三田演説館と福澤諭吉胸像
慶應義塾大学三田キャンパスには国の重要文化財に指定されている建築物が二つある。一つがこの「三田演説館」もう一つは「図書館(旧図書館)」である。
「三田演説館」は明治8年1875年5月の竣工。大正13年1924年移築。都内に残る明治初期の洋風建築は貴重であるとして、昭和42年1967年6月に重要文化財に指定されている。木造瓦葺。壁は明治時代の建築に多い「なまこ壁」だが、窓は洋風であり、洋風を模して造られたことを伺わせる。
この建築の「おもしろさ」について以下を参照。
藤森照信 三田演説館の上げ下げ窓 2022/08/24
その「演説館」の前に設置されているのは、柴田佳石(明治33年1900年ー昭和43年1968年)という彫刻家が昭和28年1953年に制作した福澤諭吉胸像。柴田は、福澤諭吉(天保5年1835年ー明治34年1901年)と面識はない。この胸像の制作プロセスが気になるが残念ながら、詳しく書かれたものを発見できていない。この胸像の福澤は淡々としており、その胸中を伺うことはできない。果たして、福澤はこうした人だったのだろうか。
なおこの胸像は以下のように、設置場所が変遷している。現在の「演説館」前という位置は、おそらく工事などで移転をお願いする必要が少ない場所という観点を優先したように見える。しかし少し奥まった場所で、寂しい感じがしなくはない。
昭和29年1954年1月 研究棟前に設置
昭和42年1967年 研究棟建て替えのため撤去
昭和58年1983年9月 図書館正面玄関左側に設置
平成29年2017年2月 図書館改修工事のため、演説館前に移設
編集部 三田の福澤像 三田評論 2017/02
なお福澤諭吉像はこの胸像のほか、幾つか知られているものがある。ここでは最近のものとして出身地の大分県中津、その駅前に昭和60年1985年2月に設置された辻畑隆子作の立像を上げて置く。
大分県HP 福澤諭吉旧居・記念館HP
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