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江田島=デジタルアイランド! IT教育で島を支える若い人材を育む【RING HIROSHIMA】

「江田島といえば?」と聞かれて、パッと思い浮かぶのは何だろう。旧海軍兵学校に、海や山のアクティビティ、牡蠣や最近はオリーブも人気だよな…。あと、広島市内からでも意外と近いんだよね!

…といったイメージが多いのでは。それがこれからは、「江田島はデジタルの島!」という言葉が真っ先にあがってくるかもしれません。


CHALLENGER
『合同会社GeneLeaf』安西 翔平さん

縁あって移住した江田島で
学校を開校してデジタルに強い島を目指す

東京で仲間とともに『合同会社GeneLeaf』を立ち上げ、システム開発などITに関する仕事を行ってきた安西さん。コロナ禍を経て江田島に企業を移転&移住し、現在は島の人たちと繋がりながらITの仕事を続けている。

海のある場所がいいなとネットで探して、最初に出てきたのが江田島だったことを縁に移住を決めました。実際に移住して地域の方々とお話ししてみると、島の課題についても話す機会が多いんです。移住した時点では考えてはいなかったのですが、話を聞くうちに自分が得意とするITの力を使って、島のためにできることがあるんじゃないかと考えるようになりました。

島に暮らす人たちが考える、島の課題。それは、社会的要因としての就職や進学による人口減少。そして、その背景に影響している教育の格差だ。

高校の存続が危ぶまれていたり、実際に看護学校が移転になったりと、江田島で教育を受ける機会が少なくなっているということが分かりました。島に若い世代の人が集まる教育機関が必要だと感じ、RING HIROSHIMAに挑戦してこのプロジェクトに取り組んでいきたいと考えました。

安西さんが目指したのは、「江田島でエンジニアの養成学校を開校」すること。またそれをきっかけに、江田島でのIT人材の採用支援や地域の人々のデジタルに対する知識と情報の格差是正などもカバーする。江田島がデジタルに強い島になる、“デジタルアイランド”に向けたプロジェクトだ。


SECOND
『株式会社E.S CONSULTING GROUP』佐藤 祐太朗さん

地域コミュニティづくりの部分で
これまでの経験をいかしたい

『株式会社E.S CONSULTING GROUP』設立後、自治体と連携して地域活性化のためのプロジェクト創出などに取り組んできた佐藤さん。昨年度に続き今年度もRING HIROSHIMAのセコンドとして手を挙げ、安西さんのセコンドに就任した。

地方創生プロジェクトのコンサルティングを事業として行っています。特に、これまで江田島をフィールドとして取り組んできたので、安西さんも江田島で挑戦されるということを知り、さらに“デジタルアイランド”というキーワードにもインパクトを感じてワクワクしたので、携わらせてもらいたいと思いました。僕自身はプログラミングの技術的な部分には詳しくないですが、教育という面から地域コミュニティをつくっていくという部分では何か役に立てると思い、伴走させていただいています。


TALK ABOUT “RING HIROSHIMA”

挑戦を応援してもらえる環境に感謝しながら
デジタルの力でより良い価値を生み出せるように

安西 翔平さん(左)、佐藤 祐太朗さん(右)

――デジタルに関する教育の機会について、江田島ではどのような意見があったのでしょうか?

安西 実証期間が始まってから改めて、小学生向けのプログラミング教室を開催してアンケートをとりました。“有料でも学びたい”という回答が90%以上で、そのうちの一部の方は既にオンラインで学んでいたのですが、多くの方は“学びたいけどできていない”、”できれば江田島で学びたい”という回答でした。高校でも同様にプログラミングの授業を行った際にアンケートをとると、3分の2以上が“学びたい”という結果だったので、ニーズがあることを確証して早くこのプロジェクトを形にしたいと思いました。

島内にある大柿高校で実際に行った、プログラミングの授業風景。

――今は時勢的にオンラインでの学習も増えていると思いますが、オフラインで考えているのはなぜですか?

