コロナショックと日本企業
Japanese Corporate Activity under COVID-19 crisis
1. コロナショックー人員不足感、資金余剰感伴う不況
2. 生産・小売は急回復(10月)
3. 業種別分析など
4. 企業の借入急増と、低失業率・少ない倒産・株価高騰
まとめ:未来への期待
補論 貿易関係にみる中米日韓の立ち位置の違い
福光 寛 Hiroshi Fukumitsu
2020年5月、生産・消費で前年比3割減に沈み、7割経済にまで落ち込んだ日本経済。すでに景況が悪化していた日本経済は、コロナショックに見舞われた。雇用情勢は次第に悪化しているが劇的な悪化は避けられている。株価は高騰、不動産価格も維持されている。実態経済の悪化にもかかわらず、企業の倒産は歴史的な低水準にまで抑えられている。しかしこの状態はいつまで持続可能だろうか。(写真は澤蔵司稲荷慈眼院入り口の黒猫 以下は2021年1月13日に統計数値をできるだけ修正したもの)
1. コロナショックー人員不足感、資金余剰感伴う不況
2020年第一四半期にコロナショックが起きた。日銀短観(表1)によれば業況悪化感、生産営業設備過剰感にあらわれているが、他方、人員不足、資金余剰感を伴う不況だという点は、今回、特徴的である。
この景況感悪化の一因として、私見では、政府による年金財政悪化キャンペインがある。これは消費税引き上げを納得させる狙いをもっていた。その目論見は成功したが、結果、高齢化社会を控えてコロナ登場以前に、国民は消費を控える動きで反応した。政府は、この動きに対して、マネーサプライを増加することで消費を喚起しようとした。政府による年金財政破綻キャンペーン。老後不安 貯蓄の高まり。その結果、消費は減退していたがそこにコロナショックが発生。人々はさらに消費縮小を行い、結果として消費不況は深化している。このことは生産営業設備過剰感の高まりで確認できる。これに対して政府は資金余剰感があるところに、さらに資金を目いっぱい緩めている(このことは資金不足訴える企業が少ないことに反映している)。後述するようにその結果、コロナで不況であるはずなのに企業の倒産は記録的に少ない。
他方、人員には企業側には不足感が続いており、そのことが不況にもかかわらず雇用問題の深刻化を防いでいる(2020年第Ⅳ期をみると大企業では人手不足がほぼ解消される一方、中堅以下では人手不足感が再び高まっている。)。
ところで国民が貯蓄に回したお金は、どこに行ったのか。社会全体でみると、株式や不動産への投資に回ったと考えられる。加えて日銀は市場介入して株式価格下支えしている(コロナ危機下の経済と社会)。また、民間の不動産業向け融資拡大もあって、投資用のマンションの価格については、上昇がキープされている。ただ多くの人は、この資産価格高騰の持続可能性を疑っている。
高齢化と人口減少で縮小する個人消費 季刊政策経営研究 2016.Vo.4
日本人は人口減少の深刻さがわかっていない 東洋経済2018/05/09
日本経済は縮小を続けている 野口悠紀雄 Note2019/12/29
コロナ禍で日本経済40兆円縮小 未曾有の財政赤字 Reuters2020/07/31
表1 日銀短観 DI diffusion index 2019Ⅳ~2020Ⅳ
19 20 20 20 20
Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
大企業 良い+ 悪い- 業況判断 deterioration of business condition
製造業 0 -8 -34 -27 -10
非製造業 20 -8 -17 -12 -5
中堅企業
製造業 1 -8 -36 -34 -17
非製造業 14 0 -27 -23 -14
中小企業
製造業 -9 -15 -45 -44 -27
非製造業 7 -1 -26 -22 -12
生産営業設備DI 過剰+ 不足- 設備過剰感 over capitalization
大企業 +2 +4 +15 +15 +13
中堅企業 0 +2 +14 +14 +11
中小企業 +1 +3 +17 +17 +13
人員DI 過剰+ 不足- 人員過剰感 employment redundancy
大企業 -21 -20 -3 -2 -4
中堅企業 -31 -28 -6 -7 -10
中小企業 -34 -31 -6 -6 -13
資金繰りDI 楽+ 苦- 資金不足 lack of funds
大企業 +21 +18 +10 +10 +11
中堅企業 +22 +19 +7 +7 +10
中小企業 +16 +8 -1 +2 +4
注:2020ⅢⅣ期を追記 数値を原数値に改変 2020/12/15
資料:日銀短観要旨 日銀DIの意味
表2 日米中の総人口 高齢化率 人口単位1,000人
日本 総人口 65歳以上 アメリカ合衆国 中 国
2010 128,057 23.0% 309,011 13.0% 1,368,811 8.1%
2020 125,325 28.9% 331,003 16.6% 1,439,324 12.0%
2030 119,125 31.2% 349,642 20.3% 1,464,340 16.9%
2040 110,919 35.3% 366,572 21.6% 1,449,031 23.7%
資料:総務省統計局『世界の統計2020』2020年, pp.15-17
表3 勤労者世帯の消費性向、貯蓄率の推移
全国 2人以上 勤労者世帯 年平均 %
2014 2015 2016 2017 2018
平均消費性向 75.3 73.8 72.2 72.1 69.3
平均貯蓄率 18.2 19.8 21.3 22.3 26.6
資料:総務省「家計調査」
日本は欧州に続き、物価上昇率マイナスに転じた(10月)
表4 2020年米英欧日の消費者物価前年同月比上昇率
consumer price index year-on-year basis in 2020 %
