関志雄『中国を動かす経済学者たち』2007
この本は東洋経済新報社の出版。正式のタイトルは『中国をうごかす経済学者たち 改革開放の水先案内人』である。これは私が、中国の経済学史の研究を始めるとき、先行研究として重視した本の一つだが、明らかに関心が違うのは、この本は改革開放(1970年代終わり)以降に議論を絞り込んでいる点だ。結果として、たとえば陳雲とか鄧子恢など、わたしなら論じる人はこの本に登場しない(写真は成城大学1号館中庭)。
私は改革開放の前からの流れを見ないと、中国の経済学史を見ることにならないと、考えている。改革開放前のプロセスで生じた問題の解決として、改革開放以降の諸問題があると考えるからである。
関さんの本は、改革開放以降に絞られているので、取り上げる問題も当然私の関心とは異なっている。社会主義体制自身の問題や、社会主義体制から改革開放に転換する問題の部分は欠けていて、改革開放の進め方の話になっている。とはいえ、この本が書かれた2007年の時点において、とくに国有企業の民営化をめぐる問題(なかでもMBOを使った国有資産流出問題)がホットイッシューだったことが分かるなど、本書は現在からみても情報ソースとしてもちろん有益である。(なお同様の関心は以下でも見られる。関志雄『中国経済のジレンマ』筑摩書房2005年。関志雄ほか編『中国の経済大論争』勁草書房2008年。)
著者の関志雄(グアン・ツーシオン)氏は1957年香港生まれ。1979年香港中文大学経済学科を卒業。1996年東京大学で経済学博士。香港上海銀行調査部エコノミストなどを経て、野村の研究所で長く活躍されている。
私の関心は、コースが『中国共産党と資本主義』日経BP社(翻訳2013年 原書2012年)で示した関心に余程近いといえる。実際の私自身の展開の仕方は以下を参照されたい。
新中国の社会主義とその経済学の歩み
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