安西 オンラインでのプログラミング学習は、挫折率が高いんです。例えば教材のロボットが壊れたときに親御さんが直せなかったりなど、解決できないことがあるとそこで止まってしまいます。オフラインであれば、そうした本質的ではないところでの続かない理由を減らせること、あとはやっぱり一緒に学ぶ仲間がいた方が楽しいと思っています。僕としては、そうした学ぶ機会を無料で提供するということにこだわって学校の開校に向けて取り組んでいます。

小学生向けプログラミング教室を開催したときの様子。
仲間と一緒に課題を解決していくことは、オンラインではできない体験。

佐藤 当初、プログラミング教育を無料で提供する既存の仕組みを江田島で展開しようと安西さんは動かれていたんですが、それが急遽難しくなってしまったんです。それでゼロベースから見直して、取り組みの内容を方向転換しました。それを決めてからの安西さんの行動力がものすごく早くて、そのスピード感で動かれていることに驚きました。

安西 気持ち的にはだいぶんへこみましたが、新しく方向を定めてからは自分でできることも増えたので頑張ろうと思って行動することができました。

――新しい取り組みのポイントはどんな部分になりますか?

安西 僕自身は中学生のときに学校に行っていない時期があるので、その頃に感じた教育の課題を解消できる場になればということも考えました。もちろん江田島市民の方向けの学校をベースにしつつ、不登校の生徒へのリスキリングなどもできる教育機関にしたいと思っています。

佐藤 その取り組みに向かって動き始めたことで、江田島で安西さんが主人公として挑戦することの意味合いがより深まったので、コモンズマネジメントの考え方を共有しました。例えば、江田島で体験型の合宿をしながらプログラミングについて学んだりとか、そういうブランディングもしていけるんじゃないかと思っています。牡蠣業者さんとか農家さんとか、江田島だから学べる要素をいれていけるといいですよね。

安西 そうですね。2月には学校をプレオープンしたいと考えているので、施設の下見にも行ってきました。オープン前にはテストマーケティングとして江田島ならではの勉強合宿ができるように、今準備しているところです。あとは、やはりマネタイズについても仕組みを整えていきたいと思っています。教育の機会を減らしたくないので、キャッシュポイントは学校の生徒さんからではなく、学校でスキルを身につけた人とIT人材の採用を希望する企業とを結び付ける人材紹介の部分で現状は考えています。

校舎予定地を見学中。

佐藤 今回のプロジェクトだけではなく、安西さんが他に取り組まれているIT事業も含めて、今後しっかりとシナジーマップをつくっていきたいと考えています。江田島でプログラミングやデジタルに強い人材が育って、その力を地域に還元してくれるようになるといいですよね。さらに少し壮大ではありますが、そこからデータサイエンスなどにも興味を持ってくれる人材が生まれるといいなと思っているんですよ。例えば天候に関するデータを分析して牡蠣養殖の効率化を図るとか、将来的にそういうことのできる人が安西さんの教育機関で育つと、地域全体の生産性の向上にもつながるなと思っています。

安西 そこは僕もとても期待しているところです。デジタルの力を通して江田島が良い方向に進んでいけるように、自分だけではできることに限りがあるので、協同できる仲間を増やしながら取り組んでいきたいです。

――仲間といえば、RING HIROSHIMA内でもチャレンジャーやセコンドの皆さんの交流が生まれていますよね。

安西 そうなんです。僕はIT業界だけしか経験がなかったのですが、交流をきっかけに別のフィールドの社会課題について知ることができたし、コラボしてみることでより良い価値を生み出せることがあるということにも気付けました。RING以外でも、江田島の方や広島の方は僕がやりたいと思って行動していることにすごくサポートしてくださいます。挑戦を応援してもらいやすい環境だなと改めて感じているので、引き続きしっかりと取り組んでいきたいです。


EDITOR’S VOICE 取材を終えて

江田島で暮らしたり、江田島をフィールドに活動したりと、日頃から島の人とのつながりを深めてきた安西さんと佐藤さん。今回の江田島デジタルアイランド計画も2人だからこそ生み出せるものに形づくられていくのだろうなと楽しみで仕方ありません。「江田島といえばデジタル!」、そんな言葉が日常的に聞こえてくる日は…きっと近い!
(Text by 住田茜)


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