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皇居外苑の楠木正成像

 上野で西郷隆盛像(明治31年1898年12月除幕)に出会ったあと、皇居外苑にある楠木正成像を見たくなった。楠木正成(1294-1336)は南朝の後醍醐天皇(1288-1339)に忠誠をつくしたことが知られる。その意味で、皇居を守る意味で楠木正成像をここに設置したとみるのが自然だ。今にも走り出そうとする馬の手綱を強く引く、兜で身を固めた武人の姿は勇壮である。
    なおこの馬の姿を、上野の山の小松宮彰仁親王像(明治45年1912年建立)の馬の様子とぜひ比較してほしい。正成像の馬の緊迫した様子は、これが武人正成がまさに戦地に赴く瞬間であることを伺わせる。なお後醍醐天皇を迎える姿との説明も読んだが、私の見方ではこれは、戦場に赴く装いだ。
    この像の制作過程の説明は、住友グループ広報委員会「楠木正成像」に詳しい。これによると、この像は、住友銅山開坑200周年事業として、住友から宮内庁に献納されたもの。献納は明治33年1900年7月とされる。制作にあたったのは、東京美術学校の人たちで、人物の頭部は高村光雲、馬を後藤貞行、そのほか木彫科の人々が木彫の型を作った。鋳造は岡崎雪聲(せっせい)が初めて分解鋳造を行った。
 なお上野の西郷隆盛像も、制作に高村光雲、後藤貞行、鋳造に岡崎雪聲の名前が挙がる。つまり、二つの像はともに東京美術学校(現東京芸術大学)の人たちが心血を注いだ成果である。このような像の制作は、起案―調査ー試作―完成まで長年月を要するもの。二つの像の制作が並行していた時期があったと思えることが興味深い。もちろん順番は西郷隆盛像、それから楠木正成像である。
    アクセス 都営地下鉄三田線日比谷よりB6出口。馬場先門からすぐ。
   


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福光 寛  中国経済思想摘記
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