
デッキチェックについて
前回の記事の続きです。
経験がないと何をどうしたらいいのかわからない、デッキチェックについて、解説します。
はじめに
デッキチェックの目的について
デッキチェックは、プレイヤーたちが適切なデッキ/カードを持ち込んでいるか、ゲームに影響を及ぼす不適切な状況が発生していないかを確認するために行われます。
デッキチェックは毎ラウンド、何らかの方法で選ばれた対戦卓を対象に双方のプレイヤーに対して行います。通常は一つの対戦卓のみです。
ルール適応度:professionalにおいては必須、PQやRtNなどのルール適応度:competitiveにおいては推奨です。(ArmoryやSkirmishなどのCasualにおいては、TOの判断次第です。)
また、SEの第一ラウンド開始前に、すべてのSE進出者のデッキはデッキチェックを受けていることが推奨されます。通常、SE開始前に全員のデッキを集めて、既にデッキチェックを行っているかどうかにかかわらず、再度デッキチェックを行います。
事前準備
デッキチェックを行う場所は、プレイヤーたちの対戦テーブルから離れていることが望ましいです。完全に個室などになっている必要はありませんが、十分な距離がありプレイヤーからは簡単に見られない場所であるようにしましょう。他のプレイヤーに、デッキの中身を公開せずに済むように、そして、デッキチェックにジャッジでない人間が関わったという疑念を発生させないようにするためです。
カードとリストを広げられる十分な広さの机と、ジャッジの足腰を守る椅子があると幸せになれます。また、液体や火気から十分な距離があることを確認しておきましょう。
対象卓の決定
対戦組み合わせが発表されたら、どのテーブルをデッキチェックするか考えます。決めたら、このタイミングでデッキリストを用意しておきます。
回収したデッキリストに不備があるなどの理由が特になければ、SEに進みそうなプレイヤー(つまり上位卓)から選ぶのが良いです。第一ラウンドなど、特に目星をつけられなければ、アグロ同士など早く終わりそうなマッチングのテーブルからチョイスすると良いでしょう。
ただし、大声で「1番卓にしよー!」などと宣言してはいけません。
一応は、どのテーブルがデッキチェック対象になっているかは直前まで秘匿です。デッキチェックを受けていないプレイヤーが全勝している最終ラウンドなど、どうしても明らかになタイミングはありますが、それでもどこが対象になっているかわからないのが建前です。
仮に不正を試みているプレイヤーが紛れている場合
「あ、デッキチェックされるんならいい子ちゃんにしてよ」
となるのは想像に難くないですね。もちろん、そんなプレイヤーは居ない方がよいのですが……
デッキ回収まで
デッキチェックを行うテーブルを決めたら、そのテーブルの近辺を巡回します。可能なら、サイドボーディングの様子やシャッフルの様子も観察しておくとよいです。もし、鞄からサイドボードのカードを出している様子なら、デッキ回収の際にカバンの中も確認する必要があるかもしれません。無限のメイビーボードをカバンに忍ばせているかもしれませんからね。それが、すぐ取り出せるようにしてあったりしたら……不正を疑わざるを得ません。。
ジャッジコールを受けたら
「後ほど伺います。延長時間を出します。」
と断っても良いです。デッキチェックの方が優先です。
もし、ジャッジが二人居るなら、片方はデッキ回収に専念してもう片方がコールを捌くようにします。この専念する人をバックアップとかカバーとか呼んだりします。ひとりの時は、延長時間を与えることを明確にしてプレイヤーを安心させておき、デッキを回収してからコールに対応しましょう。なので、時計を見るのをお忘れなく。
デッキ回収のタイミング
デッキのシャッフルを終えて、双方が対戦相手にカットを提示したタイミングです。対戦相手がデッキをカット/シャッフルするより前に回収する必要があります。サッとテーブルに現れて
「デッキチェックです。デッキの並び順を変えないように、そのままデッキケースに収めてください。インベントリーのカードとヒーロー、装備品も全てデッキケースに収めて提出してください。お名前を伺ってもいいですか?」
と宣言します。ここで名前を聞いておかないと、デッキが取り違えられてワタワタします。特に、ミラーマッチなどだと悲惨です。もちろん、時計も確認しましょう。
この時、デッキケースから不自然に取り出したカードの束などがあれば念のため中身を確認しておきましょう。デッキケースには対戦に使わないカードは入れられないのでカバンにしまうようにアナウンスしておきます。また、サイドボーディングの際などに不自然にカードを取り出す様子などがあれば、カバンの中も確認しておきます。
デッキチェック
デッキチェックのために確保しておいたスペースに戻り、デッキチェックを行います。まず、デッキリストを手元に用意し、デッキケースからデッキを取り出します。デッキチェックは当然、片方ずつ行います。
アリーナカード
装備品やヒーロー、武器です。
アーティストプルーフや非公式カードなどが使われていないかを見ておきます。これらのカードはトーナメントでは使用できません。
拡張アートやシャドウボックスなどは使用できます。
こちらの記事
https://fabtcg.com/en/articles/back-alley-oracle-13-misprints-alters-proxies-and-tokens/
も参考にしてください。
コンディション
さて、まずはデッキのコンディションをチェックします。
スリーブの4面のエッジと、角、背面を確認。エッジは、念のため手触りも確認しておきます。
この時、デッキをシャッフルしないように注意しましょう。
この時、Marked Cards(PPG 3.7.)を確認しています。
特定のカードが確認できるかどうかがチェックポイントです。
foilの反り、エッジの折れ、エッジの傷、スリーブの汚れ、カードの折れ、などです。
疑わしいカードがあれば、この後で調べます。
次に、枚数と積み込みのチェックをする。
ここで枚数が少なければPresenting Cards Error(PPG 2.7.)です。
