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ある日突然その3
ある日突然、厚労省が就労継続支援A型事業所の報酬基準を変更し、A型事業所も利益を出すことが要求されることになった。
わたしが京都のA型事業所に入所したまさにその日、2024年4月1日のことである。
このことは日本全国のA型事業所の存亡を左右することになる事件であるにもかかわらず、A型事業所の経営者も職員も利用者も全く意識していないかのように変わらぬ日常を繰り返していた。
入所して4,5,6の3か月は引き継ぎ業務である画像加工の手順を覚えることに専念した。
7月に入って、ChatGPT、FIREFLY、WIXを使ったランディングページ制作を開始した。
これにより、2名の利用者が脱落。代わりに2名の利用者を異動させてLPチーム作りを開始した。
職場は事業所とは別の急な階段のある2階建ての典型的な町家であったことから、デジタル業務を行う町家という意味で「デジタル町家」というチーム名にした。
のち、さらに2名の利用者が異動して参加し、8名の大所帯となった。8名ともに精神疾患のある通院患者である。
LP制作スキルを身に付けることで時給1000円を2000円に引き上げるという実にシンプルな目標設定も奏功して、利用者のスキルは目に見えて向上した。
興味のあることには異常なまでの集中力を見せるという精神疾患患者の特質とIT業務はマッチングするのではないかと思っていたことが実証されたという実感があった。
ただし、それはコンディションのいい時の話で、さっきまで絶好調に思えた利用者が突然黙り込んだかと思うと、立ち上がって帰っていいかというと同時に仕事を放り出してさっさと帰ってしまう。軽い冗談にも異常に敏感に反応し切々と上司に訴え、面談を要求する。指示には従わず浅薄な知識に基づいて勝手なことをする・・・。
これらの反応は、わたしが彼らを健常者同様に扱うことからくるストレスが原因である。
寄り添っても治らない病気なら、寄り添うことに意味はないので業務優先で厳しい指示を出すことに専念した。
健常者でも落ちこぼれはいる。落ちこぼれに合わせていても目標達成はできないので、できる利用者優先で指導した。
そして3か月経った9月には「デジタル町家」のLPサイトが完成した。SEO施策を施したフラット構造のLPだけのサイトである。
https://www.digi-machi.com/