2名の患者さんに導入することができました。
ひとつの病院だけでこれだけの効果があるのなら、日本中、世界中で活用すればさらに大きな効果が期待できるのではないでしょうか。
そしてE-コンサル®は、相談したい医師からはもちろん、相談を受ける専門医からも好評なのだとか。
専門医としても1人で診られる患者は限界がありますが、E-コンサル®を通して全国から症例が集まってくれば、さらに知見がたまっていく。専門医の専門性がさらに高まっていくことになります。
医師と一緒に、医療の本質に近づく
「Medii」とは、ラテン語で「本質」という意味。
●EDITORS VOICE 取材を終えて
広島県内の難病患者さんの半分は、自分の住む自治体内で治療ができていないそうです。そして、100人いれば5人は難病に罹患しているのだとか。思っているよりも高い割合で、意外と近くにも難病で苦しむ人がいるかもしれないし、もしかしたら私もかかるかもしれない。
そうでなくても、病院はいつでもお世話になる可能性がある場所です。生活している地域で、専門性の高い医療サービスが受けられたら、安心してここに住み続けられそうです。
(Text by 小林 祐衣)
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