明らかに恣意的な並びや不自然なもの、上下の入れ替わりなどを見つけたら、程度によってペナルティを検討します。
前述、マークドを疑うカードがあれば、ここで抜き出して確認します。
マークド疑い
Marked Cardsは、プレイヤーがそれを認識しているかどうかに関わりません。判別可能なカードが存在すれば適応されます。逆に、プレイヤーがそれを認識しながらその状態でゲームをしようとしているならば、それはCheating(TRP 4.2.)とみなされるかもしれません。
→1枚しかない
デッキに戻して判別可能、もしくは取り出せるかどうかを考えます。
また、デッキに戻して、机に置いた状態で明らかに1枚の位置がわかるかどうかも検討します。
※デッキの中に1枚だけ反っているなどでデッキのどこにあるかを容易に判別できるカードがある場合、明確に利益とみなすことがあります。ピッチスタッキングが重要なヒーロー(例:Kano, ガーディアンなど)では、そのカードによりピッチがどこまで進んだかを見る為の栞として使うことができてしまう。3枚のfoilが反っていることよりも、3枚のfoilのうち1枚だけ反っている、などの場合に、このイカサマを疑うことがあります。"出来ちまう"と判断したらアップグレードしてマッチロスを検討します。(私自身が、海外の大きなイベントで、このような裁定が出された場に立ち会った経験があります。)
勿論、プレイヤーが"やってる"と判断した場合はCheating。罰則はDQしかないことに注意してください。
→複数枚ある
それらのカードにパターンがあるかを検討する。
・パターンなし
スリーブの交換やカードの反りの解消など、処置が必要かどうかを検討します。カードの折れやダメージなど、カードの交換が必要ならカードを交換させることも可能です。プロキシの発行の要件(TRP 4.3.)も確認しておきましょう。
処置不要ならアナウンスなし。ペナルティなし。
必要ならプレイヤーにアナウンス。ペナルティあり。
・パターンあり
ペナルティを発行して修正させます。それによって明確に利益を得ていると判断できるなら、アップグレードしてマッチロスも検討します。
カードプール照合
所謂想像するデッキチェックです。
カードを並べても並べなくても良いので、とにかくデッキリストとデッキのすり合わせをしましょう。
机に並べるのであれば、まず色ごとに分け、その後整理すると楽です。
並べないのであれば、デッキリストに☑を書いたり、頭の中で整理したり、とにかくいかなる方法でもよいので、デッキリストと手元にあるデッキの束に食い違いがないことを確かめましょう。
何か問題があった時に
・デッキリストに修正が必要
→Decklist Error(PPG 3.4.)
・カードプールに修正が必要
→Card-Pool Contents Error(PPG 3.5.)
どちらにせよ、基本はIP2が発行されます。デッキチェックは、コンディションの確認よりもカードプールの確認の方に時間を要します。
ここを如何にスムーズにできるかが、円滑なイベント運営のキモです。
デッキ返却
デッキチェックが終われば、預かったすべてのカードをデッキケースに収めて、プレイヤーに返却しましょう。
何か伝えなければならないプレイヤーは、席から離して話をします。特に、IP2よりも重いペナルティが出る場合は、対戦相手と離して会話をする方が望ましいです。
「〇〇さん、ありがとうございました。デッキをお返しします。●●さんは、お伝えしたいことがございます。こちらへ移動をお願いします。」
「このカードはスリーブ変えてください」くらいならその場で伝えて構いません。
デッキ返却後は、サイドボード前かつ先手後手決定後から再開されることをプレイヤーにアナウンスします。
また、デッキチェックにかかった時間を伝えて、それに3分を加えた延長時間を出します。
(ただし、デッキ回収までにかかった時間が3分未満だった場合は、延長時間込みで55分になるように調整します。例えば残り53分時点でデッキを回収。10分かかって43分でデッキ返却。ここで13分の延長を出すと対戦時間が56分となるので、上限を超えてしまいます。)
「デッキチェックは問題がありませんでした。デッキチェックに■分かかりましたので、3分加えて◆分の延長出します。先手後手を決めた後、サイドボーディングをするところから行っていただき、よくデッキをシャッフルしてゲームを開始してください。何か困ったことがあればジャッジを呼んでください。それでは、対戦を開始してください。」
よくシャッフルさせることは、必ず伝えます。
また、このタイミングのデッキチェックは、預かったデッキの並び順やサイドボードが担保されていません。プレイヤーには、必ずサイドボーディングが適切かどうか自分の目で今一度確認するように促します。
(そのために、3分の追加時間が与えられています。)
念のため、ゲームを開始するまではテーブルの様子を見ておくようにしましょう。
デッキチェック中にジャッジコールを受けた場合は、そちらの対応も忘れずに!
さいごに
これで、デッキチェックはできるはずです。もし不安があれば、自分のデッキや友人のデッキを借りて、本番までに数回練習をしておきましょう。
目標はデッキ1つで10分未満。現実的には5分前後で終わらせたいところです。
とにもかくにも、まずはやってみることです。
はじめは手間取ってしまったり、うまくいかないこともあるでしょう。あまりにもあまりにも…であれば、省略してしまうことも一つの手段です。
推奨はされていますが、必須ではありません。
それによって、イベント自体が著しく遅延してしまうようであれば、運営の妨げとなってしまいます。
プレイヤーのゲーム体験がより良いものになるように、そして、イベントがより素晴らしいものになるように活用していきましょう。
最後に、特に中身はありませんが、また課金窓をぶら下げておきます。
広島FABの活動資金に活用させていただきますので、ご支援いただけますと幸いです。
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