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台湾のエネルギー事情

 10年近く前に台湾を旅行したときに、連日、反原発の住民運動が報道でとりあげられていた。考えてみると、台湾は日本と同様に地震が多発する島国である。原発の立地に適切な土地は、日本と同様に限られるはずだ。そして脱原発政策が定められた。その後、中国との緊張が高まる中で、中国による海上封鎖が行われた場合、輸入に頼る天然ガスや石炭の備蓄は数日しか持たない、という問題の指摘も繰り返されている。
 ところで中国による武力侵攻が現実的でないとする根拠の一つとされることもある台湾の半導体産業(武力侵攻により台湾の先端半導体の供給が途絶えることが、侵攻を思いとどまらせると説明される)。実はこの半導体産業が、電力消費量が大きい産業であることも知られている。だとすると台湾に半導体産業を集中させることが台湾の防衛につながるという視点とは矛盾はあるが、台湾の半導体産業の立地を国際的に分散させ(供給途絶リスクを低下させ)、台湾国内では輸入に頼らなくてよい再生可能エネルギーへの依存度を高めるという現在進んでいる方向性は、いずれもそれなりに合理性があるのではないか。
    ところで当面の争点は、運転期間の期限が来ている原子力発電所について運転期間の延長を認めるかどうか。すでに稼働を停止しているか建設が停止している原子力発電所(北部の3ケ所)は、実は首都台北に近く、事故などが生じた場合のリスクが大きいということから、稼働が認められなくなった側面がある。これに対して現在、争点になっているのは台湾南端にある馬鞍山原子力発電所。人口密集地が近い北部の発電所とは、かなり異なる立地である。1号機が2024年7月、2号機が2025年5月に運転期間が終了する。すでに2018年の住民投票で、脱原子力条文が失効していることを踏まえると、条件を付けて運転期間の延長を認めることが現実的判断と思える。

出所:日本原子力産業協会HPより

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