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人も野菜も、バス停に集合!?貨客混載の「やさいバス」【実装支援事業】
野菜を載せて走るバス。それが「やさいバス」。
優しいその響きに筆者が想像したのは、マイクロバスに新鮮な野菜をたくさん積んで、バスの路線をのどかに走っている姿でした。
しかしその実態は、のんきな私の想像をはるかに超えるすごいバスだったのです。
人と野菜が一緒に乗る「やさいバス」
やさいバスはその名の通り、各生産地を“停留所”として、出荷する野菜を載せてスーパーなどの売り場近くまで運んでいます。生産者にとっては新しい販路のひとつに、店舗にとっては収穫直後の新鮮な地元野菜を仕入れる手段となります。
そして“停留所”を周るバスには、「やさいバス」専用チャーター便と、路線バスを利用した貨客混載便があります。
貨客混載便では、路線バスのバス停で乗客とともに野菜を載せて、出発進行!目的地の売り場近くのバス停まで、野菜と人が一緒に乗って行きます。
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昨年度D-EGGS PROJECTでは、そごう広島店にやさいバス専用売り場ができたほか、JR三原駅にも試験的に売り場が設けられ、県内の採れたて野菜が多くの人の手に渡りました。
ぐいぐい広がる「やさいバス」
D-EGGSから続く実装支援事業では、アグリプロデュース(株)がやさいバスを運営します。
アグリプロデュースは、農地の土づくりから生産者のブランディング、収穫後の販売方法のコーディネートも行っていて、地元農家さんや販売店舗との強いつながりを持っています。そんなアグリプロデュースとのタッグでも、やさいバスのスタートは苦労の連続でした。
出荷してくれる生産者、野菜を運んでくれる人、野菜の売り場を探して東奔西走です。
たくさんの方にご相談し、道の駅を通じて農家さんとつながることができました。最初はアクト中食の専務でアグリプロデュースの取締役も兼任されている平岩さんと、アクト中食(株)の役員さんが自らドライバーとなって運搬してくださり、売り場もなかったので広島市内の企業で職域販売を行いました。
3回ほど行った頃、広島電鉄や広島バスセンター、そごう広島店の協力のもと、貨客混載に向けて動き出すことができました。バスセンターとそごう広島店は同じ建物。路線バスに貨客混載し、3階のバスセンターまで野菜を運んで、そごうの地下で売るという黄金ルートがこうしてできました。
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D-EGGSを機に「やさいバス広島」が始まっておよそ2年半。2022年4月にはそごう広島店の売り場面積が倍になり、無印良品広島アルパークでも販売がスタート。2023年2月には貨客混載便の県内7ルート目がスタートして、大発展しています。さらに、マックスバリュ可部店やフレスタ横川店など、広島市内のスーパーでの販売も始まりました。
広島の中心部に、瀬戸内海の島から、山口県、島根県、鳥取県からも、貨客混載便で野菜が集まっています。
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大変なこともたくさんありますが、“大変だ”と言えるほどどんどん拡大しているのはありがたいことです。
農家さんも販売先が増えることを喜んでくださって、店頭に自分の野菜が並んでいる姿をわざわざ見に行ってくれたりもしています。お店の方が生産者と直接話したいと言ってくれることもあって、「やさいバス」がつなぎ役となっていることを実感します。
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野菜づくり・生産のプロである農家さんを、販売面でサポートしているアグリプロデュースは、その苦労を間近で見ています。
生産から販売するところまでは切っても切れない一連の流れです。しかし農家さんは素晴らしい野菜を作っても、どう販売したらいいのか分からないというケースが多々あります。そこをつなぐのが当社、そして「やさいバス」です。
最近では、庄原実業高校の生徒が「やさいバス」に注目してくれて、販路や商流を考える授業にも一部参加させてもらっています。生徒さんと「やさいバス」の貨客混載便に乗ってそごうまで行きました。市場調査から、自分たちの商品をどういう人に食べてもらうか具体的にイメージしてもらえたようでした。
商品の価値をどう見せるか、どういう販売方法ができるか、生徒さんが考えて、自分たちの商品の付加価値を見つけるきっかけにもなりそうです。
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つくる・売る・食べる人以外にもやさしい「やさいバス」
生産者と販売者をつなぐ「やさいバス」ですが、つくり手とつかい手をつなげる以外にも大きな役割があります。
それがフードマイレージ。食料がつかい手に届くまでの輸送距離の短縮です。
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通常、農家さんが野菜を出荷してから私たちの手に届くまで、いくつもの場所を経由します。その点「やさいバス」は各バス停を経由して、ほぼまっすぐ売り場に届きます。
環境にも配慮できるとあって、ESGなど社会課題に取り組む企業にとっても嬉しいサービスです。
「やさいバス」で販売する野菜にはフードマイレージを表示しているので、カーボンニュートラルを目指す企業にとっても目に見えた成果となります。そごうのESG部門でも喜んでいただき、セブン&アイホールディングスのホームページにも掲載されました。
さらに、バスという視点からも嬉しい効果が見込めます。
バス会社は、コロナ禍で外出が減ったとしてもバスを走らせないといけませんでした。また中山間地域では高齢化や過疎化が進んで廃線となる路線もあります。
「やさいバス」で貨客混載ができることは、廃線の危機を救う一筋の光明になるかもしれません。
昨年はバス会社の社員さんに出向してもらい、「やさいバス」に携わってもらいました。その社員さんにとっても地域の方の声を直接聞く機会になったようです。
あらゆる課題に立ち向かう「やさいバス」。次なる展開は?
ローカルレガシーカンパニーといえばかっこよく聞こえますが、なかなか仕組が変わらない分野で噴出する地域課題を解決していくことは簡単ではありません。ひろしまサンドボックスで世界を変えようとしている人たちと出会い、実際に世界が変わりそうな仕掛けもたくさんあって、そのきっかけをもらいました。
都道府県の境に関わらず野菜を届けることや、飲食店などの外食産業とのコラボなども考えています。
●EDITOR’S VOICE
田舎出身の筆者は、席が空いてガラガラのバスにゆったり乗るのも嫌いではありません。でも空いた席がもったいないと思うこともありました。
空いた席に新鮮野菜が座ってる……冒頭に続いて、またのんきに想像する筆者でした。
野菜を買うときも、より新鮮なものが手に入るに越したことはありません。
野菜と人が仲良くバスに乗って、近所のスーパーにやって来る…ああ、想像が止まりません。
(Text by 小林 祐衣)