昨年の「ひろしまサンドボックス」で「株式会社 結.JAPAN」が開発した「旅のしおり」が作れるアプリ「nicody(ニコディ)」。当時は一般旅行客に向けたサービスだったが、事業化を目指す今年は宿泊事業者を対象とした「nicody business」に進化。アプリの実装に乗り出したのは、瀬戸内を中心に7つのホテルを展開する「株式会社サン・クレア」だった。
昨年は旅行アプリを開発
今年目指すのは収益化
昨年の「ひろしまサンドボックス」にエントリーした「株式会社 結.JAPAN」代表取締役の中山雅久理(なかやま・まくり)さん。旅行業界でビジネスを行う中山さんが取り組んだのは、ユーザーが簡単に旅行計画を作れるアプリ「nicody」の開発だった。
当初はグループで旅行情報を共有するためのアプリだったが、その過程で行った場所や宿泊ホテルが記録された「旅のしおり」が作成できるということに着目。それをウリにリリース1年弱で10万ダウンロードを達成した。
あれから1年――今回の実装支援で試すのはnicodyの収益化である。nicodyの新たな使い方をテストしようというのだ。
これまで旅行者が使うことを想定していたnicodyを、ホテル側に委ねるということ。地元に詳しいホテルスタッフがオススメコースを組んだ「旅のしおり」を作り、それを見て気に入った人がホテルを予約するようになれば、ホテルは個性をアピールできるし、ホテルスタッフの士気も上がる。さらに獲得予約数を従業員の評価やインセンティブに連結させれば、ホテリエの仕事意識を集客という面にまで拡大できる――そんなふうに思ったのだ。
瀬戸内をベースにホテルを展開
旅の理想形「ANCHORING」とは?
そのnicodyをアップデートしたnicody businessの実装に名乗りを上げたのは、福山に本社を置く「株式会社サン・クレア」。
代表取締役の細羽雅之(ほそば・まさゆき)さんはnicodyのことを知ったとき「これはきたな!」と感じるものがあったという。
同社の広報担当・東真貴(あずま・まき)さんもnicodyの可能性に魅了された。
ホテルスタッフが独自の視点で
旅のプラン=しおりを作成
ということで、まずは(株)サン・クレアがnicody businessを導入。東さんは実際にnicodyを作って旅のプランを作成し、それをアプリ上に公開してみた。
新たな集客のプラットフォームとしての可能性を探りつつ、経営者としては従業員の意識改革も期待する。
中山さんの現状の目標は、nicodyを既存のOTAに代わるくらい集客ができるシステムに育て上げること。そのためにリアルとの連携やnicodyらしい特典なども考えながら実験を続けていく。
UberやAirbnbなどマッチング全盛
旅のスタイルもアップデート!
業界のトレンドをつぶさに見てきた細羽さんにとって、nicodyの登場は新たな時代の幕開けを感じさせるもののようだ。
最後、3人の口から出たのは旅に対する強い情熱。まだ見ぬ土地を目指すという旅に惹かれた人たちは、冒険やチャレンジの要素も強いスタートアップとも相性がいい――いわゆる、ここではないどこかへ。ここに集まった彼らは皆、日常にプラスサムシングを求める「旅の仲間」かもしれない。
●EDITOR’S VOICE
筆者も旅が好きなので、みなさんのトークを聞いて燃えました。旅って旅すること自体も楽しいけど、誰かの旅の話を聞くのも楽しいんです。それはリアルなアクションだから。机上の空論と違う実体験で、そこには出会いやアクシデントや発見や好奇心といったワクワクの物語が必ずあるから。
今回の3人の話も、ちょっと旅の話に近いかもしれません。出会って、一緒に行動して、新しい気付きがある。別々の場所にいた人同士が交わり、嬉しい成長がある。人生が旅のようなものだとしたら、ここはひとつの交差点? 「ひろしまサンドボックス」ってドミトリーみたいなもの? いやぁ、やっぱ旅、行きたいっすね!
(Text by 清水浩司)