中国のトップレベルの経済学者
私たちは中国の経済学者について、過去についても現在についても十分な情報をもっていない。名前を見ても、有名な人なのかもわからない始末だ。衛志民《經濟學史話》商務印書舘2012年の付録4は現時点で、世界で活躍する中国経済学者と題して、中国人経済学者を20人ほど紹介している。この資料を使って、経歴から間違いなくトップレベルと思われる人を8人。さらに絞り込んでみた。この振り分けはかなり感覚的なもので、明確な基準で選んでいるのではない(判断として現時点で、年代として60代まで。完全に海外化した人は避けて、中国国内でも活動歴がある人を選んだ)。浮かび上がる特徴は、中国の学部で理数系の教育を受けた人が多いこと、アメリカの有名大学で博士号を取得していること。海外で学位をとり、英文で論文の発表を継続している人は国際的に認知されやすい。しかし、日本でも同じであるが、中国国内での評価はどうか。中国国内で教育を完結させながら、中国国内で影響力を持っている学者が相当数いるはずで、そうした人を発掘したいものだ。主として中国語で論文や著書を発表して、中国国内ではむしろよく知られ評価されている。国際的な認知と、国内的な評価とは、別物であることに注意するべきだろう。
許成鋼(シュー・チョンガン 1950-)自学自習ののち1979清華大学研究生院に入学。1982年清華大学機械工程で修士。中国科学院計量技術研究所で研究院助手ののち1984年ハーバード大学に留学。1991年ハーバード大学経済学博士。同年ロンドン大学に赴任。1998年同教授。香港科技大学客座教授、清華大学特別招聘教授などを兼任。
林毅夫(リン・イーフ 1952-)1971台湾大学農業工程系卒。1978年台湾政治大学企業管理研究所で修士号取得。1982年北京大学経済系政治経済学修士。1986年シカゴ大学経済系で経済学博士号取得。その後、イェール大学経済発展センターで研究。1987年―92年北京大学経済系准教授。93年より教授。1987-1993年国務院の研究管理職を兼任。
銭穎一(チエン・インイー)1981年清華大学数学系卒。コロンビア大学で統計学修士(1982年)イェール大学で管理科学および運籌学(戦略学?)で修士(1984年)。ハーバード大学で経済学博士(1990)。その後、スタンフォード大学に勤務(1990-2001)。2001年カリフォルニア大学バークリ校で経済学系教授、2006年より清華大学経済管理学院院長。(2016中国経済学奨受賞)
王江(ワン・チアン)1981年南京大学物理系卒。1985年ペンシルヴァニア大学物理学博士号取得。1989年ウオートン商学院金融学博士学位取得。マサチューセッツ工科大学MIT金融学院に赴任、現在に至る。2002年清華大学中国金融研究センター主任。2008年上海交通大学金融学院院長。(2018中国経済学奨受賞)
鄒恆甫(ツオウ・ホンフウ 1962-)1982武漢大学経済系卒。1986年ハーバード大学経済学修士、1989年同博士号取得。1989年から世界銀行に勤務。北京大学光華管理学院一級教授、応用経済系主任なども務める。現在世界銀行研究員、深圳大学経済科学高級研究センター主任。
白重恩(パイ・チョンウン)1983中国科技大学数学系卒。1985カリフォルニア大学サンタバーバラ校数学系で博士号。その後1993年ハーバードで経済学博士号。ボストン大学で教鞭後、香港大学経済金融学院に赴任、2002年から清華大学経済管理学院特別招聘教授を兼任、2004年清華大学教授。
李稻葵(リー・ダオクイ 1963-)1985年清華大学経済管理学院管理情報工程系卒。1992年ハーバード大学経済学博士取得。1992-1999年ミシガン大学に赴任。1997-1998年スタンフォード大学フーバー研究所研究員。1994-2004香港科技大学准教授。2004-清華大学経済管理学院教授、金融系主任。
洪永森(ホン・ヨンシェン 1964-) 1985厦門大学物理系卒業。1986-87中国人民大学経済学培訓センターで学んだのち1988厦門大学で経済学修士号取得。1993年カリフォルニア大学サンタバーバラ校で経済学博士号取得。同年よりコーネル大学に赴任。1998同准教授。2001教授。2002-2005清華大学経済学院特別招聘教授。現在、コーネル大学終身教授、厦門大学王亞南経済研究院院長。
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