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【せ】 センターフォールド(堕ちた天使)Jガイルズバンド
僕はいまマレーシアのイポーというところに住んでいて、滞在歴は5年ちょっとになる。現地のコンドーム生産工場の責任者として45歳のときに赴任してきて、マレーシアで50歳を迎えた。
イポーという街は、マレーシアではクアラルンプール、ペナン、ジョホールバルの次に大きな都市なので、日本で例えると福岡とか札幌とかそういう感じで、実際福岡市と姉妹都市だったりする。
福岡と違うところは、ここには電車がほとんどないことだ。通勤を含む移動は主に車で、毎日約1時間半程度車を運転しているという感じだ。
運転をしている間、主にCDで音楽を聞いている。日本にいるときに買い集めたCDはマレーシアにも持ってきていて、過去に何回かしか聞かないで放っておいたアルバムを改めて聞き直したり、日本に帰ったときにBOOK OFFに行って1枚しか持ってなかったOASISの過去のアルバムを全部大人買いしたり、名盤をもう一度聞き直して感動したりしている。
何でダウンロードしてBluetoothで聞かないのかということに関しては、僕が音楽に触れた歴史に大きく関係があると思う。
もちろん最近の音楽はこの方法で聞いている。マレーシアではなかなか思うようにCDが手に入らないというのもあるし、新しい音楽に触れる機会が日本とは違うので、あまり新しい音源に手を出していないっていうのもある。
僕が初めて洋楽に触れた1980年代の初頭はレコードしかなくて、FMラジオから流れてくる音楽をエアチェックしてカセットテープに録音して、何度も聞き返して、それでどうしてもそのアーティストのアルバムが欲しくなったらお小遣いを貯めたり親にねだったりしてやっと購入するという感じだった。
恐らくエアチェックという言葉を知らない人もいるかと思うので説明すると、FMラジオの洋楽トップテン番組などを聞きながら、カセットテープの「録音ボタン」を押して、同時に「一時停止ボタン」を押し続ける。ディスクジョッキーが曲紹介をしてそれが終わった瞬間に一時停止ボタンから手を離すと、その曲がカセットテープに録音されて後から何度も聞くことが出来るという行動全般をエアチェックと呼んでいた。
当時はこういう行動が普通に行われていたので、ディスクジョッキーが曲紹介をするときにイントロにかぶせてコメントするということはなかった。また曲を途中で終わらせてしまうということもほとんどなかったと記憶している。一曲全部フルで流してくれるケースがほとんどだった。
ディスクジョッキーの曲紹介が終わるそのタイミングを見計らって、「一時停止ボタン」から指を離し、録音を開始するのだ。これがなかなか緊張の一瞬で、早すぎるとディスクジョッキーの声が入ってしまうし、遅すぎるとイントロが欠けてしまう。
例えば、「さて今週の第1位は3週連続となりますビリー・ジョエルのアップタウンガール!」というコメントがあった場合、そのまま曲が流れることもあれば「この曲は彼の9作目となるアルバム、イノセントマンからの3rdシングルで」みたいなコメントが続いたりする場合もある。このタイミングを見極めないと、雑なエアチェックカセットテープになってしまう。カセットテープは45分とか60分とかの長さがあるから、何曲もつなぐことになるので、できれば各曲が完璧につなげられたベストヒットカセットテープにしたい。
ディスクジョッキーによっては曲の紹介をしたあとに「さあどうぞ!」という合図をくれる人もいて、これは助かったなぁ。
まあ、なに言ってるかわからない人のほうが多いような気もするけど、もしカセットテープの存在すら知らない人は、このまま読み飛ばすか自分で調べてください。
僕は神奈川県に住んでいたので、テレビ神奈川(TVK)を受信できる環境にいたのも、僕が洋楽に親しんだ大きな要素でもあった。
理由はわからないが、当時TVKは、ファンキートマト、ソニーミュージックTV、ミュージックトマトなどの洋楽専門番組に力を入れていて、アメリカでMTVが生まれてミュージシャンがプロモーションビデオ(PV)を制作するようになった流れの中で、いち早くそのPVを放映してくれていた。そのせいで、恐らく他の都道府県に住んでいた人よりも数多く洋楽のプロモーションビデオ(PV)に触れていたんじゃないかと思う。
当時僕は小学校高学年か中学1年生ぐらいだったんだけれど、学校から急いで帰って、夕方から放送されるこの洋楽専門番組を楽しみに観ていた記憶がある。
その頃に大ヒットした曲がこの「Centerfold(堕ちた天使)」だ。ギタリストのJ・ガイルズとヴォーカルのピーター・ウルフが中心となって結成されたJ・ガイルズバンドの楽曲で、この一回聞いたら絶対忘れない印象的なイントロを知っている人も多いと思う。確かなんかのCMソングになってたような気もするし、日本のバラエティ番組のBGMで流れているのを何度か聞いたことがあるので、若い人でも「これ聞いたことある!」っていう人も多いと思う。
「Centerfold」は雑誌の見開きっていう意味で、クラスの憧れの女の子がグラビア雑誌の見開きにセクシーなポーズで出ていてショックだった、っていう内容の歌詞だ。PVでは何人もの若い下着姿の女子が踊りまくるという演出がなされていて、これも中学1年生の僕にとってはそれなりに刺激的で、そういう意味でも夢中になった曲のひとつでもある。
この曲のことを調べてみたら、1981年にリリースされて1982年にヒットしたそうである。もう40年近く前ということになるが、全く色褪せるということがない名曲である。
その流れで1981年から1982年にかけてののヒット曲を調べてみたら、恐るべき名曲揃いだったことを知った。以下、羅列したい。
「Private Eyes」 Daryl Hall and John Oates
「Physical」 Olivia Newton John
「Arthur's Theme (Best That You Can Do)」 Christopher Cross ※ニューヨーク・シティ・セレナーデ
「(Just like) Starting Over」「Woman」 John Lennon
「Morning Train(9 to 5)」「Telephone」 Seena Easton
「Under Pressure」 Queen with David Bowie
「Jessie's Girl」 Rick Springfield
「Eye of the Tiger」 Survivor
「Jack and Diane」 John Cougar
「Don't Stop Believin'」 Journey
「Rosanna」 Toto
「I Love Rock 'N' Roll」 Joan Jett & The Blackhearts
「Hard to Say I'm Sorry」 Chicago
「Magic」 The Police
「Ebony and Ivory」 Paul McCartney and Stevie Wonder
「Start Me Up」 The Rolling Stones
いやー、わかる人にしかわからないと思うけど、次世代に残る名曲揃いだし、すごいメンツである。ここにyoutubeリンクを貼ると、とんでもなくうるさい画面になるからやめておくけど、知らない人はぜひ聞いてみてほしい名曲たちである。
「クリストファー・クロスの声を聞いたあとで初めてPVで顔を見たときはビックリしたよね?!」とか「あの頃のシーナ・イーストンは可愛かったよなー!」とか「ジェシーズ・ガールのギターソロって、パット・ベネターと結婚したニール・ジェラルドなの知ってた?」とか「Journeyの「ESCAPE」とTOTOの「TOTOⅣ」ってどっちが名盤だと思う?」とか「俺が初めてレコード買ったのはポリスのマジックのシングル盤なんだよねー」とかそういう話をしながら酒を5時間ぐらい飲みたい。