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
米 2.5 2.3 1.5 0.3 0.1 0.6 1.0 1.3 1.4 1.2 1.2
英 1.8 1.7 1.5 0.8 0.5 0.6 1.0 0.2 0.5 0.7 0.3
€ 1.3 1.2 0.7 0.3 0.1 0.3 0.4 -0.3 -0.3 -0.3 -0.3
日 0.7 0.4 0.4 0.1 0.1 0.1 0.3 0.2 0.0 -0.4 -0.9
注)11月分を追記 2021/01/13
2. 生産・小売は急回復(10月)
鉱工業指数でみると生産は前年比で2020年5月は26%減に追い込まれた。10月に3%減まで回復した(表5)。商業動態統計(表6-1)で販売額(小売)を見ると前年比、4月14%減5月12%減、しかし10月は6%増の急回復した。これに対して卸売り7%近い減少。しかしコロナショック以前から卸売りは前年比減少率が大きい。ここには卸売りの売上高が構造的に減少しつつある問題が重なっていると考える。これには以下の要因が指摘されている。
プライベートブランドの普及
小売り・消費者が生産者と直接取引することの増加
自社製造小売りのビジネスモデルの拡大
以下を参照 卸売り売上高の減少 流通ニュース2019/04/22
卸売の減少にはこうした特殊要因が、関係しているとすれば、コロナショック後の10月、日本経済は生産・消費とも小康を得たことが分かる。しかしほどなく、コロナ感染の再びの増加で、2021年1月、日本は再び非常事態宣言による自粛に追い込まれることになった(2度にわたる非常事態宣言については前掲 コロナ危機下の経済と社会を参照。 )。
小売りのなかでは、業態間格差がでている(表6-2)。百貨店売上は壊滅的減少。家電量販、ホームセンターは大幅増加。COVIDは、最初にインバウンド依存の観光・宿泊産業を一撃し、つぎに百貨店のような時代遅れの(outdated;old fashioned)ビジネスに死刑宣告を下した。
なお、コロナショックは、感染防止策として移動の自粛が求められたなか、鉄道・航空業界に大きな影響を与えた。航空会社についてみると(表7)、国内航空は2020年6月でなお前年比8割減の水準。国際航空については98%減であるから、事実上は全面的に業務が止まった状態である。鉄道会社についてみると(表8)、2020年6月はおおむね前年比3割減の水準。但し遠距離移動を担う新幹線に限れば、5割減の水準だった。
次に個別商品の売り上げの例示。自動車の新車販売台数(表9)は8月末段階累積で前年比2割減。興味深いのはバスの落ち込みが特に大きいことだ。インバウンドが激減したことが影響している可能性があろう。つぎにパソコン販売台数(表10)。これについてはマイクロソフトの基本ソフト「ウインドウズ7」のサポート終了(2020年1月14日)を控えて、2019年から2020年1月にかけてパソコンには特殊需要があったので、2020年は落ち込みが大きくでる可能性がある。この可能性を考えるとノートパソコンの4月から6月の数値はかなりの健闘ではないか。
生産・出荷ともに前年比3%割減まで回復(10月)
鉱工業指数 生産26%減 出荷27%減 在庫率40%増 (5月)
生産3%減 出荷3%減 在庫率1%減 (10月)
表5 2020年鉱工業指数 増減率 (確報値) %
前月比 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
生産 +1.0 -0.3 -3.7 -9.8 -8.9 +1.9 +8.7 +1.0 +3.9 +4.0
出荷 +0.6 +1.0 -5.8 -9.5 -8.9 +4.8 +6.6 +1.5 +3.9 +4.9
在庫 +1.6 -1.7 +1.9 -0.3 -2.6 -2.4 -1.5 -1.3 -0.5 -1.8
在庫率 -1.6 -2.3 +8.4 +13.6 +7.3 -7.1 -8.9 -2.0 -4.4 -3.3
前年同月比 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
生産 -2.3 -5.7 -5.2 -15.0 -26.3 -18.2 -15.5 -13.8 -9.0 -3.0
出荷 -3.3 -5.4 -6.5 -16.6 -26.8 -16.6 -16.6 -14.2 -9.8 -3.0
在庫 +3.9 +1.6 +2.9 +2.7 -0.5 -3.4 -4.8 -5.9 -5.7 -8.1
在庫率 +9.5 +9.4 +12.6 +29.2 +40.7 +22.5 +17.6 +13.0 +6.7 -0.9
注:10月分を追記 2021/01/13
卸売で前年比大幅減少続くが、小売は急回復(10月)
商業販売額前年同月比 卸売で25%減 小売で12%減 (5月)
卸売で7%減 小売は6%増 (10月)
表6-1 2020年商業動態統計(確報値)%
2020年季節調整済前月比 増減率
前月比 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
卸売 -0.6 +0.7 -1.6 -9.9 -7.9 +5.6 +2.2 +1.0 +3.3 +1.2
小売 +1.5 +0.5 -4.6 -9.9 1.9 +13.1 -3.4 +4.6 -0.1 +0.5
合計 -0.2 +0.5 -2.6 -9.8 -6.1 +8.1 +0.5 +1.5 +5.0 +0.4
前年同月比 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
卸売 -6.2 -6.3 -6.9 -17.2 -24.7 -16.9 -17.0 -16.5 -14.6 -6.6
小売 -0.4 1.6 -4.7 -13.9 -12.5 -1.3 -2.9 -1.9 -8.7 +6.4
