ウクライナオンファイア Ukraine on Fire
標題は、2016年に作成されたドキュメンタリー映画。Youtubeで検索して鑑賞できるが、いざ見ようとすると、繰り返し「年齢制限」とか「この映画はあなたに合わないかもしれない」とか「あなたに好ましくない映像が含まれているかもしれない」といった警告が出てくる。この度重なる警告を超えると、映像にたどり着ける。
あまりに警告が多いので、Youtube社としては見せたくないのかなと感じた。制作には著名な監督オリヴァー・ストーンが加わっている。この映画は、確かに焼け焦げた人体など子供に適さない映像があるが、この映画を見せたくないのは、プーチンやロシアがともかく悪いという人から見ると不愉快な内容を含むからかもしれないと勝手に邪推した。
そのように疑う理由は、この映画が、ウクライナ民族主義が、ネオナチにつながっていることを示しているという点にある。ただそれが複雑な歴史の結果だということもきちんと示している。第二次大戦前、ソ連の支配下に置かれたウクライナをナチスドイツが占領すると、ウクライナにはナチスをソ連からの解放者として迎える人たちも少なくなかった。歴史の結果として、ウクライナ民族主義とナチズム、そして反共(反ロシア)が結びついて今日に至っていることを映画は描いている。
そのほか、この映画を見てよく描けていると感じた点は、2014年2月の政変について、ロシアの人たちがあれはクーデター(coup d'Etat:武力による非合法な政権奪取)だということがあるが、その理由の部分である。この時、ヤヌコービッチという親ロシア派の大統領が、任期の途中で、キエフ(キーウ)で生じた騒乱の中でキエフを抜け出したことで、大統領交代劇が生じたのだが、ポイントは、ヤヌコービッチが選挙で正当に選ばれた大統領だったということ。右派の民族主義者や民主派が、政府の庁舎などを武装して占拠し、話し合いを拒否して、「革命」に至った。それを肯定的に言えば「革命」になり、否定的に言えば「クーデター」になる。映画は、選挙で選ばれた政権を力づくで倒すのは、民主主義に反する不当な行為ではなかったのかと、訴えている。
また、アメリカ政府が、「民主勢力」や「民族主義者」「民主派の報道機関」に資金面などで支援したことが数々の証拠映像で暴かれる。そしてこの支援対象には、ネオナチの流れを組む民族主義者が含まれていた。「クーデター」での鉄棒や銃での武装による暴力行為は、この集団が先導した。他方、ヤヌコービッチはIMFとの資金交渉で厳しい条件を課されたことから、ロシアとの交渉に希望を託さざるを得なかった、と弁明している。曖昧さが残るのは、「民主派」の暴力行為と警察による暴力的取締りとの関係である。「民族主義者」を含む「民主派」は、政権の退陣そのものを目的にして、妥協を拒否するようになった。アメリカ政府がどこまで指導したかは不明だが、「民主派」を資金的に支援したことは、明らかにクーデター支持だった。選挙で民主的に選ばれた他国の政権を倒す行為ーそれは正しい行為だったのだろうか、という問いをこの映画は発している。
またこの映画は、馬淵睦夫さんなども議論している2014年5月の「オデッサの虐殺」についても、衝撃的な映像を出している。ウクライナ全国から、オデッサに暴力的な民族主義者が集結。逃げることができないように包囲したうえで、労働組合会館に放火。多数の焼死者が出した事件。正直に言えば、ウクライナ民族主義の狂気を示した事件だ。
2014年7月のマレーシア航空機撃墜事件について、当時、オバマ大統領は直ぐに親ロ派によるミサイルによる撃墜の可能性に言及、ロシア制裁を強化したのだが、映画は歴史の中で消えてしまったロシア側の反論を記録している。それによると調査の結果、ミサイルはアメリカ製のものの可能性が高く、発射地点はウクライナ軍支配地域からの可能性が高いとのこと。確かにこれはロシア側の主張であり、真偽はわからないが、ロシアの反論は反論として記憶しておきたい。
見出しは菊坂下で見つけた皐月。道路の反対側がさらに見事だったが、撮影している人がいたので遠慮して、そこそこの群生を撮った(2022年4月22日)。以下は播磨坂下で出会った「ナニワイバラ」(2022年4月21日)。