笑顔がお金になるなんて、そんな夢みたいな話が本当にあるんです【実装支援事業】
「そんなウマい話が本当にあるのか」
(一社)One Smile Foundationの代表理事 辻 早紀(つじ はやき)さんは、たびたびこのような言葉をかけられるそうです。
たしかに“1笑顔=1円で寄付できる”と聞いただけでは、そんな幸せで素敵なシステム、にわかに信じられない…。
昨年度のRING HIROSHIMAの取り組みでは、保育所やコミュニティ施設にスマホやタブレットを設置して幸福度の推移を調査し、浜松市などでも同様の実証実験を行っています。
台湾で開かれた、持続可能なMICEイベントを提案するコンペティションでも「GREENTOPIAの初代市民(5名のうちの一人)」に選ばれるなど、すでに世界進出している辻さん。
広島でどのように実装していくのでしょうか。
ネギをしょって鍋まで担いだ笑顔の鴨どうしが出会いました
今回実装する現場は、廿日市市の串戸保育園。そして実装のパートナーは、子ども向け衣料・遊具・玩具の企画や製造、販売などにより、子どもの暮らしと、その周囲で働く人達の暮らしも良くする会社(株)nicopiaです。
2022年1月、RING HIROSHIMAの実証実験でイベントを行う予定だった辻さんですが、新型コロナの影響で中止に。別の手法に切り替えざるを得なかったそんなとき、安村さんと出会いました。
お互いの想いが重なり、辻さんはどんどんブーストしていきました。
今回解決を目指す課題は、保育士さんたちの業務が多すぎること。
笑顔をフックにして、この課題をどのように解決に導くのでしょうか。
笑顔が解決してくれること
保育に対するニーズの多様化や保育士不足など様々な原因が重なって、保育士さんたちは日々業務に忙殺されています。
例えば子どもたちの写真の整理。
写真販売サイトひとつとっても、販売は自動ですが、写真の選別とアップロードは保育士さんが行わなければなりません。写真の販売実績が10万円ほどあったとしても、カメラマンの報酬と保育士さんの手間を考えると赤字です。
そこで今回実装する「笑顔写真」では、笑顔を認識するカメラを使って撮影した、笑顔の写真すべてをアップロード。さらに顔認証機能により子どもごとに仕分けもできて、保護者は自分の子どもの写真だけを見ることができます。
保護者からは毎月定額の利用料を徴収しますが、既存の写真販売サイトを活用することで手数料をカット、また自動アップロードにより業務量もカットできるため、リーズナブルにサービスを提供することができます。
ここから生まれる利益の一部を地域食堂や困窮する家庭に寄付。こうして、“笑顔が寄付に変わる”というわけです。私たちの笑顔をきっかけに、支援を必要とする人々に直接寄付金が送られます。
カメラはリース契約により低コストで導入できますが、「笑顔が増えるほど赤字です(笑)」と、ここでも笑顔の辻さんです。
カメラに笑顔を向けると、顔のまわりに「スマイルサークル」がくるくると回り、真ん中に「One Smile」と表示されます。
このギミックが子どもたちに大人気で、児童140人ほどの串戸保育園に16台のカメラを設置した初日、子どもたちが何度もカメラに笑顔を向けてくれて、なんと初日だけで約7000回の笑顔を検知したのだとか!
眉間にしわを寄せている人がいると、周りの人たちに緊張が広がってしまうことがあります。カメラに向かって定期的に“にこっ”とする風潮ができると、その緊張が緩和されるかもしれません。
また店舗でも、店員のホスピタリティが高かったり、お店の雰囲気が明るかったりするだけで、犯罪率が下がるという研究結果もあるそうです。どうしても店内に死角ができてしまうお店、万引き対策にコストを割けない店舗で導入すれば、それだけで犯罪の抑止につながる可能性があります。
私はちゃんと笑えてるかな…?
笑顔をきっかけに笑顔が生まれ、会話やコミュニケーションもやわらかく広がっていきそうです。口角上げていきましょう♪
計画書になかったことまで進んでるんですけど、怒られないかな…
実装支援事業に応募した当初、計画していなかったコトまで動き始めています。
笑顔を検知すると画面に表示される「スマイルサークル」に企業の名前やロゴを入れることで、広告効果が望めることに気付いた辻さん。まずは広告費を徴収せず、企業にロゴだけ提供してもらうことで実験中です。
そして企業の社会貢献にも、課題が付き物のようで…
大企業に限らず、CSRにリソースを割く余裕がない中小企業や、作家個人が作品の周知に使うなど、使い方は無限大です。
世界に広がるカギは、アクセルとブレーキ!
課題の解決で社会を良くしたい!廿日市をいいまちにしたい!
そんな純粋な思いで活動する安村さんですが、「笑顔で寄付ができる」なんてそんなうまい話があるわけない!と思う人もいるようです。
気持ちはわからなくもないですが、システムを見たら分かっていただけるのではないでしょうか。
●EDITORS VOICE 取材を終えて
「こんな取材なら何度でも受けたいです」と安村さんにおっしゃっていただいたほど、何度も笑顔が生まれたインタビューでした。パソコンのカメラに笑顔検知機能がついていたら、いくら寄付できたかしら…⁉
いつもご機嫌でにこにこしている人の周りには人が集まるように、笑顔には、言葉にできないパワーが確かにあることをインタビューからも感じました。
(Text by 小林祐衣)
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