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コロナウィルスによるマレーシアの移動制限措置発令から18日間経って思うこと。

僕はいまマレーシアに住んでいて、滞在歴はそろそろ5年半になります。

普段はnoteで「あいうえお順に記事を書く」というチャレンジをしているのですが、この間ニューヨークに住んでいる知り合いのQantaさんがnoteに書いた「NY感染体験記(未確定)」という記事を読んで、現在移動制限措置の真っただ中という、同じような境遇にいる身として、恐らくこれから日本も経験するだろうこの移動制限措置について、僕はまだ感染したわけではないけれど、この期間中に自分の気持ちにどういう変化が起こったかを、番外編として書いてみたいと思います。参考になれば嬉しいです。

まずマレーシアの移動制限措置の概要について、簡単に説明します。

マレーシアでコロナウィルスが爆発的に全国に広がってしまった原因は、2月27日から3月1日にかけて首都クアラルンプールのモスクで国内外の16,000人以上のイスラム教徒が集まった大規模な宗教的な集会が行われたことでした。ここでいわゆるクラスター(集団感染)が引き起こされて、集会を終えた人たちが自分の地元に帰ったことで、それまでは首都クアラルンプール近郊にしか感染者がいなかった状態から、一気に全国にウィルスが蔓延するという状態になりました。

それから約2週間後、マレーシア政府は全国的に移動制限措置を発令しました。内容はこんな感じです。

①国を限定せず、一切の外国人の入国禁止
②海外からマレーシアに帰国する人は2週間の隔離措置
③食品や生活必需品、マスクや手袋などの医療品などの製造業、銀行、水道や電気などのインフラ以外の企業活動を全て禁止
④レストランは宅配及びテイクアウトのみの営業
⑤学校はすべて登校禁止
⑥外出は食料品の買い出しと医療診察以外禁止
⑦州を跨ぐ移動は禁止
⑧イスラム教にとって非常に大事な金曜日の礼拝も含む、全ての宗教的、文化的、スポーツも含むイベントの禁止
※これらに違反した場合は罰金または懲役もしくはその両方

これを3月16日の夜に発表し、3月18日から実施しました。この時点では3月31日までの期間限定の措置でした。

非常に迅速な判断です。

いやいや、全然ほめてないんですよ。もう無茶苦茶です。

マレーシアには日本のコンドーム製造会社の子会社の社長として赴任しているので、この段階では国民への補償が具体化されていなかったため(現在では様々な経済的な対策が発表されています。先に封鎖を決めて、後から対策を発表するというスタイルでした。)、従業員の給与はどうするのかとか、お客様へ出荷できる製品はどれくらいなのか、そもそも移動が禁止されてるのに出荷していいのか、在庫が不足しているものはないのか、こちらに赴任している日本人や仕事で派遣されている日本人の業者さんをどう扱ったらいいのか等々を3月17日の1日だけで処理しなきゃいけない。
ニュースでしかこちらのことがわからない本社からは、コンドームは生活必需品なんだから、政府に掛け合えとか言われるし・・・。

そんなの無理です。

ペナルティ覚悟で、その週は必要な従業員を出社させて残務にあたりました。それでも先行きどうなるのかはハッキリしません。関係官公庁も対応に追われ、ほとんど機能していませんでした。

たぶん僕らのように出勤したりする人が多かったんだと思うのですが、翌週から軍隊を動員して、道路での検問体制を強化するという発表が政府から出されました。

もうホント無茶苦茶ですがな・・・。

それでも感染者数が減少しない状態だったので、3月27日にマレーシア政府はさらに2週間(4月14日まで)の移動制限措置の延長を発表しました。

これで4週間、自宅待機が決定しました。

まだ現段階(4月4日)では2週間ちょっとしか経っていませんが、仕事もテレワークしかない、買い物に行っても検問だらけ、お気に入りのレストランも全て閉鎖してるような状態です。
僕はゴルフ場の中のコンドミニアムに住んでいるのですが、ゴルフもジムも打ちっぱなしも全面閉鎖で、運動もできません。

こんな状態で18日間ぐらい過ごしているのですが、どんなふうに心境が変化していったのか、僕の実体験を書いてみたいと思います。

3月18日(水)~3月22日(日)
最初の3日間は会社の残務に追われていましたので、まああんまり変わらない日常でしたが、土日から今後なにをしたらいいのかを考え始めました。
うちは家内と二人暮らしなのですが、僕は家庭内で雰囲気が悪くなることは絶対に避けなければならないと思いました。
僕が長期間一日中家にいるというのも家内にとっては初めてのことですし、なんかしていないと自分もイライラするような予感もあったので、とにかくどちらにも負担が多くならないように、夕食はできるだけ僕が担当しようと決めました。
最大のリスクを設定して、その対策を決めたということです。
ただ、次の日に朝早く起きなくてもいいという安心感から、いつもよりたくさんお酒を飲んで、夜遅くまで起きていました。