合計 -4.3 -3.9 -5.8 -16.0 -21.2 -12.4 -12.9 -12.4 -12.7 -2.7
注:10月分を追記 2021/01/13
表6-2 商業動態統計(前年同月比売上額増減比率)
① ② ③ ④ ⑤ ⑥
2020/01 -3.3 -0.8 1.6 -0.3 6.3 -1.5
2020/02 -11.8 6.0 3.4 5.2 19.1 9.7
2020/03 -32.6 2.6 -5.4 -9.5 7.6 3.5
2020/04 -71.5 3.7 -10.7 -9.0 10.8 4.1
2020/05 -64.1 6.7 -9.6 8.8 6.4 11.2
2020/06 -18.4 4.7 -5.1 25.6 6.5 17.3
2020/07 -19.8 4.5 -7.9 12.4 5.6 10.6
①百貨店 ②スーパー ③コンビニ ④家電大型量販
⑤ドラッグストア ⑥ホームセンター
百貨店ドミノ倒産へ 東洋経済2020/04/27
百貨店 5~8ケ月で資金枯渇 ダイヤモンド2020/05/18
レナウンの倒産はコロナの影響か Globis2020/05/29
国際航空便は壊滅した(9月)
表7 2020年航空輸送統計(前年同月比増減率)%
月 01 02 03 04 05 06 07 08 09
国内航空 +3.5 -2.1 -53.6 -88.2 -93.4 -79.5 -66.9 -70.3 -64.0
国際航空 +3.0 -26.8 -77.3 -97.3 -98.3 -97.8 -97.3 -96.9 -96.7
資料:航空輸送統計速報 人ベース
注:7月分から9月分を追記 2020/12/14
移動の自粛で3割国内輸送量が減った(9月)
表8 2020年鉄道輸送統計(前年同月比増減率)%
月 01 02 03 04 05 06 07 08 09
JR +1.1 +1.1 -19.8 -41.7 -45.4 -31.0 -28.0 -28.2 -26.9
新幹線 +2.0 -10.4 -52.2 -79.4 -78.9 -49.3 -62.5 -64.6 -51.7
民鉄 +2.1 -0.4 -22.8 -47.8 -42.2 -29.8 -28.6 -27.9 -31.9
合計 +1.8 +0.1 -21.7 -45.5 -46.8 -30.3 -28.3 -28.0 -30.1
資料:鉄道輸送統計月報 人ベース
注:7月分から9月分を追記 2020/12/14
表9-1 2020年国内新車販売台数 前年同月比 %
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7 月 8月 累計
乗用車 -11.5 -10.7 -10.9 -28.5 -41.8 -26.6 -19.6 -16.1 -19.5
貨物車 -8.4 -11.2 -11.7 -12.1 -28.8 -21.7 -24.9 -29.3 -18.6
バ ス -10.7 +1.8 -12.3 -21.6 -50.9 -48.0 -37.9 -57.1 -27.4
合 計 -11.1 -10.7 -10.2 -25.5 -40.2 -26.0 -20.4 -18.5 -19.4
資料: 日本自動車販売協会連合会(自販連)車種別販売台数
表9-2 2020年国内新車販売台数 前年同月比 %
9月 10月 11月 12月 2020年通年
乗用車 -16.0 +34.5 +6.4 +8.4 -12.2
貨物車 -12.3 +15.9 +4.0 +4.0 -12.7
バス -46.5 -41.6 -37.3 -37.4 -31.3
合計 -15.6 +31.6 +6.0 +7.4 -12.3
注:12月分を追記 2021/01/14
表10-1 パソコン 国内出荷統計 2020年前年同月増減比%
1月 2月 3月 1-3月 4月 5月 6月 4-6月
DT PC +52.7 -7.5 -23.0 -2.2 -13.9 -54.5 -42.5 -38.7
Note PC +7.8 -25.0 -22.4 -15.1 +11.4 -8.0 +6.4 +3.6
Total +17.4 -20.4 -22.6 -11.8 +5.3 -21.7 -5.5 -7.4
Note比% 72.3 69.5 73.3 72.0 80.2 82.8 85.2 82.8
資料:JEITA 電子情報技術産業協会 台数統計
7月 8月 9月 7-9月 10月 11月
DT PC -54.0 -56.5 -64.7 -59.3 -56.8 -56.0
Note PC -17.4 +17.6 +61.2 +24.4 +26.7 +96.3
Total -26.9 -0.4 +25.7 +2.4 +3.6 +51.5
Note比 83.7 89.4 92.1 89.6 88.4 91.5
注:8月分から11月分を追記 2021/01/13
NotePCが8月以降爆発的に売れている。
オフィス空室率の上昇 newswitch2020/06/17
マンション取引 自粛で4-5割縮小 東洋経済2020/06/20
コロナショックの影響は9月―12月に表面化 TERASS2020/07/22
3. 業種別分析など
先ほど引用した日銀短観から、業種別DIの数字をみると(表11)、コロナ禍で健闘した業種は、非製造業の情報サービス、小売、建設、物品賃貸、対事業サービスなど。逆に大変悪い状況が持続しているものは、製造業の造船機械、非製造業の宿泊飲食サービス、対個人サービスなどである(表11)。
さら各業種で働いている人の給与待遇については業種間の格差のほか、正規か非正規か。大企業か中小企業かでの格差がある。表12-1は平成30年(2018年)民間給与実態調査における一人当たり平均給与(資本金10億円以上と資本金2000万未満の株式会社)のランキング(単位 1000円)。仕事内容には違いがあり、同じ条件の人(職階、学歴や勤務年数)を比較した表ではないので注意が必要だ。
