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「ITの終焉こそが、スタートアップの新しい幕開け」 ——さくらインターネット 田中社長

はじめに:ITの終焉が告げる新たな始まり

「ITの終焉(しゅうえん)こそが、スタートアップの新しい幕開け」。
このフレーズは、さくらインターネットの田中邦裕社長が2025年2月7日に神戸市で開かれた関西財界セミナーの取材で語った、極めて象徴的な言葉です。IT業界の隆盛を支えてきた“インターネット”という存在は、いまや当たり前の社会インフラとなり、新しい技術革新のステージへ移行している——という見立てです。

一見すると「ITが終わる」とは大げさにも聞こえますが、その意味は「昔ながらのウェブサービスや広告ビジネスの成長余地が小さくなった一方で、新しいテクノロジーが次の主役として台頭する」ということを指しています。そして、まさにAI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)こそが、新時代の中心軸となりつつあります。

私たちは現在、AIがAIを進化させる「AI2AI」という概念を掲げ、.Aiエージェントと呼ばれる独自のAIアシスタントを活用しながら、日本企業の生産性を10倍に引き上げる取り組みを加速しています。

最近の動向を振り返ると、ITという枠組みが“終わり”を迎えるのではなく、「AIやDXを前提とした、まったく新しいスタートアップ環境が全国各地から勃興する」という流れが鮮明に見えてきました。

本記事では、以下のポイントについて解説していきます。

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では、順に見ていきましょう。


1. ITの終焉とは何を意味するのか

さくらインターネットの田中社長が語った「ITの世界は終わり始めた」という衝撃的なフレーズ。その背景には、以下のような大きな変化があります。

  • 広告ビジネスの勢いの鈍化
    ネット創世記の象徴である広告ベンチャーは、インターネットの普及とともに爆発的に伸びました。しかし、近年はプライバシー規制や広告ブロッカーの普及によって、広告収入モデルが飽和に近づいていると言われます。

  • インフラとしてのITの成熟
    かつてはIT企業自身が「最先端の革命児」として脚光を浴びてきましたが、今ではITが業務にも生活にも当たり前に組み込まれ、新規参入のハードルが上がっています。クラウドサービスやSNSが飽和状態に近づき、過当競争による“勝者総取り”の傾向が強まった結果、新興IT企業が伸び悩むシーンが増えました。

  • 東京一極集中モデルの限界
    日本のスタートアップは東京に集まるケースが多く、地方からのアプローチはやや劣勢でした。ところが、近年のリモートワーク普及を背景に、物理的な所在地の優位性が薄れたことで、研究開発型企業が地方拠点でも十分に成長を狙える環境が整いつつあります。

こうした流れから導かれる「ITの終焉」は、言い換えれば「ITが新たな“インフラ”になった」状態とも言えます。新たな局面では、そのインフラの上で別次元の技術革新が次々に誕生し、社会全体の変化を促していくことになるでしょう。

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2. 地方発スタートアップが注目される背景

さくらインターネット 田中社長が強調する「スタートアップの新しい幕開け」は、地方大学を中心とした研究開発型のいわゆる“ディープテック”の存在感が増している事実と深く関わっています。実際、2020年代に入ってから地方発のスタートアップが大手VC(ベンチャーキャピタル)や自治体の支援を受け、世界市場に挑戦する動きも活性化しています。

  • ディープテックの台頭
    ものづくりやAIアルゴリズム、バイオテクノロジーなどのディープテックは、東京に集まるサービス型IT企業と異なる産学連携が強み。大学や研究機関の存在が不可欠であり、それが地方に散在することで、イノベーションが全国に波及していく構造ができつつあります。

  • 地方創生への貢献
    リモートワークが浸透した今、「都市部に集まる必然性」が急速に薄れています。自治体が主導するスタートアップ支援の枠組みも充実し、地方独自の課題を解決するプロダクト開発やサービス創出が注目を集めています。

  • 富の流出を食い止める
    田中社長が指摘するように、巨大プラットフォーマーによる“富の吸い上げ”が地域経済を疲弊させる要因になっている面は否定できません。地方で高い技術力を持つスタートアップが誕生し、地域経済圏の中で研究開発を進めることで、富を地元に循環させる効果が見込まれます。

これまで全国規模のスタートアップが東京に集結していた構造から、地域がそれぞれの強みを活かした「分散型のスタートアップエコシステム」を築く動きが大きく加速するでしょう。


