鄧子恢 人民公社問題意見書 1962/05/24
干預當前農村人民公社若干政策問題的意見(1962年5月24日)這是鄧子恢寫給中央和毛澤東的報告。鄧子恢文集 人民出版社1996年 pp.587-599の要旨。鄧子恢(1896-1972)が、農民の小自由を、堂々と説いているところは、この当時の政治環境(こうした小自由に批判的だった毛沢東(1893-1976)をけん制できる人が党中央にいない状態)を考えると勇気のある人だと感じる(写真は湯島聖堂の遠景)。
p.587 最初に人民公社制度は基本は安定しているが、自然災害もあり農民の生産積極性が十分発揮されていらず、集団生産がなお本当にはうまくはおこなわていない。そのため全国各地で単独経営(單幹)現象がみられる。全体では百分の20前後。県によっては総戸数の60%以上。有効な措置がとられなければ、さらに単独経営現象が広がり、人民公社制度の基礎に影響するかもしれないとしている。
p.588-589 一 所有制問題について
集団所有制と社員小私有が保証されたはずだが多くの混乱がみられるとしている。人民公社や生産隊(社隊)の土地が、ほかの組織(機関、企業、部隊、農場、学校)に占有されて返還されない問題。公社間、生産隊間でも土地の帰属をめぐり争いがある。この原因として人民公社の集団所有制がなお安定せず、農民が党の政策に不信をもち、一部では農民はただ自留地を耕すことがみられるとしている。
また各クラスの幹部が不断革命論にとらわれて、革命発展段階論を知らず、平均主義を振りかざすことが、農民の生産性にとってかえって障害になっているとしている。
所有制については、行政機関の布告などにより、人民公社や生産隊(社隊)の土地の所有権の保護をはかり、ほかの組織が占有している土地は返却させること、将来的には法律を制定して、所有制に法的な裏付けを主張している。(ここは人民公社制度自体が、所有制度として安定していなかったことと、所有制度は法律で裏付けられるべきという、鄧子恢の問題意識を確認すれば十分であろう)
pp.591-592 二 労働に応じた分配政策
現在人民公社では5種類の分配方法があり、主として労働に応じた分配政策がとられている。
第一は一人に定量を分配する極端な平均主義的分配制度。これは労働に応じた分配に反し、食糧の少ない地区ではそもそも実行できない。
第二は基本口糧と労働糧の結合。しかし人口全員に基本口糧を与えると、それだけで分配可能な糧食のほとんどを占めてしまうので、労働糧が社員の積極性に与える影響は小さいとのこと。
第三は労働に応じた分配に配慮(照顧)を加えたもの。しかしこれには配慮の基準が不明確だったり、配慮糧がそもそも少ないという問題がある。
第四は、基本口糧、労働糧、配慮糧(照顧糧)の組み合わせ。示されている割合は、35%, 60%, 5%である。
第五は、労働に応じた分配に配慮(照顧)を加えたものだが、1労働力が2非労働力を支えるように、つまり配慮(照顧)の割合を大きくする。
(前三者は欠点が多く、後ろの二者が合理的に社員の積極性を促すに適しているとしてが、ここは内容を詳細に詰めず、平均主義に批判的であることを確認し、分配をめぐる用語を学ぶ程度で進む。)
pp.592-594 三 幹部の特殊化問題
幹部の労働点数が高いこと、機動糧や事業糧を気楽に支出し、食べたり独り占めしたり、(要するに)権限を自らの利益のために使う幹部が問題にされている。大衆の不満につながり、大衆からの脱離につながると。(特殊化とは幹部がその立場を利用する腐敗を指している)
これを防止するため、まず第一に各クラスの委員会は、幹部への配慮が大衆の負担になりうることに注意し、却って幹部を害し大衆からの脱離につながることを理解して、政治教育を強化すべきとしている。
第二に幹部の補填人数と補填額を、それぞれ戸数と労働日との関係で上限を超えないように厳格に管理すること。
第三に、企業を営む大隊は限定するべきとして、最近十年内経営の良い公社や大隊は企業をする必要はなく、その役割を地元自治体や党委員会に任せ、その経済的役割を縮小したとする。
第四、必ず民主的に運営するべきで、たとえば社会大会を毎月開き、点数帳、糧食収支帳などを公開、幹部の選挙は公開挙手でなくてよく、黒豆黄豆法(投票の秘密を守りやすい?)によるべきとしている。
第五に,監察制度を必ず設けるべきで、定期的に監査の会議を開くべきとしている。
pp.594-596 四 社員の小自由
自留地や副業など、農民の積極性、責任心を高めるとしている。政権が我々の側にあり、重要な産業が全民所有制であれば、経営の小自由には、よいところはあってもわるいところはない。しかし残念ながら、この考え方は幹部全体に理解されていないとしている。
農業生産の回復発展のため、自留地を安定させ拡大されるべき、また社員による畜産(牲畜)を奨励するべきだとしている。
(1962年の中国で、小自由の明確な主張をここで確認できることや、公社の民主的運営を主張を明確に主張している点。鄧子恢がもう少し日本で知られてよいと感じるところである。)
pp.597-599 五 統一買上げ制度と等価交換問題
(この最後の節では、農産物の国による強制買上げの問題が議論されていると思うが、文章の意味をまだ十分解釈できないので後日にまわしたい。)
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