恐慌に至る間違った決定をなぜかくも多くの人がしたのか NBERWP 2012 要旨
Christopher L.Foote et.al., Why did so many people make so many ex.post bad decisions? NBER WP18082 May 2012 閲覧2022年10月13日
要旨 われわれはモーゲージ恐慌についての12の事実を提供する。これらの事実は、恐慌は金融産業のインサイダーが、知識がないモーゲージの借り手と投資家を欺いた結果だという人気のあるお話しが正しくないことを証明している。むしろ、われわれは借り手と投資家は、住宅価格について事後的には過度に楽観的だった信念のもとで、合理的かつ論理的な決定を行ったことを論じる。それからわれわれは、モーゲージ市場の制度的特徴あるいは金融革新のいずれもが、400年前のオランダのチューリップ恐慌を説明する誤った信念と変わらないことを論じる。経済学者は、資産価格バブルについての理解の限界を認識して、政策をデザインすべきである。
本文3節(経済理論と事実)冒頭
われわれの12の事実はより高い価格への期待が、住宅ブームの間、なぜ信用が拡張したかについての根本的説明であることを一貫して指摘している。第3節でわれわれは、このより高い(価格への)期待を何が生み出しえたかを問題にする。情報の非対称性の議論は、モーゲージの作り手(貸し手)は適切に貸付を選別することに失敗し、それら(モーゲージ)をモーゲージ担保投資をする疑わない投資家に渡したのだと論じている。われわれの事実のいくつかは、この説明の考え方への直接の反論になる。この節では、情報の非対称性に基づく説明が理論的にも根拠がないことを示そう。説明の第二のグループは、金融革新に関係するモーゲージ市場の発展が、信用の拡張と価格の上昇を許したと論じている。われわれは(3節で)、このような説明がまた理論的にも実証的にも問題があることを示そう。最後にわれわれはただ一組の理論が残されることを論じる。この理論は、合衆国住宅市場が、チューリップ(恐慌)や(ハイ)テク株バブルとまさに同様の、古典的資産バブルだったと主張するものである。(中略)
本文最後尾
最後に、初めて住宅を買う人からウオルストリートのCEOsに至るまですべての人は、資産価格がわれわれがまだ理解していない方向に動くことを認識すべきだ。残念なことに、規制機関が提案した新たなモーゲージ開示形式はいずれも、借り手が知る必要上がある決定的情報-彼らが買おうとしている家の価値が間もなくモーゲージの残高より少なくなることがありうることーを含んでいなかった。(中略ー解釈不能な一文を外すー)
批評家は、バブルをあたかも地震のように扱うことで、つまりアラン・グリーンスパンに関連付けられる教義―政策担当者は簡単には理解できないバブルを止めようとすべきではない、むしろバブルが爆発したそのあとに残される損失の始末をするべきだーを思い出すことで満足かもしれない。或る程度、われわれはこの教義に同意する。というのは、政策担当者と規制者とにリアルタイムでバブルを認識あるいは爆発させる能力はほぼないからだ。しかしこの戦略は、金融制度がマイナスのショックに耐えられるときにのみ有効だ。
先に述べたように1930年代の改革は1990年代後半の株式市場のバブル形成を防ぐことに失敗した。しかし2000年代初頭の株式市場の崩壊は、経済恐慌あるいは家計の間の広汎な金融問題を導かなかった。なぜか?一つの可能な説明は、1930年代の改革が金融制度を少なくとも株式について「バブル耐性」にしたことである。われわれの希望は、われわれが何か同じことを、将来、住宅について達成できることである。しかしそれが生じるには、住宅政策は事実に基づくべきである。