そこで令和元年賃金構造基本調査により、大卒男子年齢区分40-44歳で、勤務先の従業員数1000人以上という条件で、年収ランキングを試みたのが、表12-2である。同じ大卒で大企業でも、400万近い年収差が出ること。年収の低い業種の方が長時間労働であることなどが理解されよう。
コロナショックでの打撃や傷つき方は、業種、企業規模、そして働く人については職階などによりさまざまである。客観的に言えることは、コロナショックで宿泊や飲食サービスに打撃が大きかったとすれば、表12-2から示唆されるように、所得で低い業種である人々にコロナショックは重くのしかかったのである。
航空大手はボーナス半減 newswitch2020/06/19
コロナでダメージ大きい鉄道会社 2020/07/06
コロナ禍で誰の所得が減少したか みずほ2020/07/27
表11 日銀短観DIランキング(大企業分 2019Ⅳ~2020Ⅳ)
業況判断 19 20 20 20 20
業種名 Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ
汎用機械 9 0 -26 -16 0
電気機械 4 -3 -28 -15 -1
化学 2 -6 -19 -19 -5
食料品 10 5 -8 -2 -7
非鉄金属 -15 -26 -39 -36 -9
金属製品 -14 -19 -25 -28 -13
自動車 -11 -17 -72 -61 -13
窯業・土石製品 3 14 -8 -21 -14
業務用機械 0 -6 -28 -18 -15
石油石炭製品 -12 -18 -32 -12 -19
生産用機械 4 -11 -37 -43 -21
紙パルプ 11 4 -33 -26 -23
木材木製品 6 0 -53 -59 -23
鉄鋼 -2 -15 -58 -55 -25
造船機械 -7 -29 -46 -34 -41
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
製造業 0 -8 -34 -27 -10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
情報サービス 44 45 20 22 23
小売 -3 -7 2 18 23
建設 37 36 15 21 17
対事業者サービス 42 35 8 5 13
物品賃貸 19 29 7 -10 3
不動産 35 32 -12 -11 -4
電気ガス 10 3 -22 -13 -12
卸売 7 -7 -27 -24 -16
運輸郵便 17 -7 -43 -38 -24
対個人サービス 25 -6 -70 -65 -43
宿泊飲食サービス 11 -59 -91 -87 -66
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
非製造業 20 8 -17 -12 -5
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
資料:日銀短観概要 注:記載方法改変 2020/12/16
表12-1 業種別一人当たり平均給与(平成30年2018年国税庁調査)
資本金 10億円以上 2000万未満 単位1000円
1. 電気ガス水道業 8,126 -
2. 建設業 7,463 4,034
3. 情報通信業 7,013 5,032
4. 金融保険業 6,609 4,475
5. 製造業 6,603 3,823
6. 不動産、物品賃貸業 5,674 3,925
7. 運輸、郵便業 4,877 3,872
8. 卸売、小売業 3,501 3,139
表12-2 大卒男子年齢40-44歳、従業員規模1000人以上の場合、業種別
年収ランキング(単位:1000円)
所定内 超過 支給 特別 年間給与試算
労働時間 労働時間 給与a 給与b a×12+b
金融、保険 148 14 620.7 2575.0 10023.4
学術研究専門技術 152 12 603.9 2348.5 9595.3
建設 157 23 556.8 2661.0 9342.6
情報通信 151 11 550.6 2303.6 8910.8
製造業 156 16 503.1 2418.7 8455.9
電気ガス熱水道 151 13 608.8 1076.9 8382.5
不動産、物品賃貸 158 14 491.4 2440.9 8337.7
運輸郵便 157 26 485.6 1737.2 7564.4
卸売小売 159 12 471.7 1847.5 7507.9
宿泊飲食サービス 166 15 412.9 1110.6 6065.4
資料:令和元年賃金構造基本調査
4.企業の借入急増と、低失業率・少ない倒産・株価高騰
法人企業全体については法人企業統計(表13)からは、売上の減少、設備投資の抑制、経常利益の大幅減少などが伺える。経常利益は前年同期比28%減少(2020年1-3月期)さらに前年同期比47%減少(2020年4-6月期)に及んでいる。この危機に対応して、企業は設備投資を抑制し、短期借入金を増やし、有価証券を処分し手元現金をたかめるなど、手元流動性を高める対応をとったことが分かる。
次に日銀の貸し出し動向(表14)をみると、とくに2020年4月以降すべての種類の金融機関で貸出の増加が生じている。企業の側では、設備投資の抑制はすでに述べた通りであるが、このほか、自社株買いの抑制、配当支払いの抑制など、を合わせて、手元資金を出来るだけ厚くするように行動した。
これは売上が減少するなかで、固定的に支払いを要するお金を確保する意味があるだろう。このように借り入れ(有利子負債)によって手元資金を確保する状況は、コロナショック前、手元資金が潤沢だといわれていたときと、企業の手元資金の状況が180度変化していることを示している。
