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Gary Stanley Becker 1930-2014

ベッカー By David R. Henderson
Cited from Econlib.org

 Gary Stanley Beckerは1992年にノーベル経済学賞を、「経済理論の領域を、これまですべてでないにしても他の社会科学の領域、社会学、人口学、犯罪学などで扱われていた人間行動の側面に拡張したこと」で受賞した。
 ベッカーによる経済学の、普通ではない広範な応用は(訳者補語 その研究人生の)早くから始まっていた。1955年に彼はシカゴ大学で差別の経済学についてシカゴ大学で博士学位論文を書いた。なかんずくベッカーは、差別は差別する人に役立つというマルクス主義者の見解に挑戦している。ベッカーはもし雇用者が、生産的な労働者を雇うことを肌の色だけの理由で拒めば、彼は有益な機会を失っていると指摘した。つまり差別は差別する人に高くつく(損になる)のだ。
 ベッカーは、差別する会社は差別しない会社に比べて市場シェアを失うであろうことを示して、差別はより競争的な市場では広がりはより小さくなるであろうことを示した。彼はまた、より規制されそれゆえより競争的でない産業では、差別がより広がることの証拠を示した。差別は差別する者にとり高くつくという考え方は、今日の経済学者の間では常識であり、それはベッカーの貢献である。
 1960年代前半に、ベッカーは創世期にあった(fledgling孵化しつつあった)人的資本の領域に移動した。(Theodore Schultzとともに)その概念の創建者の一人として、ベッカーは、当時新しかったが現在では常識に思える、教育は投資であることを指摘した。教育は、資本が物的資本に加わるように、人的資本に加えられるのである(このことについては、ベッカーの論文「人的資本」を見よ)。
 ベッカーが洞察したことの一つは、教育における投資の主要費用についてである。恐らくその洞察は、彼を次の主要領域、家族の中での時間配分の研究に導いた。経済学者の機会費用の概念を用いて、ベッカーは、市場賃金が上昇するとともに、結婚している女性が家にとどまるコストが上昇することを示した。(そこで)彼女たちは、家の外で働きたいと思い、より多くの器具やファーストフードを買うことで、家庭での仕事を省力化しようとするのである。
  犯罪もベッカーの鋭い分析を免れなかった。1960年代後半、彼は型破りなtrailbrazing論文を書いた(訳注 crime and punishment (1968))。ーその作業仮説は、罪を犯す決定は、犯罪の費用便益関数によるものだ、というものだった。この仮説から、彼は、犯罪を減らすには、刑罰の可能性を引き上げそして刑罰をより厳しくすることだ、と結論付けた。彼の犯罪についての洞察は、その差別や人的資本についての洞察と同様に、経済学の新たな分野を生み出すspawnのに役立った。
 1970年代にベッカーは、家族内の時間配分についての自身の洞察を拡張し、経済分析を、子供を持ちさらに教育することの決定や、結婚・離婚の決定を説明することに用いた。
 ベッカーは1957年から1969年までコロンビア大学の教授だった。(そして)この時期を除くと研究生活の大半をシカゴ大学で過ごし、シカゴ大学では経済学部と社会学部双方から共同の任用を受けた。ベッカーは1967年にアメリカ経済学会John Bates Clark賞を受賞した。1987年には同学会会長を務めた。


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福光 寛  中国経済思想摘記
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