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健康×DX×スポーツ=きたひろモデル(北広島町)【スタートアップ共同調達事業】
文字通り広島市の北にある北広島町。芸北、大朝、千代田、豊平の旧4町からなる山あいのまちは御多分に漏れず過疎化が進み、住民の高齢化に直面している。町は町民の健康維持のため2018年から広島大学と組んで継続的に実証実験を行ってきたが、「The Meet」ではそれをさらに前進。姿を見せはじめた「きたひろモデル」の現在地を追った。
健康長寿社会の実現に
スポーツとDXを活用
今回の「The Meet」では3案を採択するなど参加自治体の中でも積極的な北広島町。採択案のひとつは「PHR活用プラットフォーム『みらい健康手帳』・スマートウォッチ・体組成計を活用したこころとからだの健康づくりと運動を通じたつながりの創出」で、これは多くの自治体で関心の高い「健康×DX」のトライアルになる。
町の総務課DX推進係主任の小川康貴(おがわ・やすたか)さんと係長の大本賢一郎(おおもと・けんいちろう)さんが取材に応えてくれた。
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北広島町は中山間地域で高齢化率も高く、高齢者の方の健康寿命を伸ばしていきたいと考えてます。ただ、飲酒率も喫煙率も全国平均と比べて非常に高いのが現状で……
こうした生活習慣ってやめましょうと言ってもなかなかやめられないのが現実だと思うんです。そのためには自分の中での気付きが必要というか、まずは「健康に気を遣う」というマインドに変わらないと難しいのかなと想像します
長年続いてきた生活習慣を変えるのは並大抵ではない。そんな現状に対し、北広島町が掲げたキーワードが「きたひろスポーツ(きたスポ)」である。
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町は2021(令和3)年4月に「第2期北広島町スポーツ推進計画」で「スポーツを通じた楽しさ・喜び・幸せを感じる身体活動」を掲げ、それを通称「きたスポ」と呼んでます
北広島にはソフトテニスクラブチーム「どんぐり北広島」や野球の強豪校・新庄学園があるなどスポーツが盛んな町で。それらを軸に、スポーツをやること、スポーツを見ること、ボランティアなどでスポーツを支えることを通してウェルビーイングを感じてもらい、健康長寿社会を実現することを目指してるんです。今回はそのスポーツという切り口とDXをうまく掛け合わせて提案したいという想いもありました
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「きたひろスポーツ」というキーワードで健康社会を追求してきた北広島町がデジタルを用いて挑戦する次なる一手。「いかにして健康に気を遣うマインドに変容してもらうか?」という課題に対して選ばれたのが今回の採択案というわけである。
2018年にはじまった
広島大学との実証実験
今回の協業相手は「国立大学法人広島大学」……って、あの広島大学。その広大が開発・監修を務めた健康アプリ「みらい健康手帳」の活用が今回のテーマになるのだが、これについては説明が必要だろう。
実は北広島町と広島大学は以前から共同で「健康×DX」の実証実験を行ってきた。まず2018年、「ひろしまサンドボックス」の枠組みで、みらい健康手帳の前身となる「みらい健幸アプリ」の実証実験の舞台となった。2022年にはメンタルヘルスのDXを考える「こころの健康DXプロジェクト」に参加。ここですでにみらい健康手帳の実証実験をはじめていて、今回はいわばその延長戦、さらなる普及を目指した取り組みとなる。
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同じみらい健康手帳を使った実証実験ですけど、去年までは対象が高齢者だったんです。高齢者の方に自身の健康を気にしてもらう試みを行っていて。今回のThe Meetは対象はもう少し若い世代。町内の健康経営優良法人に協力してもらい、従業員の方々にアプリを使ってもらうという形で検証を進めていきたいと思ってます
そもそも、みらい健幸アプリから地続きのみらい健康手帳とは一体どういうものなのだろう? 天下の広島大学がここまで熱を入れて構築しようとしているシステムとはどんなものなのだろう?
