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令和5年(2023年)分民間給与実態統計調査から所得階層分類を考える

令和5年(2023年)分民間給与実態統計調査が2024年9月25日に
国税庁から発表されている。
ここではその内容についてみてゆきたい。
まずこの調査に依って日本の2023年の民間給与の平均値が明らかに
なっている。表1のように平均は年460万円であり、
正規・非正規で大きな差がある。なお年460万円は1人民元21円で人民元に換算すると22万元、1ドル150円で米ドルに換算すると3万ドルである。

表1 令和5年(2023年)の民間給与(平均値)
1年を通じて勤務した者 単位:万円
   正規 非正規 合計
男子 594  413  530
女子 269  169  202
合計 569  316  460

表2で年代別の数値を見ると、50代後半がpeakで平均値で
男子の場合は年700万を超えている。しかし女子はpeakでも
400万に届かず男女格差がある。表1と見比べると、
女子の平均値が低いのは、非正規の女子が多いことが一因
であることが推測できる。

表2 令和5年(2023年)の年代別民間給与平均値
1年を通じて勤務した者 単位:歳、万円
年齢    男子  女子  合計
19歳以下 133   93   112
20-24   279  253   267
25-29   429  353   394
30-34   492  345   431
35-39   556  336   466
40-44   612  343   501
45-49   653  343   521
50-54   689  343   540
55-59   712  330   545
60-64   573  278   445
65-69   456  222   354
70歳以上  368  197   293  
合計    569  316   460

表3で株式会社に限定して資本金階層別に見ると、
資本金が大きい企業ほど平均給与が高い傾向がある。また、
平均年齢がいずれの区分も40歳代であるので、表2
40歳代の数値と比べると、資本金が10億未満の企業は
表2が示す40歳代の平均年収に届いていない。

表3 資本金階層別に見た株式会社の平均給与
令和5年(2023年) 単位:円、万円、歳
資本金階層  男子 女子 合計 平均年齢
2000万未満  469 267  386  48.4歳
2000-5000万  517 284  438  47.6
5000-1億   516 274  423  46.2
1億-10億   588 315  481  44.8
10億以上   767 410  653  44.0
株式会社計  581 309  480  47.0

最後に給与別の人の数を見る。全国全体の数は表4
通りである。集計対象5076万人中、2000万以上は
31万人、1000万から2000万の間は249万人である。
意外に1000万以上のところの数が大きい。その意味
を見るため構成比率を見る(表5)。
構成比では最上位1%は、本当の意味で上位層ではないか。
男子のところでこの数字を見ると、概ね2000万以上の
ところ。家計の年収で2000万をこえる階層を
富裕層(wealthy class)とみてよいのではないか。
では中間層(middle class)の所得はどのあたりか。ここは
議論が多分別れる。完全に平均をとれば460万であることは
すでに見たが、それは男女を合計した全国平均の一人当たりの
数値であった。
中間層の夫婦共働きを考慮して全国平均の男子と女子の
平均の合計である890万はかなり、適切な数値かもしれない。
つまり、夫婦共働きで世帯年収900万程度あるいは、
男性一人でみると
共稼ぎ前提で年収500万台から片稼ぎで1000万台の者が
中間層を作っているというのが仮説である。
表5の数値から推論すると
社会全体では30%程度がこの中間層を形成していると
いうのがここでの仮説である。
表5の資本金規模10億円以上の株式会社における男子の
給与階層を見ると1000~2000万の層が19%に達している。
つまり大企業の男子では平均で5人に一人が1000万台に
達している。このことからも中間層の所得水準は1000万
台に達しているとみて良いのではないか。

表4 令和5年(2023年)の各給与階層の人数
令和5年(2023年) 単位:万円、1000人
年収    男子  女子  合計
100万以下 1,053  3,083  4,136  
100-200  1,734  4,492  6,226
200-300  2,797  4,297  7,093
300-400  4,300  3,955  8,255
400-500  5,043  2,773  7,817
500-600  4,040  1,464  5,504
600-700  2,874   748  3,621
700-800  2,068   420  2,488
800-900  1,428   210  1,638
900-1000  1,047   144  1,191   
1000-1500 1,808   227  2,035   
1500-2000  405   46   451
2000-2500  129   14   143
2500超   149   13   162
合計   28,875 21,887  50,761

表5 令和5年(2023年)の各給与階層の構成比率 
括弧内は株式会社で資本金10億円以上の場合
単位:万円、%
資本金階層  男子  女子    合計
100万以下 3.6( 1.7) 14.1(11.5)  8.1( 4.8)
100-200  6.0( 2.7) 20.5(14.1)  12.3( 5.9)  
200-300  9.7( 2.9) 19.6(15.2)  14.0( 6.8)
300-400  14.9( 5.2) 18.1(11.8)  16.3( 7.3)
400-500  17.5(11.0) 12.7(15.4)  15.4(12.4)
500-600  14.0(12.6) 6.7(11.6)  10.8(12.3)
600-700  10.0(13.0) 3.4( 7.5)   7.1(11.3)
700-800  7.2(12.8) 1.9( 5.3)   4.9(10.4) 
800-900  4.9(10.7) 1.0( 2.6)   3.2( 8.1)
900-1000  3.6( 8.8) 0.7( 1.8)   2.3( 6.5)
1000-1500  6.3(15.5) 1.0( 2.8)  4.0(11.4)
1500-2000  1.4( 2.7) 0.2( 0.3)  0.9( 1.9)
2000-2500  0.4( 0.6) 0.1( 0.1)  0.3( 0.4)
2500超    0.5( 0.5) 0.1( 0.0)  0.3( 0.4)
合計    100.0   100.0   100.0


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