【中~上級の国内英語学習者用・随時加筆】英語リスニング力の向上法
本記事は、日本国内の日本語環境で生まれ育った英語学習者が英語圏(特に北米)の生の英語でも通用するリスニング力を身につけるために何をすれば良いかという点を書いた記事です。初版後も随時記事のアップデートを続けています。
私は日本で生まれ育ちで自分なりに英語をしっかりと学習し、TOEIC・TOEFL共にリスニングは何の苦も無く満点が出る状態でスタンフォード留学のために渡米しました。しかしながら、その状態でも米国では生の英語のリスニングに非常に苦労し、時には全く会話内容が理解できないといった場面もありました。その後、試行錯誤しつつリスニング力を上げていき、何とかそういった状態を克服するに至りましたので、その経験を踏まえ、英語圏の実地でも問題ないリスニング力を身に着けるまでの方法論について記載していきます。
読者層は、帰国子女ではなく日本国内で英語を学習し、概ねTOEFL95点・TOEIC900点以上の英語力を身につけている方です。特に以下のような方が最適です。
英語圏赴任/留学中で現にリスニングに苦しんでいる方
英語圏赴任/留学に向けて準備している方
英語圏赴任/留学を終えてもリスニング力に自信がない方
生の英語の最大の課題はスピーキングではない
英語というと日本で生まれ育った方の間では「話すのに自信がなくて...」という方が多いと思います。しかし、実体験を踏まえると、英語圏赴任や英語圏留学での英語の最大の課題はリスニングです。
スピーキングは、最悪内容が良ければゆっくり話しても聞いてくれます。また、特にネイティブは、こちらが話す各単語間の繋がりを推測して脳内で無意識的に補完してくれるため、単語の羅列ですら比較的高度な内容の意思疎通ができることも多くあります。しかも、スピーキングの場合は1対1の会話でない限りは話し始める前に多少なりとも準備時間が取れます。そのため、実はスピーキングは、「よし、話すぞ」という勇気の問題であることが多いと感じています。
他方でリスニングは会話の大前提です。向こうの話が理解できなければこちらはまともな返事を返せず、会話が成り立ちようがありません。
しかも、例えば留学の授業の場合、リスニングが出来なければ教授や周りの学生の発言が理解できず、得られるものが大幅に減少してしまいます。仕事での赴任であれば自らの業務遂行能力が疑われてしまいます。
更に、リスニングができればスピーキングも向上します。高いレベルのスピーキング力を得るには多数の語彙や表現を会得する必要がありますが、そうした表現を周囲から聞いて学ぶのが一番近道だと感じます。例えば私は、授業中に別の学生が使ったフレーズを聴き、「なるほど、このフレーズはこういう場面で使うのだな」などと理解し、同じような場面でフレーズをそのまま真似する方法を採っていました。この方法は使用場面と一緒にフレーズが記憶され、実践もできるので、表現力増強にとても役立ちました。しかし、こうした方法も、リスニング力が足りずそもそもその表現が聞き取れなければ採りようがありません。
そのため、英語圏で十分に通用する前提としては、是非ともリスニング力を可能な限り高めておくことが重要です。
リスニング力に自信があっても苦労する
日本国内の学習者が遭遇する最難関のリスニング試験はTOEFLやIELTSだと思われます。しかし、こうした試験と実際の英語は大きく異なります。
また、「仕事で英語を使っているから大丈夫」という方もいるかもしれません。しかし、残念ながら日本国内の仕事で使う英語は、ノンネイティブとのやりとりだったり、ネイティブの中でも外国人慣れした担当者との間でのもののことも多いです。そのため、国内で日常的に仕事で英語を使っているからといって、リスニングに問題がないわけではありません。現に私も英語を使う海外との仕事が大半でしたが、留学当初はリスニングに大変苦労しました。
生の英語のリスニングで苦戦する要因の分析
実体験を踏まえると、リスニングができないのには複合的な要因があり、各自のそれぞれの課題に応じて分析的に対処する必要があります。
まず、リスニングができない要因は、大きく分けて2つあります。一つは、そもそも音が聞こえないという問題、もう一つは、音は聞こえているが話に頭の理解がついていかないという問題です。
そして前者は、曖昧発音が聞き取れない、アクセントが聞き取れない、周囲の雑音や音量が小さくて音が聞き取れないの三つに問題を細分化できます。
また後者は、相手の話す速度が自分の理解可能な速度を超えている、語彙力が足りない、持久力の不足の三つの問題に分けられます。
まずは、自分の弱点がこれらのカテゴリのいずれにあるかを見極めることが大切です。そのうえで、カテゴリに応じた対処法を採って行くことになります。