3月23日(月)~3月26日(木)
このあたりから、テレワークでどの程度仕事があるのかが把握できるようになってきました。1日2時間程度で十分だ、という感覚でしたので、こっちに赴任している日本人スタッフなんかのケアはどうすればいいのかなど、日本の本社との仕事以外のことを考えるようになりました。
検問に引っ掛かりながらも買い物にも出かけて、こういう状況下での生活はどういうものなのか、ということもわかり始めてきました。
ただし、この時点では移動制限措置は3月31日までという認識でしたので、まあ先も見えているし、みんなで乗り切ろう!という前向きな気持ちもありましたが、感染者数に減少傾向が見られなかったので、延長の可能性もあるな、という不安な気持ちもありました。

3月27日(金)~3月31日(火)
27日の時点で2週間の移動制限延長(4月14日まで)の発表がなされました。ペナルティを覚悟で社員に集まってもらって、15日以降の出荷可能数量、在庫の確認、再開後の工場稼働スケジュールなどを話し合って、本社とやりとりなどをしなければなりませんでした。
僕の場合、このあたりから「ちょっと気を付けないとやばいぞ」という気持ちが出てきました。
あと少しで日常が戻ってくるという期待を持って生活していたのが、さらにあと倍の2週間延びたことで、どうやって時間を過ごせばいいのかがわからないという不安に襲われたのです。
朝早く起きてしまうと1日が長く感じられるので、深夜までひとりで酒を飲んでYoutubeを見てたりするような生活が始まりました。酒量も増えて、次の日もあまり体調がよくない状態で、昼寝をしてまた深夜まで酒を飲むみたいな生活です。Youtubeでも、新しい番組を見るというよりは、10代の頃に聴いていたようなミュージックビデオを片っ端から見てたりしていたので、何か新しい体験をするという行動も面倒くさくなっていた感じです。
本社から連絡があっても「そんなこと言われたって無理に決まってるでしょ。こっちは大変なんだよ。」みたいな感情が出てきて、自分をコントロールするのが難しく感じることもありました。
あと僕の場合、とにかく人に会いたくなりました。ほとんど家内としか話をしていませんし、社員や友達の顔も見ていませんでしたので、昼食のテイクアウトで久しぶりに話したチキンライス屋のおやじとちょっとやりとりをするだけでもすごく嬉しい気持ちになったり、SNSでの友人の反応にもいつもより嬉しい気持ちになったりしました。
「あー、自分はこういう弱点を持ってるんだ」っていうことが、こういう環境ではよくわかるもんだな、と感じましたね。
こっちの中華系マレー人の友人がいきなりテレビ電話をかけてきて、2時間ぐらい飲んだのは嬉しかったなー。

4月1日(水)~4月4日(土)
まだコロナウィルス感染者の減少傾向が見られない状況で、マレーシア政府が4月1日にさらに移動制限を厳しくしました。買い物などの外出は原則的にひとりで行くこと、半径10キロ以上の移動も禁止する、敷地内においても運動なども禁止するというものです。
ただし、なんというか、自然と慣れてきました。
僕の中では、海外に赴任したばかりの頃に感じた「不自由さに慣れていく」という感覚に近い。
すごく並んだりするけど、スーパーで食品が手に入らないわけではないし、マレーシア在住の日本人の人たちとLINEグループで飲み会なんかも始めたりして、他人と話もできないという状態でもないし、仕事をやると言ってもできる状態ではないし、先が見通せるかというとそれは誰にもできない。そういう割り切りが2週間経ってやっと出来てきたという感じです。

2週間以上、この厳しい移動制限措置の中で生活してきてやっとわかったのですが、いま自分に出来ることは、このウィルスの拡大を防ぐ努力をするということだけだということです。

よくネットなんかでこういうことを言ってる人がいて、そんなの当たり前でしょーとか思ってましたけど、僕はこういう経験をして、やっとホントに自分事として捉えることができた気がします。

驚いたことに、僕の住んでいるエリアにいるマレーシア人の人たちは、いつも気さくで寛容で、自由なイメージがありましたが、今回はルールをしっかり守っています。

恐らく日本もこれから首都圏を中心に、このような措置を取られるのは避けられないんじゃないかと思います。

その時が来たら、僕の経験上こんなことを覚えておくといいんじゃないかと思うことをまとめます。

①「こうなっちゃダメだ」という最低限のことを決めてキチンと対策を立ててそれを守る。
②それは他人と違って当たり前なので、比較や攻撃をしない。
③不自由には必ず慣れるので不安にならない。
④今回の場合、先を見通すのは誰にも出来ないことを理解する。
⑤従って先行きに不安を持っても仕方ない。今を対処するしかない。

あと、お酒が好きな人は適量を守ってください。キリがありません(笑)

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