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少し照れくさくて

バレンタインから逃げたことがある。

ぼくは幼稚園のころから足がかなり速い。
小学校低学年のときは、それが理由でちょっとだけモテていた。

2年生のときだったかな。
ぼくにバレンタインのチョコレートを渡してくれる子がいた。
1年生のときはバレンタイン自体がなかったようなかんじで、2年生がみんなにとって初めてのバレンタインだったと思う。

「「「あー!チョコレートもらってる!!!」」」

そんな声が聞こえてきて、ぼくは急に恥ずかしくなって逃げてしまう。
一日中逃げる。
クラスが一緒だから、逃げ回っていたわけではないけれど、もらわないように心の距離を置いていた。

ただただ恥ずかしくて、そのときは罪悪感を一切感じなかった。

でもね、家に帰ってお母さんに話したら、ちょっと怒られた。
そりゃそうだよね。わざわざ用意してくれたんだもの。
当時は配られていた連絡網を見て、その子の家に電話した。

きょうはごめんね。あしたもらうからもってきてね。
とか、そんなこと言ったんじゃないかな。

そっちの方がずっとずっと恥ずかしいよね。すごく緊張したのを覚えている。
初めてのバレンタインは、そんな思い出。

今日は妻が娘を病院に連れて行ってくれたから、チョコレートは明日用意してくれるみたい。
嬉しいな。楽しみだな。
大人だから、しっかり受け取るよ。少し恥ずかしいけどね。

ちなみに、小学校低学年以降は、一切モテていません。
小学生男子は足が速いとモテるというのは、本当です。

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