それを読み解くキーワードが「PHR」になる。PHRというのはパーソナル・ヘルス・レコードの略で、つまり個人の健康・医療・介護にまつわる情報を指す。このアプリを使えばスマートウォッチや体組成計と連動させることによって、体温・血圧・心拍数・血中酸素・歩数・食事・睡眠時間……といった健康情報が簡単に収集・管理・視覚化できるようになるのだ。
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常時このアプリで健康状態がチェックできれば、住民の健康意識も向上するのではないか? DXによって健康に関する気付きを与え、行動変容を促せるのではないか?――それが北広島町で行われている実証実験の中身である。
テーマは住民の行動変容を促せるかどうか。やっぱり漠然と「お酒を控えた方がいいな」とか「運動しないといけないな」と思っても行動に結びつかないじゃないですか。でもレコーディング・ダイエットすると体重が気になるし、健康診断の前にはお酒を控えたりしますよね。スマートウォッチと連携したこのアプリを入れることで少しでも健康に気を遣うようになるのか、それをアンケートや2ヶ月後のヘルスデータを通じて解明するのが今回の目標になります
アプリの導入によって
行動変容を促せるか?
では現在の実証実験はどのような状況にあるのだろう?
町内の企業に取り組みの説明を行い、参加モニターを募集しました。5社50名の参加を予定してますが、健康福利厚生に力を入れてる企業さんからは「もっと人数を増やせないか?」という声もいただいてます。今は各社にスマートウォッチを配布して1回目の測定会が終わったところ。期間中に3回の測定を予定しています
今回の実証実験は3~4月の2ヶ月間を予定。昨年高齢者を対象に実証実験を行っているため、比較的メドは立ちやすいという。
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去年は高齢者が対象だったので、スマートウォッチとの連携や機器の取り扱いの説明で手こずりましたね。それに比べれば今回はずいぶんスムーズに進んでる印象です
ただ、高齢者の方も最初は戸惑ってましたが、いざ使いはじめると仲間内で盛り上がったり、互いのデータを見せ合って自主的に運動をはじめられたりして。そのあたりは今回も期待できるんじゃないかと思います
ちなみに北広島町役場の職員も実証実験に参加することになっている。
実は昨年、北広島町役場が健康経営優良法人に認定されまして。全国の町村で「健康経営優良法人2023」に認定されたのはウチが初めてなので、それも町のアピールになるかなという下心で今回参加しています(笑)
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なんとそんなところまで健康にこだわっていようとは! 北広島町の健康への取り組みは筋金入りのようである。
健康に取り組むこと自体
広義の意味でスポーツ
もうひとつ面白いのは、今回の企画と冒頭に挙げた「きたひろスポーツ」がリンクしていくシナリオである。
さっき高齢者の方が互いのデータを比較し合うという話がでましたけど、たとえば睡眠の質などは100点満点でスコアが出るんです。その部分で競い合えば健康に対する取り組み自体が広義の意味でのスポーツになります。将来的には「北広島町ナンバーワン健康企業を表彰する!」といった企画を町で主催してもいいかな、と。そうしたモチベーションで行動が変容してくれれば、こちらとしてはありがたいわけですから
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こうなるとまさに「スポーツの町」の面目躍如だ。
最終的に「きたひろモデル」を作っていきたいというのが頭の中にはありますから!
健康×DX×スポーツ――これまで見たことがないシアワセのカタチが北広島町で生まれつつある。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
文中で紹介した「ひろしまサンドボックス」での「みらい健幸アプリ」の公式レポート、実は私が書いてるんです。当時実証実験の舞台となった北広島町を訪れ、役場の担当者の方や実際アプリを使用した住民の方に話を聞きました。あれから3年の歳月を経て、みらい健幸アプリはみらい健康手帳に変わったものの、今も北広島町と連携しながら実装への模索が続いている……「アイツもまだ頑張ってるんだな」。その諦めない姿勢に勇気をもらった「久しぶりの再会」になりました。(文・清水浩司)
・共同事業者:国立大学法人広島大学
・活用ソリューション:健康情報の記録・整理・視覚化アプリ「みらい健康手帳」
・概要:PHR活用プラットフォームの導入で市民の健康に対する行動変容を目指す
・必要経費:100万円(※スマートウォッチ購入費、体組成計レンタル費など)