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【連載: AI×少人化 #3】 “北極星”を定めよ──全社最適な業務プロセスが企業の新たな城となる

「経営方針があるのに、なぜ現場は変わらないのか?」

「ウチは経営理念もビジョンも明確に打ち出している。でも実際、現場はちっとも変わってくれない」。多くの経営者や管理職が抱える共通の悩みではないでしょうか。たしかに、美辞麗句を並べた壮大な“お題目”が社内に掲げられてはいるものの、その言葉と実際の業務プロセスがリンクしていない企業は、いまだに少なくありません。

結局、「昔からやっているから」という理由だけで続けられているグレーゾーン業務が温存され、“ムダを削る”話などどこか他人事。このままでは、時代遅れの経営モデルが温存され続け、競争力を失いかねないのです。

一方、海外や一部の国内先進企業では、“北極星”となる中長期目標をしっかり示し、そこに紐づけて全社レベルの業務変革を進める動きが加速しています。なぜ彼らは変われるのか? 答えは“北極星”と業務プロセスのつながりを、経営陣が具体的な仕組みとしてデザインしているからなのです。


“経営アルゴリズム”を構築するうえで欠かせない2つの視点

1. 経営理念やビジョンは「行動の設計図」にまで落とし込む

よくあるケースとして、経営層は「5年後に利益を2倍にする」「社内の脱炭素を進める」といった方針を掲げても、それが誰の業務にどう関わるのかが曖昧なままで終わってしまいます。これでは、現場レベルでの行動やプロセスが変わらず、“経営方針”が単なるスローガンになってしまう。

そこでカギになるのが、「経営アルゴリズム」を社内で明確に示すことです。言い換えれば、**「どういう数値がどの基準値を超えれば、誰がどう動くのか」**をルール化するということ。たとえば、“売上目標が月末時点で◯%足りなければ、すぐ部門長がプランBを実行”といった具体的な指示体系を事前に設定しておくわけです。

2-2. 「業務プロセス=ソフトウェア化」こそ定型業務の自動運転を実現する

もう一つの視点は、「業務プロセスを人力で回す」のではなく、「ソフトウェアに落とし込み、自働運転させる」こと。具体的には、以下のようなフローになります。

  1. 現在の定型業務を棚卸し どの部門で、どんな定型タスク(報告書作成・メール転記・Excel集計など)があるかを洗い出す。

  2. 自働化可能な範囲を特定し、ソフトウェア化 AIエージェントやクラウドERPなどに“人間の知恵”を付与し、異常時だけ人が対応すればよい状態を目指す。

  3. “北極星”に照らし合わせてKPIを設定 「定型業務ゼロを目指す」「入力ミスを0.1%以下にする」といった具体的数値目標をチームごとに共有する。

  4. リアルタイムデータを基に経営アルゴリズムを稼働 どの部門がどの程度業務効率を上げているか、どのKPIが達成されていないかをAIとダッシュボードで即座に可視化。

“北極星”という将来的な目標を軸に、業務プロセスをソフトウェアに落とし込み、定型部分は自働化で4ゼロ(手間ゼロ・時間ゼロ・コストゼロ・ミスゼロ)化する。これが今やグローバルでの「勝ちパターン」となっています。


  1. 経営者視点──“城・石垣・堀”は業務プロセスが担う時代

かつては「人は城、人は石垣、人は堀」と言われ、社員一人ひとりの能力や頑張りが企業の競争力を支えてきました。ところが、**デジタルを前提とする現代では、企業の根幹は“全社最適化された業務プロセス”**へとシフトしています。

  • 城(経営の基盤) 大量の紙作業や属人的な知識に頼らず、ソフトウェアが定型業務を“自働化”して回してくれる仕組み。

  • 石垣(守りの強さ) アラートや異常検知機能を搭載したAIエージェントが、自動でリスクを察知して通知。二重チェックが不要になり、人為ミスや漏れを最小化。

  • 堀(参入障壁) 一度整えた“業務プロセス+デジタル基盤”は簡単には真似できないため、優れた社内仕組み自体が他社との差別化要因になる。

ここで経営者が理解すべきは、**「人を増やす」「根性論で頑張る」といった旧来型の強化策は、もはや通用しない」**という事実です。なぜなら、AIエージェントを導入した海外勢は、あっという間に定型業務の大部分を自働化し、人材をより付加価値の高い領域に回すことで成長を加速させているから。この差を放置していれば、取り返しのつかない遅れを取るでしょう。


  1. 逆説的提案──「北極星なんていらない」という会社は要注意

一部の経営者や管理職は「とにかく目の前の売上を追えばいい」「数字さえ伸びれば、あとは現場が何とかする」と考えがちです。しかし、これは大きな落とし穴です。

  1. 「指示待ち人材」だけが残る 何を最終ゴールにすればいいかが不明瞭だと、現場は“やめていい仕事”や“変えるべきプロセス”を判断できず、ただ上からの指示を待つ形になります。

  2. 場当たり的なデジタル投資で終わる 北極星となる長期ビジョンに沿わないシステム導入は、結局ツギハギだらけの部分最適化を引き起こし、ムダなコストを生む。

  3. AI導入の成果が測れない 何のためにAIを導入し、どういうKPIを目指すのかが曖昧だと、導入後のレビューもできず、組織学習が進まない。

つまり、北極星を定めずに走る経営こそが最もリスキーなのです。「経営なんてカンや度胸で十分」という時代は既に終わりを告げていると認識しましょう。


  1. 具体的行動提案──“北極星”を具体化し、全社システムと結びつける

  2. 5年後のあるべき姿を明確化(ビジョン策定)

    1. 売上や利益率、雇用の形態、社会的評価など、定量・定性の双方で目指す姿を紙に落とす。

  3. KPIと“経営アルゴリズム”を設計

    1. 「目標利益率を達成できない場合は、この追加施策を実行」といった判断基準やフローをソフトウェアに落とし込む。

  4. 横串組織(業務変革本部など)の明確化

    1. 経営者直属のチームを設置し、全社システム(ERPやAIプラットフォーム「ドットAI」など)の構想から導入・運用まで主導する。

  5. 部門長が“やめてもいい”を宣言する

    1. 会議や根回し資料、報告ファイルなど、グレーゾーン業務を一つひとつリストアップし、削除・縮小すべきものを明言する。

  6. 定型業務の自働化を強制的に進める

    1. 全社システムへの入力・連携を徹底し、Excelバケツリレーや手作業の数字転記を禁止。アラート検知や承認フローはAIエージェントで自動化。


  1. 締め──北極星に紐づく“自働化”こそが日本企業に残されたチャンス

経営者としては、「売上を伸ばしたい」「利益を上げたい」と願うのは当然です。しかし、それを社員に根性論で追わせるだけでは、今の時代に勝ち続けるのは難しい。デジタルを前提にしたオペレーショナル・エクセレンスを実現しなければ、海外の先進企業に対抗できません。

「北極星」という“企業が進むべき方向性”と“業務プロセスの自働化”を結びつけることで、初めて組織が一枚岩となり、ムダを捨てて成果を出す基盤ができあがります。定型業務の自働化が進んだ先には、社員の創造的な仕事が拡張し、企業全体の付加価値が上がるという好循環が待っているのです。

日本企業にはまだ多くの強みがあります。それを活かしたままデジタル化を進め、“北極星”という一本筋の通った未来像と、そこに至る具体的仕組みを連動させることで、これまで以上の成長軌道に乗れるはずです。AIエージェントや「Lark」などのコラボツールを戦略的に活用し、私たちが提唱する「AI/DX経営メソッド」で、ぜひ次のステージへ踏み出しましょう。


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