教員を楽に、子どもたちを笑顔に!先生ロボットは複式学級のお助け係【実装支援事業】
「複式学級」という言葉をご存じだろうか。児童・生徒数が少ない学校で、2学年以上を同時に教えるクラスのことだ。教員の負担が激しいこの仕組みの救世主となりそうなのが、授業のサポート役として活躍する先生ロボット「ユニボ先生」。2021年度の実証実験を経て、いざ広島での実装へ!
ユニボ先生が目指す社会
STEP1 |複式学級での教員の負担の軽減 ←NOW
STEP2 |特別支援学級・適応指導教室の学習支援
STEP3 |集団授業が可能なロボット先生の実現
GOAL!|ロボット先生が当たり前の社会の実現
2021年度の「RING HIROSHIMA」で先生ロボットによる教員の負担低減という課題にチャレンジした、株式会社ソリューションゲートの鈴木博文さん。2018年に自社で開発した学習ロボット・ユニボ先生を用い、三次市立青河小学校で実証実験を行った。
ユニボ先生はAIを活用した学習支援ロボット。タブレット等を使った一方的な学習ではなく、会話による双方向的な学びができるのが特長だ。あらかじめ用意されたQRコードを読み込むと、名前を呼んでくれたり、教材の内容について学習ポイントを答えたりしてくれる。一般的に想像する「人間の仕事を肩代わりするロボット」ではなく、人間の先生の負担を減らすための、授業のアシスタントのような使われ方がイメージされている。
今年度は、青河小学校の複式学級・特別支援学級での継続利用に加え、広島県内での新たなトライアル実施校獲得を目指す。鈴木さんが2030年を想定しているという「ロボット先生が当たり前の社会」が実現するにはまだまだ先は長いが、関わるメンバーの思いは熱く高まっている。
セコンドから実装者へ。学校の維持が地域社会を守る
昨年度のチャレンジの詳細は前回記事を読んでいただくとして、ここで紹介したいのは、「ユニボ先生」が作る未来に可能性を感じ、今回のプロジェクトに関わるメンバーだ。
実装者|ロボフィス株式会社 石井 彰さん
開発者|株式会社ソリューションゲート 鈴木博文さん
実装先|三次市立青河小学校 貞丸昭則校長
実はこの組み合わせそのものが、前年度の「RING HIROSHIMA」がきっかけで生まれている。ユニボ先生を開発したのが鈴木さん。2021年度に実証実験に協力し、ユニボ先生を導入したのが貞丸校長率いる青河小学校。では実装者たる石井さんは…?というと、もともとは「RING HIROSHIMA」で鈴木さんのチャレンジをメンターとして支えた「セコンド」だった。
石井さんが所属するロボフィス株式会社は、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を販売・導入支援する事業を行っている。RPAは例えばエクセルへのデータ入力などの反復作業を自動化する仕組みのことで、自治体系のクライアントも多い。ユニボ先生の公立校への実装にあたっては、自治体とのやり取りに経験値がある人の存在が必要不可欠でもあり、広島県の推薦を受け、石井さんが販売代理店的な役割で参加することになった。
ミイラ取りがミイラになったというか(失礼)、今やこの取り組みの中心に立ち、教育現場にロボットがいる社会の実現に向け、走り始めている石井さん。そのモチベーションはどこにあるのだろうか。
石井さんはユニボ先生そのものの価値はもちろん、先生ロボットを導入することで生まれる、中山間地域など過疎化が進む地域社会への好影響についても注目している。
ユニボ先生を導入中の青河小学校がある三次市も、中山間地域に位置する市町のひとつ。現在三次市内に21校ある小学校のうち5校は完全複式学級だ。一部複式学級のところも含めると、その数はもっと増える。
教育現場で得た手触りを開発者へフィードバック
現在石井さんの手元にあるユニボ先生は6台。このうち2台が青河小学校にあり、残り4台を広島県内に設置するのが近々の目標だ。「うちの子どもたちをユニボ先生に会わせてやりたい!」と、昨年から導入している青河小学校では、使ってみてどんな感触を得ているのだろうか。
今秋に「東洋経済オンライン」の取材を受けたことなどもあり、この取り組みの認知度は上昇中。トライアル導入校の増加に向けては追い風が続く状況だ。鈴木さんのもとにも、県内外の教育関係者や学校から照会が来ているという。
ユニボ先生を本当に社会に浸透させるには、①音声認識の精度などロボットそのものの機能を向上させること、②トライアル導入校を増やし認知を広げてビジネスに繋げていくこと、③実際に使った感触をフィードバックすることでロボットと教育現場の馴染みを良くすること、この3軸どれも欠かすことはできない。それぞれの立場で同じ目標を目指す石井さん、鈴木さん、貞丸校長の挑戦はこの先も続く。
●EDITORS VOICE 取材を終えて
「ユニボ先生と話すことは、学校には来られても授業が受けられないような子にも有効だと思う」「経済事情で塾に通えない子が学習する場にユニボ先生を置いてあげたい」「ロボットとなら素直に話せるという子もいる。メンタルヘルスの把握に役立つ」…。取材中に感じたのは、この取り組みに携わる皆さんの、熱いユニボ先生愛でした。まるで自分の子どもを褒めるみたいに、ユニボ先生の話が止まらないお三方。私もユニボ先生に会ってみたくなりました。最後に、貞丸校長がおっしゃっていた締めの言葉でまとめたいと思います。「ユニボ先生で広島に笑顔の輪を!」(Text by 山根尚子)
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