曖昧発音が聞き取れない
日本の英語教材は一言一句を明瞭に発声してくれます。また、国内学習組の中上級者が良く活用しているTVニュース(CNN等)も、速度はありながらも非常にクリアな発音でニュースを読み上げます。そのため、こうした環境に慣れた国内学習組は「私はCNN等の内容も理解できるしリスニングは問題ないだろう」と過信しがちです。もっとも、現実世界で一般の人々が話す英語は、口をあまり開かないモゴモゴ発音ばかりです。また、各単語の音も連結します。それゆえに、こうした一般の人々との会話では、文字に書き起こせば容易に理解できる内容を話している場合ですら、何を言っているのか全く分からない事態が頻発します。
私自身や周囲を見ていると、国内英語学習組は特に、曖昧発音への対処がリスニング上の最大の課題になっている例が多いかと思います。そのため、リスニングにお悩みの方は、まずこの点に問題がないか最優先で確認されると良いかと思います。
アクセントが聞き取れない
英語の発音は地域によって随分異なります。経験上、アメリカ西海岸、ヨーロッパ大陸の多くの国や南米の英語は日本人が聞き取りやすいアクセントです。他方、オーストラリア、ニュージーランド、アフリカ、インド、シンガポールや中国の一部等の地域のアクセントは慣れていないと聞き取るのが至難の業の場合もあります。TOEIC等の英語試験ではアクセント有りのリスニングも導入されていますが、そこではあまりに明瞭にゆっくり話されるため、実際のアクセント力対応にはほとんど繋がっていないと感じます。
周囲の雑音が邪魔で/音量が小さくて音が聞き取れない
特に試験英語は聞き取れるが生の英語が聞き取れないという場合、雑音がない適切な音量の英語のみに慣れすぎているのかもしれません。
試験英語は、とにかく雑音が入らないように工夫がされており、試験室を含めて邪魔になるノイズがあまりありません。音量もリスニングがしやすいように適切なレベルに調整されています。一方現実世界ではノイズだらけですし、声が小さくて聞こえづらいシーンも多々あります。そのため、例えば大きめの教室や会議室の場合、話し手の声が周りの雑談や咳払い等の様々な雑音で遮られたり、距離が遠く声が届きづらかったりして、話し手の発音がクリアであっても何を言っているのか聞こえない事態がよく起こります。
相手の話す速度が自分の理解可能な速度を超えている
私の体感では、TOEFL等の試験英語は実際の0.7掛けほどの速度だと思われます。また、ネイティブがノンネイティブ向けに仕事で使う英語は、ノンネイティブにもしっかり伝わるように意識してゆっくり話されていることが多いです。そのため、国内にて仕事で英語を使っている場合でも、現地でノンネイティブ慣れしていないネイティブから手加減無しに話されると話すスピードが速すぎて全く理解が追いつかない事態が多発します。
また、「122,560,000」といった数量表現等がネイティブの会話速度で読み上げられると、数量表現等について特別なトレーニングをしていない限り脳のリソースがその理解に大幅に割かれてしまい、その後のリスニングについていくのが一気に困難になります。
語彙力が足りない
特に米国人は、基本動詞と副詞の組み合わせであるphrasal verbを多用します。phrasal verbでは、一つ一つの単語は「get」等のごく簡単なものですが、組み合わせを理解していないと意味が理解できません。
また、場面に応じ、決まりきったイディオムやフレーズを多用します。これらもそのフレーズを知らない限り意味が瞬時に理解できません。文脈から分かる場合もあるのですが、「どういう意味だろう?」と一瞬でも考える隙ができた時点で、高速で行われるネイティブの会話にはかなり後れを取ってしまいます。例えば、「on the same wavelengh」等と突然言われたときに、頭が一瞬「???」となり、その後仮に「文脈的に『考えが同じ』くらいの意味かな」と正しく推測できたとしても、推測に若干の時間を要したがために後に続く会話を聞き逃してしまいます。
持久力の不足
試験の英語のリスニングは長くても5分足らずで終わります。会議でも1時間程度のものが多いと思います。そのため、短時間の集中力があれば乗り切れます。他方で赴任や留学では一日中英語が流れてきます。丸一日集中力を持続するのは至難の業です。そのため、1日の最初は良くても徐々に疲労感で聞こえなくなる現象が発生します。
それぞれの要因への対策法
現実世界でのリスニングが困難を極める要因それぞれについて対処していくことで、リスニング力が向上していきます。以下ではそれぞれの要因について対処法を検討していきます。
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