融資の金利が負担になるという声に対応して、事業環境の変化により売上高が減少した事業者が軽減利子で貸付を受けられる既存のセーフティネット貸付制度に加えて、コロナショックにより売上高が大幅に減少した事業者を対象に実質無利子・無担保の融資制度が設けられた。(なお制度融資を活用する形で、すなわち都道府県が事後的に利子補給する形で民間金融機関でも実質無利子・無担保融資制度が設けられた。)経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受けられる事業者の皆様へ」
なお借り入れよりもより立ち入った措置としては資産の売却がある。たとえば低稼働率、低収益率の固定資産、土地などを売却する(ここで注目されるのは、政策保有株の処分がこの過程で進んだことである。別の個所で述べているように、株価は2020年秋口以降急速に回復するが、その過程で多くの企業が、政策保有株を売却することで表面上の利益を確保した。なお政策保有株は経営戦略的に意図で長期保有されている株式のこと。いわゆる持合い株はこれに含めることができる。この株価の回復と、企業の決算の糊塗はどこまで仕組まれたことだったのだろうか。仕組まれたことだとすれば大変巧妙だ。)。
またさらに、資本性資金である劣後ローンや劣後債などについても、事業計画などで指導を受けるなどの幾つかの条件付きで、新たな融資制度が設けられた。(日本政策金融公庫など公的金融機関ではこうしたリスク融資に踏み込めるところに、公的金融機関の存在意義を求めようとしている。その資金源は財政資金の貸付。財政資金自体は国債の一種である財投債の発行により調達される。)
また劣後債や劣後ローンは借入であるので、返済の問題がある。この点で一歩踏み込んだものに返済期限のない、永久劣後ローンあるいは永久劣後債、さらに根本的には新株予約権の発行や増資の問題がある。ただし後者の方が、コストはさらに高くなる。
政府は企業の倒産、失業者の増加などを防ぐための措置の一つとして雇用調整助成金の受付と支給を2020年5月から始めた。これはコロナショックにより従業員に休業を求めて、休業手当を支給する企業に助成金を支給するもの。申請件数と支給額の累積は表16のようになっている。
失業や倒産を抑えるという点では、一連の政策は成功しており、7月段階で失業率2.9%, 失業者197万にとどまった。その後、失業は増えたが激増というほどではない(表17)。社会全体では人口減少のもと、人手不足が続いているとみてよい。人口減少期に入っていることが不況による雇用問題の深刻化を防いでいるとみてよいのではないか。
他方では、非正規労働者について2月との比較で148万の雇用の減少が生じており、有効求人倍率は全国で3割前後低下し、1を切る都道府県も6月には10以上を数えるようになった(表18)。
こうした融資制度の拡充、雇用調整助成金などの支給により、多くの中小企業が、息を継ぐことができたと思われる。心配された倒産件数は、異常なまでに低い件数に抑えられている。12月に至るまで倒産件数、負債金額ともに前年比大幅減に抑え込まれている(表19 表20)。しかしこの小康状態が果たして持続できるものか。懸念は極めて大きい。
ところで、株価の高騰、不動産市場の活況が続いている。経済の悪化を防ぐために進められている、異例の金融緩和措置が、資産価格の高騰、活況を支えている。この持続可能性に疑いがでている。
表13 2020年法人企業統計 対前年同期比
1-3月期 4-6月期 7-9月期
確報値
07/21 09/01 12/01
売上高 -7.5% -17.7% -11.5%
製造業 -5.5% -20.0% -13.2%
非製造業 -8.3% -16.8% -10.8%
設備投資 -0.1% -11.3% -10.6%
製造業 -5.3% -9.7% -10.3%
非製造業 2.9% -12.1% -10.8%
経常利益 -28.4% -46.6% -28.4%
製造業 -25.3% -48.7% -27.1%
非製造業 -29.6% -45.5% -29.1%
2020/1-3 売上高8%減 経常利益3割減 設備投資維持
2020/4-6 売上高2割減 経常利益半減 設備投資1割減
2020/7-9 売上高1割減 経常利益3割減 設備投資1割減
短期借入金 6.6% 20.8% 11.8%
長期借入金 -4.3% 3.6% 7.9%
現預金 -0.9% 11.2% 10.8%
有価証券 -6.7% -22.4% -9.1%
手元流動性 15.6% 20.1% 19.1%
2020/1-3 短借7%増 長借4%減 現預金1%減 有証7%減 手元16%
2020/4-6 短借21%増 長借4%増 現預金11%増 有証22%減 手元20%
2020/7-9 短借12%増 長借8%増 現預金11%増 有証9%減 手元19%
注:7-9月期を追記 2020/12/15
表14 貸出動向(速報) 2020年総貸出平残前年比増率 %
前年同月比 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月12月
都銀 1.6 2.1 2.0 3.4 6.6 8.7 7.9 8.0 7.3 6.6 6.9 7.1
地銀・地銀Ⅱ 2.4 2.4 2.4 2.9 3.7 4.7 5.2 5.4 5.3 5.2 5.2 5.0
銀行等 2.0 2.2 2.2 3.1 5.1 6.6 6.4 6.6 6.2 5.9 5.9 5.9
信金 1.0 1.0 1.0 1.6 2.7 4.5 6.2 7.3 7.8 8.0 8.3 8.3
銀行・信金 1.9 2.1 2.0 2.9 4.8 6.3 6.4 6.7 6.4 6.1 6.2 6.2
資料:日本銀行HP 9月分から12月まで追記 2021/01/13
すべての業態で年初から年央に向けて増率の伸びがみられる
零細企業向け貸出が主の信金はとくに伸びが高い。
協調融資契約が急増。3月の残高は39兆2948億円で前年同月比14%増。4月残高は42兆1400億円で同20%増とされる。