3. AI2AIがもたらす新たな生産性革命

私たちが掲げる「AI2AI」とは、AIがAIを進化させる相乗効果を指します。具体的には、企業内で導入している複数のAIエージェントやAIツールがお互いに学習結果やデータをシェアしながら、高速でフィードバックし合い、指数関数的に性能を高める仕組みです。

なぜAI2AIが重要なのか

  • 学習データの共有
    一つの部門のAIが得たノウハウを、別の部門のAIが活用し、さらに改良していくことで、多部門・多角的な視点から一気にアップデートが進みます。

  • タスクの自動連携
    たとえば、営業部門のAIが顧客データを分析し、その結果を即座に経理部門のAIに共有して、自動的に請求書を発行するなど、部門間連携を人力で調整する手間が大幅に削減されます。

  • 指数関数的な進化
    従来、人間が新しい知見を学んで部門間でノウハウを共有するには多くの時間がかかりました。しかし、AI同士ならタイムラグがほぼゼロで情報交換できるため、従来の数倍から数十倍のスピードで業務効率を高められます。

このようにAI同士の連携を主軸に置くAI2AIの思想は、「ITの終焉」後の世界でこそ真価を発揮すると考えられます。ITが成熟インフラとなった今こそ、AIを中心に事業や産業そのものを根底から再設計するチャンスが到来しているのです。


4. .AiエージェントとLarkを活用したDX戦略

.Aiエージェントとは

私たちが提供している「.Aiエージェント」は、単なるチャットボットの延長ではなく、タスク管理や議事録作成、定例業務の自動化などを一括サポートするAIエージェントです。要点を自動的にまとめたり、スケジュール調整を提案したり、さらには過去の議事録やプロジェクト進捗を参照して次のアクションを自ら生成することが可能です。

  • 議事録の自動作成
    オンライン会議の音声をリアルタイムでテキスト化し、要約やトゥドゥリストを自動生成。担当者への通知までシームレスに行います。

  • 定例タスクの自動化
    経費精算や書類提出など、ルーチン業務をAIエージェントがチェックし、抜け漏れを防ぎます。

  • 学習の継続
    社内のやりとりやデータを蓄積し、学習モデルを進化させることで、使い込むほどに業務精度とスピードが高まります。

Larkとの統合メリット

世界的ユニコーン企業の成長DNAが詰まっているコラボレーションツール「Lark」は、チャットやファイル共有、オンライン会議、カレンダー管理などをワンストップで行えるプラットフォームです。ここに.Aiエージェントを組み合わせることで、以下のような相乗効果が得られます。

  • コラボレーションの高速化
    Lark上で行われるすべてのコミュニケーションやドキュメントを、.Aiエージェントが横断的に解析・要約。チーム内で散らばる情報を一瞬で整理できます。

  • 自動化されたアクション
    会議中の発言から課題を抽出し、Larkのタスク管理に自動登録。担当者へ通知するだけでなく、進捗状況を追跡してレポートを作成することも可能です。

  • 場所を問わない働き方
    リモートワークであろうと出張先であろうと、Larkと.Aiエージェントがリアルタイムにつながり、必要な情報を即座に得られます。特定の都市に拠点を置かなくても、組織力を大幅に高められる点は、地方創生にも直結するメリットです。

こうした連携は、単なる業務効率化にとどまらず、組織運営そのものをDXに巻き込む大きな変革をもたらします。いわばITがベースになっているからこそ実現できる新たなスタートアップモデルと言えるでしょう。


5. 生成AIとスタートアップの未来図

ChatGPTをはじめとする生成AIは、文章生成やプログラムの補助だけでなく、ビジネスアイデア創出の場面でも大いに活用されています。キーワードを入力すれば、世界中の事例やテクニカルドキュメントを俯瞰的に参照し、短時間で複数のアイデアや課題解決策を提案してくれます。

これまでのIT起業は、ウェブサービスやスマホアプリ開発が中心でした。しかし生成AIが普及した今後は「AIを駆使して新しい価値を生む」スタートアップが急増するでしょう。とりわけ地方にある研究室や企業が、AIを用いた高度な技術を武器に世界に挑戦するシーンが増えていくと予想されます。

