
ある日突然その4
ある日突然、デジタル庁から連絡が来て現在やっている事業内容をデジタル推進委員として発表してほしいという。
厚労省がA型事業所の報酬規程を変更して以来、すでに廃業したところ、B型に移行したところが現れ、行き場を失くした利用者は数百人に上ることが新聞で報じられていた。
わたしの勤める事業所でも戦々恐々のはずなのだが、不思議なことに以前と変わらぬ平穏な日々が続いていた。
デジタル推進委員はデジタル庁から任命されてデジタルデバイド解消のための活動を行う民間人であり、デジタル庁としてはマイナンバーカード普及のためのボランティア要員といった位置づけである。
それからすると、就労継続支援A型事業所におけるIT推進というのは外れているようだが、精神疾患を持った利用者に対するIT推進もまたデジタルデバイドの解消という大目標に沿ったものとして認識されたのかもしれない。
当日はZOOMによるミーティングで10分間のプレゼンテーションと20分間の質疑応答および参加者間のコミュニケーションというコンパクトなもので、その業務の意味するものが伝わったかどうかは怪しいものである。
時給1000円で1日4時間から5時間、月8万円から10万円の所得ではまともな暮らしはできない。時給を2倍にできる仕事を作ればおのずと所得も2倍になり豊かとは言えないがそれなりの暮らしができるようになるはずである。そのためには、一般企業から仕事をとらなければならない。
A型事業所に仕事を出している会社の社長いわく。A型事業所には納期のある仕事は出せませんね。
納期のない仕事はないわけで、つまるところA型事業所にはまともな仕事は出せないということだ。
確かに、突然仕事を投げ出して帰ってしまったり、仕事の時間よりも面談の時間の方が長い利用者を見ていると不安材料には事欠かない。
それでも所得倍増という大目標のためには乗り越えなければならない壁である。
わたしは早速一般企業から仕事を取るために有効な営業ツールであるプレスリリースの作成に取り掛かった。