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あたらしい、あなたらしいスキンケア【RING HIROSHIMA】
お肌の調子が悪いと朝からブルー――というのはよく聞く話。そんな悩みを改善しようと立ち上がったのが今回エントリーの「肌の常在菌検査にもとづく自分軸でのスキンケア選択」プロジェクト。
菌を使った肌カルテ作成という試み自体興味シンシンだが、話を聞く中で見えてきたのはRING HIROSHIMAというホットでオーガニックなコミュニティの実相だった。
CHALLENGER「株式会社ユーブローム」柴田未央さん
今回のチャレンジャー・柴田未央(しばた・みお)さんは東京理科大学薬学部に通う現役大学生。といっても正確に言うと、2度目の大学生活である。
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私はずっと専業主婦をしてたんですけど、薬剤師になろうともう一度大学に入り直したんです。それと同時期に夫が経産省とJETROが一緒にやってる起業家育成プログラムに参加して。それを見てたら「私もやりたい! 私の方が上手にできそう」って気持ちになって(笑)。それで大学の微生物学の授業で聞いた話を元に事業を起こすことにしたんです
柴田さんが目を付けたのは「人間の肌には菌がいる」という事実。腸内細菌と同じように肌の表面にも菌がいて、その分布によって肌のコンディションが決まるという。たとえばニキビの原因として知られているアクネ菌、表皮ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌……。
だとしたらこうした菌の状態を検査することで、その人に合ったスキンケアができるんじゃないか? 自分の菌に適したスキンケアアイテムを見つけられたら、肌のパフォーマンスをもっと上げられるんじゃないか?……
そうした想いに加え、若き日の苦い思い出が柴田さんの背中を押した。
私には年子の弟がいるんですけど、彼はひどいアトピー性皮膚炎で。よく無意識にかきむしって、血が滲んでたりしたんです。当時思春期だったので見た目のことも気になったのか、結局高校を中退してしまって……。私はそんな弟にあまり優しくしてあげられなくて、そのことがずっと心に引っ掛かっていたんです。それで少しでもそういう人を減らせたらいいな、って
柴田さんは肌の菌の状態をチェックできるキットを開発。それを元に各自の「肌フローラカルテ™ 」を作成し、肌に最適なスキンケア製品を提案するというサービスを開始した。2021年4月、「株式会社ユーブローム」創業。
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ただ、ここで気になるのは、東京在住の柴田さんがどうしてRING HIROSHIMAに応募したのかってことである。
経産省のプログラムで仲良くしてる人に樗木勇人(ちしゃき・はやと)さんがいて。私は彼のことをチャッキーと呼んでるんですけど(笑)、顔の広いチャッキーに「どこかの自治体と組んで実証実験できないかな?」って聞いたら、「僕、RING HIROSHIMAでセコンドやってて。ちょうどいいから応募して!」って言われて。確かに広島ってナイトワーカーや官公庁で働く人などいろんな人がいるから、実証実験にちょうどいいと思ったんです
なんと! 前回も今回もセコンドに参加している樗木さんが橋渡ししてくれたとは。
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そして柴田さんは広島のRINGに上がることとなる。
SECOND 国立研究機関の産学連携担当 郡司裕一さん
柴田さんのセコンドに付いたのは、こちらも前回から続投の郡司裕一(ぐんじ・ゆういち)さん。郡司さんは物質・材料分野のライセンス契約の専門家だが、なぜか前回は縁もゆかりもない保護犬ゼロ活動とマッチング。慣れない業界の中でインフルエンサー芸人の育成やメッセージアニメの企画など、アグレッシブに奮闘していた。
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その姿は結構大変そうにも見えたものだが(笑)……どうして再びセコンドに応募したのだろう?
前回RING HIROSHIMAに参加していろんなセコンドの方に会ったら、みなさん奥が深くて。各分野の専門家ばかりなんです。それで今年も参加してもっとネットワークを広げたい、みなさんとの関係を深掘りしたいと思ったんです。実は私には野望があって、RINGに参加してるセコンドの知識を構造化して幅広く活用できるものにしたいんです。「こういう案件はこの人が得意」みたいなものを作ることができればミスマッチもなくなるし、もっと面白くなるじゃないですか
なんとなんと! セコンドの人材バンク化とでも呼ぶべきか。樗木さんといい郡司さんといい、チャレンジャー以上にチャレンジングな人が多いのがRING HIROSHIMAの特徴。そんな郡司さん、今回はまた畑違いの美容業界に派遣されたが、そのあたりはどうなのだろう?
私は誰のセコンドに付くか事務局に一任してますけど、その方がセレンディピティ的に面白いと思ってて。だって前回が動物愛護NPOで今回がスキンケア。どっちも絶対自分では選ばない世界ですから(笑)
セレンディピティ=偶然の産物。はたしてこのマッチングは吉と出るか、凶と出るか?
目指してたのはそこなんだ!
