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陥没事故 sinkhole

 2025年1月28日に埼玉県八潮市で発生した、流域下水道腐食による道路陥没事故は、下水道管の老朽化による今後の事故再発の可能性に警鐘を鳴らした形。当初の穴の大きさ直径10m、深さ5mとされた。しかしその大きさは1月30日未明までに最大幅40m、深さ15mに拡大した。
    専門家の間では下水道の老朽化を原因とする道路陥没の拡大はかねて指摘されていた問題ではある。また流域下水道という巨大な下水道が地下に張り巡らされる結果、事故が起きた場合の規模もまた、大きくなることが今回の事件では浮彫になった。1960年代半ばから流域下水道政策が進められてきたが、今回のような大事故が起きると、改めて流域下水道政策の妥当性にも焦点が当たっているようにも感じる。
 橋本淳司 下水道の現在地 下水道事業が自治体経営を窮地に追い込む 2023/09/07 橋本さんは人口密集地以外では個別処理方式に戻して、下水道の維持コストを下げないと下水道が地方財政の破綻要因になると指摘している。; また今回は腐食によるコンクリート管の破損が問題になっているが、実は道路陥没の原因としては、管同士あるいは継手の接合不良、埋戻土の沈下など施工上の問題が原因であることも少なくない。
 ただ原因がわかっても、一般の私たちは、下水道や道路の管理者の地道な点検作業と誠実さとを期待して見守るしかないのが、歯がゆいところだ。 

 ところで道路陥没事故として、近年記憶に新しい事故が3つ。しかしいずれも下水道の老朽化ではなく、地下で新たな工事を進めたことが原因で起きている。こうした事例から判明するのは、地下に穴を掘る工事が、地盤の状態を不安定化するリスクがあるということだ。
 ひとつは2016年11月8日に起きた博多駅前の道路陥没事故。これは市営地下鉄の延伸工事を原因として起きたとされる。陥没の規模は幅27m、長さ30m、深さ15mに達した。様々な対策は取られていたものの、結果としては、地盤の弱いところからの崩落を防ぐことができなかった。ただこの事故では、人身事故を防ぐことができ、1週間という短期間で、修復を完了している。
 そして2020年10月18日に起きた調布市生活道路陥没事故。陥没の規模は5m×3m、深さ6m。これは47m地下で進められた東京外郭環状道路のシールド工法工事の影響が指摘されている。この事故は、地中深くでやれば、地表に影響しないという建前が崩れたことが衝撃を与えた。
   cf.外環道に破壊された町 調布市東つつじが丘 Note 境治 2025/01/16 
 さらに2024年9月26日に発生した広島市の下水道工事による道路陥没事故。30m×40mで2mの深さの陥没が生じた。周辺の建物にも影響が及び周辺半径50mの27棟の建物のうち9棟が倒壊の可能性があるとして取り壊されることになった。軟弱地盤に適したシールド工法で工事が進められる中で、生じた事故であった。事故原因についての報告書はまでだされておらず、調査中だが、本来泥水などが入らないはずの、シールド工法のトンネル内に泥水が流入していたことが、判明している。
   cf.広島陥没事故 原因究明へ検討委始まる Note 三島康生 2024/12/11

 そして時々報道で表面化しているのは、リニア新幹線工事に関するもの。怖いのは、どこまで詳細が公開され、工事の中断・再開が報道されているのか。正直、工事をしている側の発表を信じるしかないことだ。報道で確認できるのは2024年10月、東京町田の民家で地下からの気泡が確認されたこと。前後して岐阜県でリニア新幹線工事に関係する地盤沈下が明らかにされたこと。東京外郭環状道路の工事再開・中断についても、断片的に報道が続いている。果たして詳細はすべて報道されているのだろうか。
   cf. リニア工事現場付近で地盤沈下進む Philolene's Channel 2024/10/31

 


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福光 寛  中国経済思想摘記
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