  • 生成AI×ディープテックの融合
    バイオやロボティクス、農業、エネルギーといった実体経済分野にAIを適用し、研究開発のスピードを倍増させる動きは特に注目されています。地方に拠点を置く大学や研究所の知見と、生成AIのデータ解析能力を組み合わせることで、これまで実現できなかった革新的なソリューションが誕生する可能性が高まります。

  • 新たな資金調達モデル
    従来のITスタートアップがエンジェル投資家やVCによって支えられてきたように、生成AIを軸にした企業にも新たな投資マネーが流れ始めています。特にディープテック関連は、投資回収期間がやや長いものの、成功すれば社会的インパクトが大きいため、大型投資が集まりやすくなるといわれます。

  • 地域課題の解決×グローバル展開
    地方ならではの課題(高齢化、インフラ老朽化、農業効率化など)にAIを適用し、ローカルで成功モデルを作ったうえで世界展開に挑むケースも増えてきました。ITがインフラ化したことで、どこにいてもグローバル市場につながる時代になったからこそ、地方発スタートアップの優位性が高まっています。


6. AI導入×DX推進で業務プロセスを劇的に変える方法

「ITが終わった後」の社会では、企業がDXを本気で推進しなければ生き残れないと言っても過言ではありません。DXとは、単なるシステム導入ではなく、組織やビジネスモデル、働き方そのものを根本から変えるアプローチを指します。

ステップ1:業務の棚卸しと優先度設定

まずは、自社内の業務がどのように進められ、どこにボトルネックがあるのかを徹底的に洗い出しましょう。タスク管理が属人化していないか、会議資料の作成に無駄がないか、経理や総務の定例業務は自動化可能か——など、細かいポイントまでリストアップすることで、AI導入の効果がもっとも大きい領域を特定できます。

ステップ2:AIエージェントの導入と連携

優先度の高い領域から、.Aiエージェントを導入し、既存のコラボレーションツール(たとえばLark)と連携させます。最初から大規模に導入するよりも、まずは特定の部門やプロジェクトでテスト運用し、成功事例を積み重ねるほうがスムーズです。導入が進むにつれ、AI同士が学習データを共有し合い、効率化の幅が広がっていきます。

ステップ3:組織文化の変革

AIやDXを活かすためには、経営層から現場までが「変化」を受け入れるマインドセットを持つことが不可欠です。リモートワークが当たり前になった今、コミュニケーション手段や意思決定のプロセスも大きく変わります。トップダウンでルールを押し付けるのではなく、新しいテクノロジーを使いこなす手法を全社で学び、試行錯誤するカルチャーを育てることがポイントとなるでしょう。

ステップ4:効果測定と継続的改善

AI導入が進んだら、必ずKPIを設定し、効果測定を行います。業務効率の向上、リードタイムの短縮、費用削減、従業員満足度の向上など、多角的な観点で成果を評価し、必要に応じてAIモデルやプロセスをチューニングしていきます。AI2AIの概念に基づき、部門横断でナレッジを交換する仕組みを整備すると、全社レベルのDXが一気に加速します。


7. リモートワークと地方創生:なぜ「出社しない」仕組みが重要か

さくらインターネットの田中社長が「上層部から順番に出社しない」と明言しているのは、リモートワークを徹底することで東京一極集中を回避し、地方に住む人材でも十分に活躍できる環境を守るためです。

  • リモートワークがもたらす人材流動性
    都市部に縛られず、多様な人材が自分の得意分野を活かしてプロジェクトに参加できます。スタートアップにとっては、資金だけでなく人材確保が大きな課題ですが、リモート前提の働き方を推奨することで、地域間の人材交流がスムーズになります。

  • 地域拠点の優位性
    地方には低コストで研究開発を進められる環境や、豊富な自然資源を活かした実証実験の場が整っている場合も多いです。ITが成熟したいま、物理的な移動に拘束されないリモートワーク環境と組み合わせれば、地方発スタートアップは大きなチャンスをつかめるでしょう。

  • 上層部が率先して出社しない重要性
    「東京のオフィスにいる方が評価される」「直接顔を合わせる上司に媚びたほうが出世しやすい」という認識が残っていると、いくら制度上はリモートOKでも、社員は本当に活用しづらいものです。経営層が率先してリモートを実践することで、従業員が安心して地方や自宅から働けるカルチャーを築くのが重要となります。


8. 次世代の学びと実践:.Aiカレッジで始めるAI活用

一方で、AIをいざ導入しようと思っても「何から手をつければいいかわからない」という声は少なくありません。そこで私たちは、AIとDXを体系的に学び、即実務へ活かす講座として「.Aiカレッジ」を開設しています。

