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相互上場か合併か

 香港取引所(HKEX 香港政府が株式の6%弱を支配 2012年にロンドン金属取引所を買収)によるロンドン証券取引所(LSE)合併の話が突然でて(2019年を9月9日提案 9月11日公表 296億ポンドで全株取得 ただし対価の過半は香港取引所株)、LSEにより実に簡単に拒絶された(11日「暫定的なものだが検討する」13日取締役会が全会一致で拒否決める)。
 出てきている論点は二つあって、一つは取引所は、情報戦略が重要だという点。日本では日本取引所グループJPXが、4期連続赤字会社の東京商品取引所を完全子会社にして統合する総合取引所構想が2020年度実現を目指して進められている。事実上の救済合併。ただ監督官庁である金融庁も経済産商業も東商取の赤字の責任を明確にするつもりはなく、4期連続赤字会社の東商取自身はエネルギー関連の商品の上場を急ぐことで自身の将来になお強気であるようだ。この構想も、商品関連の情報も扱う市場を作るという点で、国際的な情報戦略強化の流れに即してはいる。
  9月9日に香港取引所に突然合併を申し込まれたLSE(情報サービスの収入が4割 NYSEを傘下にもつインターコンチネンタルICEは5割 JPXは2割弱で情報サービスに提供で国際的に劣後)は8月1日に情報会社リフィニティホールディングスを270億ドルで買収する方針を発表したばかりだった。高速度取引HFTなど自動取引、指数に連動したパッシブ取引の増加などから、取引所の情報やライセンスが価値を生むようになっている。情報をうることで、出来高に依存しない、サブスクリプション型の収入が入ることは、出来高で収入が変動しがちな取引所には魅力とされ、世界の取引所は、情報戦略を強化する方向にある。
 他方、取引所の合併は、取引所をめぐるさまざまな規制の存在により実現可能性のリスクが大きいことが知られるようになっている。香港取引所は今回、規模を拡大した巨大統合市場を目指したといえるが、香港で民主化を求めるデモが続いて、緊張が高まっているなか、その実現可能性はそもそも低かったように見える。取引所の国際的合併については、各国における市場規制・法規制に違いがあることや統合に関して政治からの介入を受けやすいことなどから、容易でないことが理解されている。香港に関しては経済活動の自由度に今まさに懸念が高まっている。なお2017年LSEとドイツ取引所の合併が独占への懸念から破談したことも記憶に新しい。
 もう一つは対中国戦略において、香港をどう考えるかである。ロンドンは香港でなく上海を対中国への窓口として取ったとされる。しかしそれは言い過ぎかもしれないが、対中国戦略について、LSEが最近(2019年6月)、上海の証券取引所との間で相互上場(cross-listing 交叉挂牌)制度を開始済というタイミングが問題で、さらに重ねて中国市場との連携を急ぐ必要を感じていなかったとみられる。ところで相互上場を可能にしたのはロンドンと上海の両取引所の連携―協定である。合併に至らなくても、連携―協定は、合併と似た効果を与えることができる。相互上場はその一例だといえる。
 なおLSEー上海の相互上場の仕組みはたとえば上海に上場している株式と同じ価値をもつ預託証券、これをロンドン取引所でも上場するというもの。(日本取引所JPXも上海取引所と6月25日に相互上場をスタートさせたが、これは指数連動型上場投信ETFの相互上場である。説明によると、日本と中国で価格差が生まれた場合は、裁定取引が入ることで相場の連動性は維持されるとのこと。ETF相互上場の先行例としては、2015年9月にJPXと台湾取引所との間で協定が結ばれた株式指数連動型投資信託の相互上場がある。このように相互上場については、預託証券を使うものとETFを使うものがあり、ロンドンのものは預託証券型である。)相互上場については、それぞれの市場へのアクセスとなり、それぞれのマネーを取り入れる効果、市場の流動性を高めるプラスの効果が知られる。しかし株式の相互上場については、とくにガバナンスに係るコストの点で否定的な意見が大きい。今後、それぞれの相互上場取引が発展するかどうか、資金フローにどのような影響がでるかは注目されてよい。
   ⇒ 取引所改革2019年3月16日

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福光 寛  中国経済思想摘記
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