壁打ちによる想いの言語化
郡司さんはアドバイスもくれるんですけど、それより一緒にやってくれてるような感じで。いろんなところから情報も持って来てくれるし。しかも楽しいです!
結論から先に言うと、この組み合わせはアリである。年齢も性別も背景もまったく異なる2人だからこそ、新たなケミストリーが起こっている。基本は週1でZOOM会議。
そこで郡司さんに「どういう世界を作りたいの?」って質問されて。これまでは「肌の問題を解決したい」「その人が幸せな時間をすごせる商品を作りたい」と思ってたけど、話していくうちに「さらにその人が幸せについて見つめ直せる商品を作りたい」と思うようになって。そこから「エシカル消費」というキーワードが出てきて、エシカルの本質について考えるようになりました。「私が目指してたのはそこなんだ!」って気付かされた感じです
柴田さんがもともと抱えていた想いが対話によって言語化されたんでしょうね。私は私ですごく勉強になってて。やっぱりアウトプットする先があるからインプットもやる気が出るんです。たくさん届くメールから柴田さんに関係ありそうなセミナーを見つけたら、「これはどう?」って紹介したり。エキサイティングな取り組みだと思いますよ
2人が今回のRINGで目指してるのは、肌フローラカルテ™を使ったサービスがどういう人に届くのか調べること。事業化のためのマーケティングがミッションである。
ユーブロームの事業内容を聞いたとき最初に思ったのは、カスタマー・セグメンテーションが難しいだろうなってこと。これまでにない新しいサービスですからね。だけどそれを明確にすることで、今後ファイナンスをするとき「市場規模はこれくらいで、熱烈なファン層がこれくらいいる」とプレゼンできると思うんです
このサービスがエシカル消費に感度が高い人に刺さることはわかったけど、「じゃあそういう人って誰なのか?」というのが今の課題。今はモニターの方に話を聞いたりしながら、ランディングページの開発を進めてます。あと広島でこの取り組みに賛同してくれそうなインフルエンサーも探してます
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ユーブロームは今年度末に資金調達を予定。そのときに提示するデータを揃えて資金調達を完了するというのが、今回のプロジェクトのゴールとなる。
RING HIROSHIMAは
社会をよくする変人集団?
ということでプロジェクトの方は着々進んでるこのコンビ。面白いのは、どちらもRING HIROSHIMAという枠組みを存分に満喫してるところだ。
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RING HIROSHIMAって参加者の交流が盛んに行われてるんです。チャレンジャー同士もそうだし、他のセコンドさんとも連絡を取り合って、お互い情報をフィードバックし合って。私はずっとお会いしたかった起業家さんがいたんですけど、RING参加者がその方の知り合いで、アポを取ってくれてお会いできることになったんです。「広島で実証実験をする」という共通項があるから、お互い相談しやすい環境があるんですよ
みんな利害関係があまりないんで、遠慮なくモノを言い合えるのがいいですね。セコンドに関しては全員本業を持ってて、このネットワークに依存しない大人のよさがあるんです。個人個人のモチベーションで参加しながら、その一方で「ちゃんと成果は残そうよ」って空気もある。こういう関係性ってあまりないですよ。でもそれが最終的にめちゃめちゃ自分の利益になると思うんです
ある種のサードプレイスというか、自由闊達な交流の場。この風通しのいい空気感が新たなイノベーションを生むのだろう。郡司さんが言ってたように、チャレンジャー、セコンド問わず、RINGに集まる人たちの多様性が広島のプライスレスな財産になるのかもしれない。
今後もあんまり排他的にならないよう、うまくやりたいですね。常連が固まってるバーみたいにならないように(笑)。「ここは俺の席だ!」みたいなことを言い出したらオシマイですから
私はヘンな人が世の中を良くしていくと本気で信じてるんです。そういう人たちがもっと増えてほしいし、RINGの活動を見て「自分もヘンだけど大丈夫なんだ」って気付いて、もっとヘンな人が出てきてほしい。私も自分がヘンだって最近自覚しましたから(笑)。RINGはヘンな人ばかりですけど楽しいですよ!
え、RINGって変人集団なの!? 個人的にそれは否定しないが、いつでも革新と奇天烈は紙一重。結果がどうなるかはさて置いても、この変人だらけのコミュニティ、何やらとても楽しそうなのが素敵じゃないですか!
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●EDITORS VOICE 取材を終えて
本文を読んでいただければわかるように、柴田さんの肌フローラカルテ™の取り組みも興味深いけど、それ以上に惹かれたのが2人のRING HIROSHIMAへのハマリっぷり。ものすごくRINGをENJOYしてくれてるなぁ!って、こっちまで嬉しくなるほど。でもいいモノを生み出すには、その土台にいい環境があること、大事ですよね。
もうひとつ微笑ましかったのが2人の仲の良さ。だってRING後の展開について尋ねたら――
柴田「郡司さん、よろしくお願いします!」
郡司「あ、喜んで!(照)」
カップル成立かーい! 仲良きことは美しき哉。これからも応援してますよ。
(Text by 清水浩司)