コロナ危機で自社株買い減少 Morningstar2020/04/04
大手企業でコミライン要請増加 NRI2020/04/13
銀行融資枠の説明 shikinpro2020/06その/23
経済団体連合会 大企業などの資金繰り対策に関する要望 2020/05/14
日本商工会議所 中小・小規模事業者の事業継続に向けた緊急要望 2020/05/19
帝国DB調査 設備投資計画ある企業大幅減少 Response2020/05/25
財務省 2次補正予算 コロナ感染症対策 資本性劣後ローン制度の創設 2020/05/27
従来の資本性劣後ローン制度に加えて コロナ感染症対策特別貸付制度としての資本性劣後ローン制度が新設された。
上場企業 コロナウイルス影響調査(2020年6月24日時点)TSR
財務省 事業者の皆さんへ 資金繰り対策と国税猶予 2020/08/03
政府 雇用調整助成金特例措置の年末までの延長を決定 2020/08/04
開銀発表 大企業設備投資計画9年ぶりにマイナス 開銀2020/08/05
日本商工会議所 雇用調整助成金の特例措置の延長に関する緊急要望2020/08/07
表15 新型コロナ感染症に関する事案実績(融資)
(商工組合中央金庫)
件数 貸付額 1件当たり金額
2020/04 2,286件 1,476億円 6,457万円
2020/05 6,768 4,143 6,121
2020/06 7,247 4,249 5,863
2020/07 5,074 3,663 7,219
2020/08 2,796 2,026 7,246
2020/09 2,535 1,957 7,720
2020/10 1,651 1,301 7,880
2020/11 1,412 1,105 7,826
累積 29,770 19,924 6,692 資料:中小企業庁HP 1件当たり金額は端数四捨五入表記
注:2020/11分まで追記 2021/01/12
表16 雇用調整助成金実績
累積支給決定件数 累積支給決定額 1件当たり金額
2020/05/29 35,366件 183.68億円 52万円
2020/06/26 179,452 1,362.51 76
2020/07/31 548,462 5,851.77 107
2020/08/28 866,232 10,914.55 126
2020/09/25 1,208,011 15,265.58 126
2020/10/30 1,675,695 20,359.26 122
2020/11/27 1,928,491 22,965.63 119
2020/12/25 2,169,616 25,093.18 116
資料:厚生労働省HP 1件当たり金額は端数四捨五入表記
注:2020/12/25分まで追記 2021/01/12
失業率3%台 失業者200万台に突入(8月-10月)
表17 2020年失業率 失業者 就業者などの推移 万人
失業率 失業者 就業者 ① ② 正規 非正規 非労働力
2020年1月 2.4% 159 6687 628 6017 3516 2149 4233
2020年2月 2.4 159 6691 626 6026 3530 2159 4225
2020年3月 2.5 176 6700 650 6009 3506 2150 4198
2020年4月 2.6 189 6628 662 5923 3563 2019 4253
2020年5月 2.9 198 6656 695 5920 3534 2045 4221
2020年6月 2.8 195 6670 694 5924 3561 2044 4210
2020年7月 2.9 197 6655 670 5942 3554 2011 4224
2020年8月 3.0 206 6676 693 5946 3535 2070 4118
2020年9月 3.0 210 6689 694 5961 3529 2079 4179
2020年10月 3.1 215 6694 671 5998 3535 2111 4159
2020年11月 2.9 195 6707 660 6017 3547 2142 4165
① 自営業者・家族従業員など
② 雇用者人口
資料:労働力基本調査 2020年11月分を追記 2021/01/13
10以上の都道府県で有効求人倍率1未満が続いている(6月以降)
表18 失業率と有効求人倍率(季節調整済)の推移
失業率 有効求人 東京 沖縄 神奈川 1未満の
倍率 都道府県数
2020年1月 2.4 1.49 1.96 1.11 1.08 0
2020年2月 2.4 1.45 1.96 1.11 1.06 0
2020年3月 2.5 1.39 1.87 1.06 1.07 0
2020年4月 2.6 1.32 1.73 0.91 1.03 1
2020年5月 2.9 1.20 1.55 0.78 0.95 7
2020年6月 2.8 1.11 1.35 0.68 0.85 10
2020年7月 2.9 1.08 1.29 0.67 0.79 14
2020年8月 3.0 1.04 1.22 0.67 0.75 16
2020年9月 3.0 1.03 1.19 0.64 0.74 14
2020年10月 3.1 1.04 1.19 0.66 0.75 14
2020年11月 2.9 1.06 1.19 0.71 0.75 15
注:2020年11月までを書き加えた 2021/01/13
倒産件数、負債総額とも前年比減続く(8月-12月)
表19 2020年東京商工リサーチTSR倒産統計
(全国 負債総額1000万以上の集計 金額単位:億円)
件数 前年同月比 負債総額 前年同月比
2020年1月 773 16.06% 1247.34 -25.91%
2020年2月 651 10.71 712.83 -63.44
2020年3月 740 11.78 1059.43 9.09
2020年4月 743 15.19 1449.90 35.61
