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ガメラ3をレビューする
You Tubeに角川コレクションというチャンネルがあります。そのチャンネルでガメラ3が無料公開されています。2週間の限定公開です。平成ガメラシリーズ3部作の完結編です。この完結作についてわたしのレビューを書きます。
レビューの後に公開期間は過ぎたものの、ガメラシリーズの最高峰といわれる対ギャオスという映画についてもレビューします。小さいときは怪獣映画というとほとんど怪獣の視点からしか見ていなかった。それが年月を重ねるとこのようになります。
ガメラ3邪神<イリス>覚醒
この映画は不信・非協力・無関心という世紀末を描いた映画です。バブル経済が崩壊して10年。混迷により株神話と土地神話が失われた。
1990年から2000年は失われた10年といわれる。すると人々に中には不信が芽生える。信じることができない。なにかしらの怒りになっていく。次第に助け合わなくなる。そうやって非協力の時代が到来する。それが進むと物事に関心を寄せなくなる。そういったやりとりが描かれている。そして邪神といわれる怪獣イリスが出現した。
ところがその邪神に乗り移っていたのはガメラに家族を殺された美しい少女の怨念だった。ガメラを殺せと命令する。その命令は強力な武器となってガメラを襲う。はたしてガメラは勝てるのか。この戦いに勝つために必要だったのは混迷の中に必死に抵抗をする航空総隊だった。
この総隊の指揮官を演じる役者はとてもよい。まず先任管制官(石丸 謙二郎)にはじまり圧巻は司令(津川雅彦)。この重厚な役は彼らにしか務まらないでしょう。ワンカットだけだけど見るに値します。失われた信用・協力・献身といったものがある。
さてこの映画が作られて20年。コロナウィルスとウクライナで世に蔓延する不信の中であれほどの役を演じられるのは誰だろうか。失われたものをとりもどすには演じる人たちだけでなく、真のリーダー(英雄)を必要する。オーセンティックで嘘をつかないこと。弱者に共感できること。そういった要素を持ち合わせた精神活動ができる人でしょう。
ガメラ対ギャオス
この作品は道路公団技師と村長孫娘の物語です。前作の対バルゴンでは欲の突っ張りあいがどれほどの悲劇を生み出すのかを描いていました。そこでは人間の悪が怪獣バルゴンとなって姿を現し建物を壊す。そうして人々を恐怖のどん底に突き落とすというパニックでした。
さて前作に続きこの映画もテーマは同じ。幹線道路を工事する建設株式会社と道路建設に反対する村人との対立から新しい物語はスタート。村は富士山麓にあります。そこであるとき不思議な緑色の光を放つ洞窟に何者かが隠れていた。
そして何者かは新たな怪獣ギャオスとなって出現する。またしても人類の危機。なんとか退治をしないと大変なことになる。ところが自衛隊の作戦は次々に失敗。ぐるぐると目を回して日光を浴びせる回転作戦。山火事を起こして火の中で焼け死ぬようにとロケット弾を撃ち込んでの山火事作戦。それらはことごとく失敗をする。
最後は苦戦を強いられたガメラが体当たりをしてギャオスを噴火口に沈めた。
この作品の中では道路公団の現場監督を演じる堤士郎(本郷功次郎)と村長の孫娘すみ子(笠原玲子)の出会いと接近が適度な距離感で描かれています。おそらくはじめはお互いに意識をすることはなかったもののすみ子は物語を通して堤の真摯な態度に惹かれていく。
戦いの後で堤は村に残り公団の仕事を続ける。そしてすみ子は村に残り堤の近くにいる。道路公団技師と村長孫娘の物語として貴重な映画です。よく練られたストーリーでガメラシリーズの中で最高峰に挙げられます。
わたしもこういうレビューを書くことで少し大人になれたのかもしれません。