  • 生成AIとDXを極める:AI実践とDX戦略の2コース
    ChatGPTやLarkといった最新ツールを駆使して、ビジネス上の課題解決に直結するノウハウを学ぶ「生成AI実践講座」と、ユニコーン企業が実践してきた成長戦略を軸にDXを推進する「DX戦略講座」の2本立てです。

  • 初心者でもわかるステップバイステップ
    AI導入の土台となる考え方から、プロンプトエンジニアリングの具体例、さらには組織に合わせた導入ステップまで丁寧に解説します。技術職だけでなく、経営者やマネージャー、バックオフィスの方でも実践的な内容を取り入れられる設計となっています。

  • 副業や独立を目指す人材にも最適
    生成AIやLarkなどのDXツールを使いこなせる人材は、どの企業や業界でも重宝されるようになりました。副業でAIコンサルティングを始めたり、フリーランスとして活動する足がかりにもなるでしょう。

こうした学びの機会を通じて、「AI導入を前提とした新しい働き方・新しいスタートアップ環境」を自分のものにし、積極的に活かす人たちが増えることで、日本の未来は大きく変わるはずです。


9. 新しい幕開けに向けた実践アクション

1)まずは小さなプロジェクトからAI導入を試す

DXやAI導入というと大きな投資や組織改革をイメージしがちですが、最初は小規模なプロジェクトからトライアルを始めるのがおすすめです。定例的に行われる会議の議事録自動化や、営業の見積作成支援など、限られたタスクでもAIを使うメリットを体感すれば、社内の理解が得やすくなります。

2)地域連携を意識する

地方大学や自治体との連携プロジェクトに参加し、地域課題の解決やフィールド実験を行うのも効果的です。AIやDXは遠隔地でも使えますし、地域の強みや産業構造に合わせて実証実験することで、リモートワークの意義を社内外に示す良い機会にもなります。

3)経営者自らリモートワークを実践

さくらインターネットの例が示す通り、トップが「出社しない」という大胆な取り組みを見せることが、組織全体のマインドを変える鍵となります。経営者自身が地方で暮らしながらオンライン会議で意思決定を行うなど、象徴的な行動を起こすことで、会社全体の働き方改革が一気に加速するでしょう。

4)AI2AIを推進する企業連携を模索

自社だけのAI導入に留まらず、他社や他部門のAIとデータやモデルを共有し合う「AI2AI」の取り組みを進めることで、効率化だけでなくイノベーション創出の可能性が広がります。業種や業界の垣根を超えて連携を図ると、思わぬ相乗効果が生まれることがあります。


10. まとめ:ITを超えた“次のステージ”をどう創るか

さくらインターネットの田中社長が発する「ITの終焉」という言葉は、決して「ITが消滅する」という悲観的なものではありません。むしろ「ITが成熟し、当たり前のインフラとして定着したからこそ、新しい可能性が開けた」というポジティブなメッセージです。

そして、その新しい可能性を具体的な成果として掴むためのカギが「AI×DX」「AI2AI」「地方発スタートアップの台頭」「リモートワークの徹底」「組織文化の変革」といった潮流にあります。技術が進化するだけでなく、企業や社会の仕組み自体を変革し、デジタル時代に最適化していくことが不可欠です。

私たちは、AI2AIのビジョンを掲げながら、.AiエージェントとLarkの組み合わせによって、企業の生産性を10倍に引き上げ、日本から世界へ新たな価値を生み出すサポートを続けています。「生成AI×DX」をしっかりと学んで実践し、組織全体をスピーディにアップデートしていけば、IT後の世界でもリードを取れるでしょう。

もし「AI導入やDXに踏み出したいが、どこから手をつければいいのか分からない」という方は、.Aiカレッジのセミナーや私たちのAIエージェントコンサルを活用してみてください。スタートアップや中堅企業だけでなく、大企業の支社や地方拠点においても、新たな幕開けの一歩となるはずです。

いま私たちは、IT時代を土台に、AIがAIを進化させる「AI2AI」時代へ舵を切っています。その流れを地方からも巻き起こし、地方経済とスタートアップ、そして大企業が一体となって新たな価値を創造する。そうした未来図こそが「ITの終焉がもたらす新しいスタートアップの幕開け」の真意と言えるでしょう。


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