「経験と勘と度胸」とIoT。職人の集団が進む未来へ【実装支援事業】
2018年にスタートした“ひろしまサンドボックス”で、最初に行われたプロジェクトのひとつが「つながる中小製造業でスマートものづくり」でした。
デジタルソリューション(株)が開発した機械の稼働状況を可視化するツールの実証と、それを使う中小製造事業者のコンソーシアムで業界の横のつながりづくりが行われました。
「つながる中小製造業でスマートものづくり」として終幕を迎えてからもコンソーシアムは続き、そして今回、実装支援事業に採択されたのです。
ものづくり×IoTで、どんな進化が起きようとしているのでしょうか。
“光”を検知する技術で、IT化が進みにくい業界に光を差す
デジタルソリューション(株)が開発したのは、製造用機械の稼働状況を可視化するツール「DBox」。稼働中の機械に点灯しているパトランプの色を検知して、正常に動いているかどうかを1か所で管理することができます。
緑は正常に運転中、黄色は警告、赤は異常発生を表していて、この色を検知することで各機械の稼働状況と稼働率をデータ化します。
「歯車」を中心に、産業用機械など顧客のニーズに合わせた部品や機器を製造する(株)広島精機でも、DBoxを設置しました。
この写真のように、DBoxで各機械ごとに検出したデータは、ひとつの画面で見ることができます。
帯が緑色の部分は正常に稼働している時間、黄色は停止、赤色は異常、そして黒い部分は稼働していない時間です。
それにしても、機械の数の多さたるや!
これが広島精機の特徴であり、そして課題にもつながるところでした。
多品種少量生産、時には1品だけの生産もあり得る中小製造業では、機械が止まっているからといって一概に悪いということではなく、止めている間に次の段取りを進めているなど、裏では仕事が進んでいることもあります。
「稼働状況をデータ化することは、稼働率の向上や効率化だけでなく、他にもメリットがある」と話すのは、DBoxを開発したデジタルソリューション(株)の橋詰公太さんです。
カギとなる、人材の課題
(株)広島精機は、これまでも先進的にIT化を進めていました。
生産管理ソフトは、それ自体が大企業の大量生産向けに作られているものも多く、中小企業ではソフトに合わせて現場が動くことでひずみが生まれたり、スケジュール管理だけで1日終わったりする事例もあるのだとか。
中小企業に合わせたやり方でないと上手くいきません。
そして、どの事業者も共通して抱えている課題のひとつが「人材」です。
ソフトを導入しても、実際に現場で使えるものかどうか、現場で使えるためにどんな機能が必要か。ものづくりのこととソリューションのこと、どちらも理解できるいわば“通訳”が社内にいることは、会社としての大きな強みです。
(株)広島精機でそこを補える人物が、ITに関する基礎的な知識が証明できる国家試験「ITパスポート」を持っている大友岳さんです。
大友さんの前職はシステムエンジニア。(株)広島精機に入社してからしばらくは製造の現場にいて、今は営業を担当しています。
DBoxと生産管理システムのほかにも、工場内の道具の持ち出しや在所を管理するシステムも導入予定です。現場で実際に機械や道具に触れてきた大友さんは、デジタルソリューション(株)との架け橋となって、最大限の効果を生むキーマンとなりそうです。
見えない未来に向けて飽くなき挑戦は続く
IT化を進める(株)広島精機、そして製造業の未来はどうなっていくのでしょうか。
EDITORS VOICE 取材を終えて
「飽くなき挑戦を続ける」と宣言した柳原さんは、AIに関する勉強会でデジタルソリューション(株)の社長と出会ったことがきっかけで、「つながる中小製造業でスマートものづくり」のコンソーシアムに参加したそうです。
ものづくり一筋でありながら、時代に合わせたニーズや手法を敏感に察知しようとする広い視野に感銘を受けました。
勘と度胸と経験の上にITの力も取り入れる職人が増えていくと、日本を支えてくれる製造業がもっともっとすごいことになっていきそうです。
広島の社長さんたち!コンソーシアムメンバーはまだまだ募集しているようですよー!
(Text by 小林祐衣)
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