2020年5月 314 -54.82 813.36 -24.31
2020年6月 780 6.26 1288.16 48.13
2020年7月 789 -1.62 1008.21 7.94
2020年8月 667 -1.62 724.16 -16.90
2020年9月 565 -19.51 707.40 -37.38
2020年10月 624 -20.00 783.42 -11.55
2020年11月 569 -21.73 1021.01 -16.61
2020年12月 558 -20.73 1385.18 -11.69
倒産件数、負債総額とも前年比減続く(8月-12月)
表20 2020年帝国データバンクTDB倒産統計 金額単位:億円
(全国 負債総額1000万以上 法的整理が対象 任意整理含まず)
件数 前年同月比 負債総額 前年同月比
2020年1月 713 2.7% 1172.50 -32.0%
2020年2月 634 2.3 663.74 -69.6
2020年3月 744 14.3 890.19 15.7
2020年4月 758 16.4 1046.64 54.3
2020年5月 288 -55.6 711.31 -37.6
2020年6月 806 9.8 1264.38 57.3
2020年7月 847 8.2 1048.01 14.3
2020年8月 655 -2.1 694.17 -17.1
2020年9月 602 -12.4 679.96 -35.8
2020年10月 647 -17.6 669.48 -26.5
2020年11月 563 -22.2 957.12 -27.2
2020年12月 552 -22.0 1450.03 -22.0
注:表19と表20 12月分追記 2021/01/13注記
表21 2020年株価水準は回復した:日経平均の場合
終値 安値 高値
2020年1月 23,205.18 22,892.85 24,115.96
2月 21,142.96 20,916.40 23,995.37
3月 23,205.18 16,358.19 21,719.78
4月 20,193.69 17,646.50 20,365.89
5月 21,877.89 19,448.93 21,955.44
6月 22,288.14 21,529.83 23,185.85
7月 21,710.00 21,710.00 22,965.56
8月 23,139.76 21,919.83 23,431.04
9月 23,185.12 22,878.71 23,622.74
10月 22,977.13 22,948.47 23,725.58
11月 26,433.62 23,096.79 26,834.20
12月 27,444.17 26,327.08 27,602.52
12月の終値は前月までの各月の高値をすべて上回り株価は回復した。
表22 2020年首都圏新規マンション販売戸数
新規販売戸数* 契約率 平均価格 在庫
(前年同月) 万円 戸数
2020年1月 1,245( 1,900) 63.0% 8,360 8,688
2020年2月 1,488( 2,313) 59.3% 6,536 8,166
2020年3月 2,142( 3,337) 70.0% 6,156 7,888
2020年4月 686( 1,421) 68.6% 6,216 7,795
2020年5月 393( 2,206) 72.3% 6,485 7,773
2020年6月 1,543( 2,259) 73.2% 6,389 7,289
2020年7月 2,083( 1,932) 62.4% 6,124 7,250
2020年8月 1,669( 1,819) 68.5% 6,011 6,858
2020年9月 2,477( 2,359) 73.4% 5,812 6,449
2020年10月 3,358( 2,007) 70.4% 6,130 6,468
注:9月分10月分を追記した。2020/12/13 資料:不動産経済研究所
契約率7割keep 在庫減少続き、首都圏の不動産取引は活発(9-10月)
なお1-10月新規販売戸数累積は、2019年21,653戸に対して2020年17,084戸。これはちょうど21.1%の減少である。不動産取引活発化には、供給が減少し、需給が引き締まった影響も考えられる。
まとめ:未来への期待
すでに日本政府(右寄りと言われた自民党政権)が行っている政策は、たとえば広く給付を行ったり、企業の雇用の維持に政府が自身の責任を認め助成金を支給すると言った行為は、コロナ対策は国の責任であることを認めた政策。それがほぼ異論なく採用された。
それは、社会の運営にこれまでとは異なった原理を取り込んだことを意味している。それは誰かを切り捨てることをしないという原理ではないだろうか。誰も落後しない社会は、一見夢のようで、市場主義の人たちは競争力が失われると、反発するだろうが、社会を運営する原理として、落ちこぼれる人を生まない社会が感染病対策上も(民主主義社会の政治力学上も)必要になっている。
社会全体の生産力は、すでに高い水準にある。(資本主義社会について)なぜ過剰があるときに飢える人を生まなくてはいけないのかという疑問は、これまでもあった。ただ市場主義と言われる人たちは、競争原理が失われるとして、競争に敗れた人たちの救済に反対していた。
コロナショックという衝撃のなかで毎日政策論議が重ねられた(国会が早々と閉じられたことに批判は強いが言論はオープンであった)。日本社会は、オープンな言論による社会的合意によって、政策を決定する社会実験を行ったように思える(繰り返すが政策の議論はテレビ番組やネットではなく、国会という場で論戦があるべきだという主張はある)。
コロナショックでは、デジタル化が、社会的に一挙に広がり、未来社会が垣間見えた。たとえば、遠隔通信によって、通勤や通学、通院のわずらわしさから解放されることが、コロナショックによって広く経験として共有された。
