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LEDイルミ in ベイサイドビーチ坂!(坂町)【スタートアップ共同調達事業】
今回の坂町の採択案は基本的にすべて「ベイサイドビーチ坂の魅力向上」がテーマだが、アート、キャンプに続く3つめの案はイルミネーション(注:アートはその後、別エリアに変更)。さまざまな手法で課題を解決しようとする姿が印象的だ。一方で実証実験に臨む職員たちの間にも、それぞれの想いが去来していた。
坂町の職員にとっては
復興のシンボル
今回取材した坂町の採択案は「写真や映像をリアルに映し出し、人の動きに反応して変化する最先端のLEDイルミネーション技術を活用し、今までにない驚きや楽しさを提供」。全3件の採択がアート、キャンプ、イルミネーションであることを考えると、これらをまとめて「ベイサイドビーチ坂・魅力向上3部作」とでも呼びたくなる。
今回取材に応えてくれたのは総務部総務課総務係主事の角戸涼太(かどと・りょうた)さんと、情報政策監の鳴川雅彦(なるかわ・まさひこ)さんだ。
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ベイサイドビーチ坂についての課題なんですけど、やはりビーチということで夏期だけ、昼間だけというイメージが強いんです。特に夜は非常に暗く、足を踏み入れる人も少なくて。LEDでライトアップすることで、中に入りやすくなればという想いがありました
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ベイサイドビーチ坂の駐車場利用時間は午前9時~午後10時。かなり遅くまで開いているだけに、日没後の夜の時間帯をいかに活用するかがポイントになる。
ちなみにこの案件を担当する角戸さんは、ベイサイドビーチ坂に強い思い入れがあるという。
私は生まれも育ちも坂町で、幼少期からベイサイドビーチ坂には海水浴で行ってました。でも忘れられないのは平成30年7月の豪雨災害です。あの時、水尻のところでクレアラインが崩落して、国道31号も土砂で通れなくなって。ベイサイドビーチ坂の駐車場を緊急用通路として使ったんです。それがあったからこそ避難所の運営が可能になった部分があります
あの時、私は入庁2年目。だから私ども町職員にとって、ベイサイドビーチ坂には復興のシンボルというイメージがあるんです
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今はおだやかなレジャースポットに戻ったが、6年前の記憶はまだ生々しく地元に残る。そんな思い出の場所を明るく照らし出すためのプロジェクトを角戸さんは担当することになった。
SNS映えスポットとして
夜も楽しんでほしい
今回坂町が協業相手に選んだのは「ZIGENライティングソリューション株式会社(以下、ZIGEN)」。ZIGENは東広島市のスタートアップで、LED光源の開発からイルミネーションの設計まで手掛けている。最先端のイルミネーション事業「Twinkly」も展開し、大阪や名古屋などでの実績もある。
ベイサイドビーチ坂は昼間の多島美だけでなく、夕暮れから夜にかけて美しい景色が広がるんです。私も趣味でカメラをやってますが、すごくいい画角で撮れるんですよ。そこにイルミネーションが加わればSNS映えするスポットとして相乗効果が生まれると思ったんです
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方角的に西を向くベイサイドビーチ坂は夕陽の絶景ポイントとして有名だ。瀬戸の日暮れを堪能した後、そのまま夜のイルミネーションに流れるというのは来園者のすごし方として齟齬はないように思われる。
あとZIGENさんは通常のイルミネーションとは違い、光のパターンをプログラムしてリアルタイムで制御する技術をお持ちなんです。硬質ネットに大量のLEDを取りつけて、スクリーンのように写真や映像を映したりメッセージボードとして使うことも可能で。さらにセンサーを組み合わせれば、人の動きに合わせて光が変化するインタラクティブな表現もできる。アイデア次第で幅広く活用できる点も大きなポイントになりました
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ZIGENが得意とするのは、イルミネーションといってもアトラクション感のあるタイプ。はたしてこの技術の投入でビーチはどう変化するのだろうか?
