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和声分析 ソルのエチュード1番
セゴビアが編集した
「有名なソルの20の練習曲」(Op.6-8)
から和声分析をおこなっていきます。
美しく、そしてKeyがCということで
わかりやすいので第1番を選びました。
この曲の特徴は
1.三声のメロディーが対位的に書かれている。
2.目まぐるしい細かな転調。
3.非和声音の多用。
転調
この曲のキーはC(ハ長調)ですので、
音階上にできるコード
(ダイアトニックコード)は
C、Dm、Em、F、G7、Am、Bm7(♭5)
となります。
和声進行において緊張→弛緩を生み出すのは
もちろん5番目の和音から1番目の和音に
進行するときです。
このkeyCにおいてはG7→Cで、
5番目のコードを
ドミナントセブンスと呼ぶため、
ドミナントモーションと言われる。
転調を含む曲は含まない曲に比べて
色彩感豊かといえるでしょう。
その転調を見やぶる一つの方法は、
本来のKeyのダイアトニックコード群には
ないドミナントセブンスコード(○7)を
見つけ出すこと。
この曲では本来G7のみが
ドミナントセブンスコード
ですが、その他にも本来存在しないはずの
A7、E7、D7、C7といった
ドミナントセブンスコードが
散見することができます。
(矢印の部分)
和声学上の約束事として
ドミナントセブンスコードは
主和音(トニック)に
解決されることになっていて
やはりそれは5番目のコード→
1番目のコードと
いうお約束の進行です。
例えば、A7というコードはKeyDまたは
Dmの5番目にあたるので、
この練習曲1番の中で
でてきたA7もその直後の解決コードは
DmかDになっています。
30小節目にいたっては、行った先がさらに
その先のG7のドミナントセブンスに
なっているという
ドミナントセブンスの連続技になっています。
(ソルの曲やジャズなどでも多用される)
これは狭い範囲で頻繁に転調が現れると
考えることができます。
譜例 Estudio1 Op6 no.8
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非和声音
この練習曲は非和声音も多く見られます。
非和声音とは本来その和音構成音に
ない音のこと。
例えば、Cコードの構成音は
ド、ミ、ソ、シ、
ですからCコードにこれら以外の音が
付加された時、その音を非和声音と呼びます。
(37小節のレの音など)
広義にはコード構成音以外の音は
すべて非和声音と呼ぶことができますが、
使われ方によっていくつかに分類されます。
倚音(appoggiatura いおん)・・・
和音構成音の上部または
下部2度にあって
不協音程をもたらすもの。
譜例1段目の青い○で囲んだ音。
掛留音(suspention けいりゅうおん)・・・
和音構成音の2度上にある非構成音が
先行和音より保留され
一時的に不協和音程を生じた直後、
構成音に解決するもの。譜例33小節以降の
赤い○で囲んだ音。
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