デジタル化によって、通勤の呪縛や、さらには企業や学校という特定の集団に属することからさえ、人々は解放されるのかもしれない。これまでの属する集団に価値を置いた生活から、個人を主体としたものに人間の生活が大きく変わる可能性をデジタル化は示したのかもしれない。多くの人がコロナショックのなかで、日本社会が遂げている変質、そしてデジタル化が開く未来社会に、一瞬夢を感じたのではないだろうか。
中野剛志 自然災害と財政問題は分けよ 東洋経済2018/08/01
お金を供給するヘリコプターマネー 産経2020/04/07
健全財政論の打破を 東洋経済2020/05/16
日本IT団体連盟 デジタル化推進のための提言 2020/05/18
緊急経済対策の間違い 東洋経済2020/06/09
岡本英男 財政赤字を恐れるな エコノミスト2020/06/22
社会的システム・デジタル化研究会「社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言」2020/06/25
政府の成長戦略案 Sankeibiz2020/07/06
補論 貿易関係から見る米中日韓の立ち位置の違い
2020年日本の輸出入統計 前年同月比増減率 % 差額は億円
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
輸出 -2.6 -1.0 -11.1 -21.9 -28.3 -26.2 -19.2 -14.8 -4.9 -0.2
輸入 -3.6 -13.9 -5.0 -7.1 -26.1 -14.4 -22.3 -20.7 -17.4 -13.3
差額 -13,151 +11,066 +72 -9,312 -8,413 -2,729 +70 +2,443 +6,837 +8,717
注:8月分から10月分(確報)追記 2020/12/14
輸出額の回復、輸入額の減少により貿易収支改善(4月から10月)
2018年輸出先国別ランキング 単位 10億円
輸送用 一般 電気 原料別
機器 機械 機器 製品
中国 15,898( 19.5%) 1,538 3,885 3,400 1,817
アメリカ 15,470( 19.0%) 5,971 3,492 2,121 983
EU 9,209( 11.3%) 2,383 2,215 2,383 597
韓国 5,793( 7.1%) 164 1,306 922 834
台湾 4,679( 5.7%) 342 775 1,154 664
香港 3,832( 4.7%) 144 284 1,333 251
タイ 3,562( 4.4%) 372 749 719 899
シンガポール 2,584( 3.2%) 287 376 498 162
オーストラリア 1,886( 2.3%) 895 195 58 110
ベトナム 1,814( 2.2%) 84 310 479 420
小計 81,479 18,877 16,508 14,142 9,136
2018年輸入先国別ランキング 単位 10億円
鉱物性 電気 化学 原料別
燃料 機器 製品 製品
中国 19,194(23.2%) 163 5,572 1,292 2,271
EU 9,718(11.8%) 60 853 2,776 615
アメリカ 9,015(10.9%) 1,069 1,083 1,449 407
オーストラリア 5,053( 6.1%) 3,483 4.9 45 253
サウジアラビア 3,733( 4.5%) 3,599 0.0 82 28
韓国 3,550( 4.3%) 552 554 560 725
アラブ首長国連邦 3,046( 3.7%) 2,942 0.3 2.6 86
台湾 2,998( 3.6%) 2.9 1,391 325 329
タイ 2,771( 3.4%) 18 685 304 295
インドネシア 2,379( 2.9%) 717 189 98 309
小計 82,703 19,294 12,338 8,550 7,459
資料:総務省統計局『日本の統計2020』pp.62-63
中国の貿易における日米韓 単位100万米ドル % 2018年
中国は対米で強く出れない関係にある。
対米 対韓 対日
輸出総額 2,494,230 479,702a 19.2 109,029 4.4 147,235 5.9
輸入総額 2,134,983 156,004a 7.3 204,566 9.6 80,566 8.4
アメリカの貿易における日中韓 単位100万米ドル % 2018年
アメリカは日中韓いずれにも輸出を増やす必要がある。
対中 対日 対韓
輸出総額 1,665,303 120,148 7.2 75,226 4.5 48,350 2.9
輸入総額 2,611,432 563,203 21.6 145,902 5.6 73,420 2.8
(輸出面ではカナダやメキシコが対中よりは太い関係にある)
日本の貿易における米中韓 単位100万米ドル % 2018年
日本は中国、米国いずれとも融和が必要である。
対中 対米 対韓
輸出総額 738,201 144,053 19.5 140,664a 19.1 52,482 7.1
輸入総額 748,218 173,612 23.2 83,571a 11.2 32,112 4.3
韓国の貿易における日米中 単位100万米ドル % 2018年
韓国は中国の経済圏に入っている。
対中 対米 対日
輸出総額 604,807 162,125 26.8 73,044a 12.1 30,527 5.0
輸入総額 535,183 106,488 19.9 59,081a 11.0 54,603 10.2
資料:総務省統計局『世界の統計2020』pp.173-175
a プエルトリコ及び米領バージン諸島含む
→ コロナ危機後の日本の社会・経済 Japanese Economy and Society after COVID-19 crisis