現状の魅力を損なわず
付加価値を付ける
さて、現在の進行具合だが本格的実証実験に先立ち、まずはテストを行ったという。仮にイルミネーションを導入したとしても、それが夜の海の風情を壊すものでは本末転倒になる。そもそもベイサイドビーチ坂とイルミネーションは共存できるのか?――一番最初に確認したのは、その部分だった。
ひとまず事業者さんに小さいLED装置を持参いただいて夜間に点灯してみたんです。それが想像以上にいい感じで。メッセージを流した際の文字もはっきり読めるし、暗い海を背景にSNS映えスポットにもなる。海との親和性が高いことは実証できました
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ビーチとイルミの相性はバッチリ。それを踏まえて、今はどんなターゲットに向けてどんなコンテンツを提供するか協議を重ねている。
ただ、具体的に考えていくと問題も出てきて。たとえば電源の確保や配線の問題で、イルミネーションを設置できる場所が限られてしまうんです
あと、タブレットを使ってお絵描きした絵が投影できるコンテンツを導入した場合、タブレットの管理のため常に人が付いていなければなりません。そうした部分を検証しつつ、ベイサイドビーチ坂の魅力を損なわないまま新たな付加価値を付けていければと思います
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ZIGENのイルミを体験した角戸さんは「大人でもすごくわくわくするし、子供は大喜びだと思います」と自信をのぞかせる。今後は春のうちにシステムを構築、海水浴シーズンまでイルミネーションを設置して来場者の反応を確かめる予定だ。
定型業務はデジタルに任せ
人間は本質的業務を担う
では、The Meetという取り組みを通して何を感じただろう?
普段の行政業務とは異なり、民間企業と協力して企画から実装まで自らの手で創り上げるというのは非常に得難い体験でした。これって一見、これまでの公務員の仕事像を壊しているように見えますが、でも今後はこういう仕事が増えてくると思うんです
というのも私はいまDXに関する業務に就いてますけど、DXって「定型的な仕事はデジタルに任せて、人間は本質的な業務を担う」ことだと思うんです。今回の仕事はまさに本質的な業務であり、これが自治体DXの行き着く先だと感じています
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未来の仕事の在り方を見つめる若手がいる一方、The Meetの窓口となった鳴川さんは別の感慨にふけっていた。
広島県さんにとって今回のThe Meetは実験的な企画だと思うんですけど、フタを開けたらかなりの市町村が手を挙げていたことに私は驚きました。それを見て「他の市町村にもチャレンジングな人材はいるんだな」と感じましたし、「坂町も乗り遅れなくてよかったな」と思いました(笑)
こういう企画って大きな自治体では専属の人材がいますが、坂町のような通常規模の自治体では「じゃあ誰がやるんだ?」というところから庁内横断的に進めていくんです。そんな中でも今回は3案を採用し、「小さな自治体でもやろうと思えばできる」ことが表現できたのはよかったと思います
「隣はどんなチャレンジをする人ぞ?」であり「小さくてもできる」。The Meetはイノベーション推進の枠を超え、予想もつかない刺激と気付きを広島の各自治体に与えているようだ。
●EDITOR’S VOICE 取材を終えて
角戸さんにベイサイドビーチ坂の思い出を聞いた時、平成30年7月豪雨の話が出て、すぐにアッ!と思いました。確かにベイサイドビーチ坂の駐車場は、土砂で通行不能になった国道31号の迂回路として使われた場所。あの時、私も駐車場を通って被災地に行ったのに、6年が経ってすっかり忘れていたのです。
その「復興のシンボル」にイルミネーションが灯る、闇が光で飾られる……そこに特別な意味はないかもしれませんが、見方によってはひとつの弔意と希望のようにも感じられるのでした。(文・清水浩司)
・共同事業者:ZIGENライティングソリューション株式会社
・活用ソリューション:LEDの制御システムを用いたインタラクティブ性のあるイルミネーション
・概要:イルミネーションの導入でベイサイドビーチ坂の夜間の魅力向上
・必要経費:100万円(※イルミネーション機材費、設置人件費など)