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【つ】 疲れたと感じた時にやるべきではないこと

僕はいまマレーシアのイポーというところに住んでいて、今年で51歳になる。

先週の土曜日は、朝からゴルフを18ホールやって、そのあとシャワーを浴びて新日本プロレスの年間最大イベントであるイッテンヨン東京ドーム大会を観た。

マレーシアでは現在一年のうちで最も暑い時期を迎えていて、日中は40度近くまで気温が上がる。朝の9時ぐらいまでは30度前後なのでなんともないのだが、それ以降は灼熱の太陽が容赦なく照りつけるので、熱射病と戦いながらゴルフをやることになるから、これがなかなか体力勝負になる。

そのあと「レッスルキングダム」イッテンヨン東京ドーム大会を観なければならなかった。毎年1月4日(イッテンヨン)に行われる日本最大のプロレスの祭典だ。
今回のイッテンヨンは、31年もの間ジュニアヘビーの第一線で活躍し続けた世界の「獣神サンダーライガー」の引退というトピックの他、夏のG1クライマックスで新日本プロレスの最強のタイトルであるIWGPへの挑戦権を手に入れた「飯伏幸太」と絶対チャンピオン「オカダカズチカ」のタイトルマッチもあった。
マレーシアに住んでいるため、新日本プロレスワールドというネット配信番組と契約して観ているので、日を改めてアーカイブを観ることも可能なのだが、イッテンヨンだけはすぐにネットニュースに結果が出てしまう。
その日のうちに観ないと面白さが半減してしまうのだ。

プロレスとかそういうエンターテイメントは、酒を飲みながら観るに限る。酔っ払って面白さは倍増するし、もっと酔っ払うと感情が押さえきれずに涙を流すことさえあるからだ。

イッテンヨン大会は5時間を超えるし、灼熱ゴルフのあとなのでビールがものすごく美味しかったので、それなりに酔っ払うし、プロレスを見ながらの酒はスピード感を増す。最後のメインイベントまで記憶をなくさないようにペース配分しながら長時間酒を飲んでいたが、最後の記憶は若干曖昧だった。

次の日の日曜日は、現地に住む日本人のゴルフコンペがあって、ハンデの恩恵で前回まぐれで優勝してしまったため、早朝から参加しなくてはならなかった。
2日連続灼熱ゴルフのあと日本食レストランで昼食を兼ねた成績発表会があって、ここでもそれなりに酒を昼間から飲む。早めに失礼するという選択肢もあるのだが、このコンペを楽しみにしている80歳のおじいちゃん(ものすごく上手い。80台で回る)が、今日のゴルフの話とか昔話とか「キミはもうちょっと肘をたたんだ方がいいショットが出るよ」みたいな話を酔っ払いながらしたりするし、現役時代は世界中で大きなプロジェクトを手掛けてた人だったりするので、それなりに話も面白いから、なかなか帰れずに結局5時間ぐらい飲んでしまった。

例年イッテンヨンは一日限りのプロレスの祭典なのだが、今年は二日連続でイッテンゴがあった。今年は1月4日が土曜日だったため、業績絶好調の新日本プロレスが勝負に出て、土日連続の東京ドーム大会を開催したのだ。

イッテンゴでは、荒武者「後藤洋央紀」と現在日本で最もヒール色の強い「KENTA」との因縁のNEVER無差別級タイトルマッチもあったし、イッテンヨンで飯伏幸太を完璧に叩きのめした絶対チャンピオン「オカダカズチカ」とインターコンチネンタルチャンピオンの「内藤哲也」の二冠を掛けたタイトルマッチもあったので、これは見逃すわけにはいかない。

日本食レストランからタクシーで帰宅後、改めて酒を飲み直しながら、イッテンゴを最後まで観た。イッテンゴの結果もすぐにネットニュースに出てしまうので、その日のうちに観ないといけない。

灼熱ゴルフとプロレスと飲酒を繰り返した土日だったので、月曜日の出勤はさすがにきつかった。

体はへとへとに弱っていたし、浴びるように飲んでいたせいで頭も朦朧をしていた。自分がさっき話していたことすら覚えていられないような状態で、一日中右から流れてくる書類にサインをして左に流すという作業をするのが精一杯だった。

このように疲れているときに、やってはいけないことがいくつかあると僕は思っている。

まず、自分が疲れていると絶対に認めないことだ。「あれ?俺は疲れているのか?」という問いに対して認めてしまうとホントに疲れたことになってしまうので、あくまで自分は疲れていないという自己暗示をかける。周りからどう見えていたって構わない。自分は疲れていないという姿勢を貫くのだ。

次に、「疲れた」という言葉を絶対に口にしないことだ。言霊というのは確かにあって、「疲れた」と口にした瞬間にどっと疲れてしまう。
また周りにいる人たちがこういう言葉を聞いた場合、「大丈夫?」という優しい反応が返ってきてしまう。
「これ食べると元気でるよ」って甘いものをくれたり、「目が覚めるから」ってコーヒーを入れてくれたり、「無理しないで早めに帰ったらどうですか?」などと言ってくれたりする。

東南アジアの甘いものっていうのはとてつもなく甘いし、僕は紅茶派だし、休日にゴルフとプロレスと飲酒で疲れている経営者に、早退するという権利などないのだ。

特に一番やってはいけないことは「他人に当たり散らす」ことだ。
僕の場合、いわゆる疲れた状態のときは自分の情報処理能力が極端に低下しているので、今やらなくてもいいことは出来るだけ先延ばしにしたいという気持ちが働く。
ふらふらの月曜日、うちのスタッフが「来週末のチャイニーズニューイヤーのパーティでビールを何本用意する?」って浮かれたことを聞いてきた。
まだ出席人数も確定していないし、10日以上先の話だし、ちょっとイラッとして「そんなの後だ、後!」って言ってしまった。
これは最悪で、このスタッフはパーティをとても楽しみにしていて、「じゃあウィスキーは?ワインはどうしようか!」みたいな展開を期待していたのかもしれないし、スタッフのそういう気持ちを踏みにじって、ゴルフプロレス飲酒疲れのうんこ経営者が、自分の処理能力が低下していることを棚に上げて、当たり散らしただけという愚行だった。
またこういう行為は、後からスタッフの残念そうな顔が頭に浮かんでしまって自己嫌悪にもつながるので、メンタル的にも非常によろしくない。

僕は肉体的にも精神的にも「疲れた」と感じたときの特効薬はひとつしかないと思っている。

「寝ること」だ。

人間を含む動物全般は、生きるために食べて、排泄して、寝る。
食べるという行為は生きていくエネルギーを蓄える行為だし、排泄は余分なものを体内から排出するという行為だし、寝るというのは休息を得て、疲れを取り除くという行為である。

本能に逆らってはいけない。そういうふうに動物は創られているのだ。

火曜日は仕事を整理してなんとかやりくりして、水曜日の午前中休んで、タイマーをかけずに目が覚めるまで寝た。夜9時半ごろ寝て、目が覚めたら朝10時半だった。

13時間睡眠をとったおかげで、頭も身体もスッキリして、ビールの本数も指示したし、仕事もずいぶん片付いた。

今はもう次の日曜日のゴルフのスコアを考えている。


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