デニムの産地と聞いて、どこを思い浮かべるでしょうか。
岡山県倉敷市?
実は、生地としてのデニム生産は福山市が日本一なんです!
今回は、伝統的な備後絣から服をつくる技術が受け継がれてきた福山市で行われている実装事業をご紹介します。
みんなと同じものを着るよりも、自分らしい服を着たい。
そんな私たちのニーズに応えて多品種小ロット化が進むアパレル業界では一体どんな問題が?
多様なファッションの裏で起こっていること
patternstorage(株)代表取締役の今井恵子さんは、高校時代からファッション誌が大好き。ファッションへの関心は尽きず、パターンナーとして活動後、同社を設立しました。
小ロット化が進む一方、業界で使われる縫製仕様書の様式は各社まちまち。必要な原材料を発注するにも、仕様書を基に手書きやエクセルの発注書を作ってファックスで送信するなど、アナログな手法を取らざるをえない状況でした。
そこでpatternstorageが提供するサービス「patternstorage」は、光学文字認識技術(OCR)を応用して、紙でもエクセルでもPDFでも、どんな形の仕様書からでも情報をテキスト化し、人の手で処理するよりも効率的に後続の業務に繋げていきます。
D-EGGS PROJECTでは、福山市の日本デリバリーサービス(株)とタッグを組み、縫製仕様書から原材料を調達することを実証しました。
実装支援事業では、原材料調達の次の段階として製造調達に挑みます。
多様なファッションの裏で起こっていること
中高級ゾーンのおしゃれ着などを手掛ける日本デリバリーサービスは、コロナ禍で外出の機会が減ったことにより、大打撃を受けました。
同社は自社工場を持っていますが、アパレル業界全体では多重下請けの構造が特徴です。縫製仕様書から、生地を裁断する事業者、縫製する事業者…と、分業で製造するのが一般的。
実装支援事業では、日本デリバリーサービスから裁断業者、服飾資材商社などへスムーズに製造の調達をするための改善を進めています。
実はD-EGGS PROJECTよりも前から連携を始めていた2社。日本デリバリーサービスの未来への期待を背中に受けて進むpatternstorageですが、まだまだ開発途上です。
同じ思いで、業界の未来を創っていく
DX化への挑戦、そして現場での実証実験を重ねながらのシステム開発。両社にとってひろしまサンドボックスは良い機会でした。
●EDITOR’S VOICE
着物用の反物も、糸を紡いで織る人、反物を染める人、絵の下書きをする人、型を作る人、型を作って染める人…と、細かい分業で作られていると聞いたことがあります。
服を作る業界では伝統的な方法なのですね。
良い伝統を守りながら新しいことに挑戦するときには、なにかしら壁や障害が付き物です。本当の効率化を目指し、思いをひとつにして、ファッションの楽しさを守りながら世の潮流にも柔軟に対応する両社が印象的なインタビューでした。
(Text by 小林祐衣)